【イベントレポ】P.O.N.D. 2022のゲーム系展示のご紹介
渋谷のPARCOにて開催中のアートイベント「P.O.N.D.」に行ってまいりました。
イベントとは言っても、特定のスペースに展示が集中しているとは限らず、PARCOの複数の階に渡って展示がされる構成です。展示物は写真、絵画、インスタレーション、メディア・アート、今回はゲームもあります。
私の記事をご覧になる方はゲームに関心のある方が多いと思うので、ゲームを中心に展示の簡単なご紹介をします。
P.O.N.D.のゲーム系の展示は「P.O.N.D. Arcade 2022」と題して国内のインディゲームクリエイターによる作品の展示がされていました。もちろん、試遊できます。展示の監修はゲームメディアIGN JAPANの副編集長であり、インディゲーム界隈に詳しい方といえばこの人、今井晋さんです。
7階のイベントスペースに5つのゲームがまとめて展示されているので、ゲーム好きの方はとりあえず7階に行くのが良いでしょう。
あなたの一日を仏像に占ってもらいましょう『仏占』
イベントスペースに入ってすぐのモニターには仏像が相撲をしている謎の映像が映されていますが、これもゲームです。開発者は日本のインディゲーム界の雄、ksym(くそやま)さん。少し前に卑猥な単語が飛び出すヒヤヒヤを楽しむデジタルチンチロリン『NKODICE』も話題となりました。
置いてあるXBOXのAdaptive Controllerの大きなボタンを押せばゲームスタート。仏像が相撲を始めます。ゲームが始まるとプレイヤーが出来ることはボタンを押してアボカドを投げるのみ。何故アボカドなのかはこの際聞いてはいけません。仏像がぶつかり合い、突き落とすまでのシュールな映像に身を任せるのです。戦いの後に示されるのはあなたの今日の運勢!仏像からいただけるありがたいお言葉にもご注目ください。
実はこんな裏技があるようです。しらんて。。。
多層構造で語る物語『Farewells』
続いて展示されているのは『Farewells』。開発中のゲームのため全容は見えませんが、今回の試遊では部屋の中を動いてオブジェクトにインタラクトすることと、ゲーム内に置いてあるゲーム機を使ったホラー風のゲームが遊ぶことができます。
部屋の中のパートではややデフォルメされたビジュアルですが、ゲーム内ゲームのパートではリアル系なビジュアルになっていたのが印象的です。部屋の隅にはボソボソと自身の戦争体験を語る第2次大戦風装備の兵士がいるのも違和感がありますね。
ゲームのストーリーを物語る手法は様々なものが開発されてきていますが、『Farewells』の場合はゲーム内ゲームや置いてあるドキュメントなどメディアを駆使したもののようです。多層構造で語られる物語がどんなものなのか、私、気になります!既にSteamのストアページは存在するのでウィッシュリストに入れて待ちましょう。
あなたの電話番号は何色ですか?『不思議な電話機「GRAHAM」』
このゲームのコントローラーは一般的に使われるゲームパッドではありません。置いてあるプッシュ式電話機を使います。
まずは受話器を取りましょう。そして、お好きな番号をプッシュ!すると、モニターに映し出される風景が変化します。番号によって自動生成される風景を見て楽しみましょう。Twitterを用いてシェアも可能なので、いろいろな電話番号を打ち込んでみると面白いと思います。
開発者のyutaさんは電話番号を打ち込んで出現する扉を辿っていくアドベンチャーゲーム『StrangeTelephone』の開発でも知られています。
頑張ってPARCOを登ってね!『常世ノ塔』
リリース済みの作品ですので、今更書くことも無いのですが今回の試遊バージョンはPARCO仕様です。プレイ済みの方も別バージョンだと思って遊んでみてください。
インタラクティブミュージック入門にどうぞ『Same Game,Different Music』
同じ色のブロックを繋げて消していく古典的なゲームです。単に遊んでいるだけではそれほど個性を感じないとは思うのですが、プレイした後に自身のプレイを再生できるリプレイ機能を使ってみてください。ここでは音をよく聴きましょう。あれ?なんか音楽っぽくなっていないか?そうです、実はブロックが消えるたびに聞こえる効果音が絶妙に音楽的に響くように調整されたゲームだったのです。
こういった音楽表現はインタラクティブミュージックというもので、プレイヤーの操作に応じて音楽を変化させたり自動生成していく手法です。最近のゲームの多くがインタラクティブミュージックの手法を導入しているのですが、プレイ中はそのことには気づかないと思います。当然、気づかれないぐらいに自然に仕込むのが作り手の狙いだと思いますが、『Same Game,Different Music』はリプレイ機能で自然なインタラクティブミュージックを可視化(可聴化?)するのがコンセプトだと思います。
開発者のじーくどらむすさんは「Pokémon LEGENDS アルセウス」や「FINAL FANTASY XV」のサウンドデザインにも関わられています。これらのゲームにもインタラクティブミュージックの手法が導入されているので、プレイ済みの方は音に注目してもう一度遊んでみてはいかがでしょうか?
電子的生命のいのちのかがやき『避雷』
「P.O.N.D. Arcade 2022」の展示は7階に集中しており、そこだけを見ると一般的なインディゲームイベントっぽさがありますが、P.O.N.D.はPARCO全館を使った展示がコンセプト。アートを馴染ませる空間づくりを狙っているために、展示スペースっぽくない箇所にも作品があります。それが5階に設置された大きなモニターに表示されている微生物のような作品『避雷』です。
モニターはタッチパネルとなっており、映像に触れるとレスポンスもあります。インタラクト可能な映像作品のように見えますが、表示されている微生物のようなものは実はGPUのメモリ上に生まれた電子生命です。生まれては消えていくサイクルがあり、時間経過で様々な色やパターンの電子生命の誕生の瞬間を見ることが出来ます。このことを知った上で見ると、ちょっと寂しさを感じてしまうのは人間のエゴかもしれませんね。
「避雷」をビデオで撮影しました
スロットで思想診断『QISDTD-J 1.5号機』
「P.O.N.D. Arcade 2022」の展示では無いのですが、ゲーム好きの皆さんにはこちらの作品も触れていただきたいです。4階のPARCO MUSEUM TOKYOには多くの作品が展示されていますが、その中でも異彩を放っているのがスロットマシン筐体。宍倉志信さんの作品です。
100円を入れるとプレイ開始、画面の指示に従ってYES/NOをスロットで答えていきましょう。あなたの思想診断の結果はどうなるでしょうか?診断結果は紙で印刷されるので、記念に持ち帰ることができます。
P.O.N.D. は2022年10月7日から10月17日まで開催中です。ゲーム系の展示だけでもゲーム表現の多様性を知ることが出来ますし、もちろんその他の様々なアートに触れることで得るものはあると思います。見る順番は自由でいいと思いますが、出来ることならば下の階から順に作品を巡っていくのが良いと思います。無作為に並べられているわけではなく、作品の配置にも意図があるからです。展示の場所がわかりにくいとは思いますが、なにせ今回のP.O.N.D.のテーマは「IN DOUBT 見えていないものを、考える。」です。探してみましょう。あなたのアート体験を。
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