行ってきたぜ!京都!!BitSummit X-Roadsレポート
3年ぶりに一般客を入れての開催となった国内インディゲーム最大のイベント「BitSummit」
game gameのメンバーと一緒に行ってきましたよ!!
3年ぶりの開催、久しぶりの京都、そもそも遠出するのも久しぶりということで高まりに高まった期待でしたが、期待に応えてくれるだけの熱量(8月の京都は本当に暑いィィィィぃ)のあるイベントでした。以下、私が見た範囲でのレポートやいくつかの出展作品に関するインプレッションを書き連ねていきますが、会場が広く、一般向けにオープンされる日が1日のみだったために、ほんの一部しか触れることが出来ていない点にはご注意ください。
会場と周辺について
会場の京都市勧業館、通称「みやこめっせ」は京都市左京区にあります。会場の面積的に展示会が行える施設としては、京都府内で最大の規模のものです。そもそも他に類似の施設がほぼ存在しないこともあって、京都で展示会といったら「みやこめっせ」となるような施設です。
周囲には京都府内で唯一2000席を越えるコンサートホールであるロームシアター京都や、京都府立図書館、京都国立近代美術館など文化施設が揃っている立地でもあります。その分、飲食店がほとんどないためにBitSummitではイベントとコラボして出店しているキッチンカー等の利用が盛んなのですが、今回は感染症への配慮からか会場内での出店はなし。。。。しかし、不思議なことに会場向かいに露店やキッチンカーが並ぶイベントがあって食べるものには困らなかったのでした。
広い!暗い!密!
入場時はリストバンドの装着が求められるイベントによくあるタイプの入場方法です。今回のリストバンドはレインボーカラーだったので、知らない人が見るとゲームのイベントではなく、ゲイ・プライド関連のイベントのように見えたかもしれません。業界内外で多様性についての議論が頻繁になされる昨今ならではとも言えます。
会場は「みやこめっせ」の3階をワンフロア全部使っているためにフラットでかなり広い。ステージイベントがある都合からか、会場はやや暗めです。これも展示会あるあるですが、大きなブースを展開できる(=巨額の出展費が払える)企業とワンスペースだけで展示しているその他大勢のブースとではどうしても視覚的な差が出てしまいます。小さなブースで目立つためのそれぞれの工夫を見るのも面白いですが、密に配置されている各ブースからこれは!と思えるタイトルを見つけるのは困難なのも事実。これがメディアの方ならば事前にプレスリリースを受け取ることが出来ているので目星は付けられますが、事前に下調べをほとんどせずに挑んでしまった自分は大量の作品を見逃してしまいました。
見逃してしまったタイトルについては続々と上がっているメディアのレポートやSNSから情報を得ることにして、当日はイベントを楽しむことに集中するように切り替えました。広い会場を回っていることと、連日の暑さで疲れてしまいましたが、レッドブル・ジャパンのブースで授けられた羽でその日は乗り越えることができました。ただ、配るのはいいけど、空き缶入れも欲しかったよ!!
ノベルティや物販も充実
今回のイベントでは各ブースで配布された資料やノベルティの類が充実していた印象でした。入場時にはスポンサーでもある任天堂からIndie Worldトートバッグと日清のカップヌードルPROのセットが渡されました。任天堂ブースでは出展タイトルを紹介した会場限定冊子「Indie World通信 総集編」が配布されており、インディゲームレーベル「ヨカゼ」のブースではカタログやポストカード、ステッカーなどをまとめた不織布トートバッグがもらえました。その他各ブースで配布しているノベルティは人気のものは開場から30分以内に消滅していたりも。
物販を行うブースもあり、今回は物販のみとなったグラスホッパー・マニファクチュアのブースでは新作ロゴTシャツ、スポーツタオルなどが販売されていました。SUDA51作品を愛する自分としてはこれは買っておかねばと、入場してTシャツとクリアファイルを即購入でございます。グラスホッパー以外では、プラチナゲームズのブースでもグッズ販売が行われていました。
変なコントローラーにニコニコしっぱなし
試遊したゲームについても書いておきますが、ゲームイベントでの試遊は難しいもので、短い時間でプレイできて心に残る作品というのは稀有なものです。その点、特殊コントローラー特化型イベント「make. ctrl. Japan」のブースで触れた変なコントローラーたちは数分のゲームプレイでビデオゲームの楽しさや可能性を教えてくれる素晴らしいものでした。
明治大学 先端メディアサイエンス学科の橋本研究室が制作した『もしもしパニック!』は3台の電話機を用いた不審電話撃退ゲーム。次々にコールされる電話の受話器を取ってその音声の内容が不審なものであれば、ガチャ切りや音声認識での応答内容選択で撃退してポイントを獲得するルールです。場合によっては受話器を合体させて架空請求の電話同士を繋げることでコンボとなり一気に高得点を獲得できます。「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」ってことですね。コントローラーが特殊ではあるものの、ゲームとしては非常に練られているために出オチにはなっていません。正直に言えば今回のBitSummitで最も楽しんだゲームでした。
京都産業大学情報工学部 平#研究室が展示していた浴槽埋込タッチセンサも興味深いものでした。ビデオゲームというよりは技術研究の展示と言うべきものでしたが、浴槽にセンサーを設置して投影型のUIで操作させるのは未来を感じる技術です。他にも扇風機をコントローラーにした風向を検知するゲーム、「箱だけのブルース」でお馴染みの変なコントローラーおじさんことWataru Nakano氏の新作「僕のお墓はアイスの棒」などこのブースだけでも十分に楽しい体験ができました。ローグライクなアクションゲームや2Dアクションも楽しいものですが、ビデオゲームは本来的に技術の先端を行くことで遊びの可能性を広げてきたものだと思い出させてくれる「make. ctrl. Japan」の展示はビデオゲームを愛するものならば体験すべきものです。
インディゲーム制作支援団体の増加
前述の「ヨカゼ」のようなインディゲームレーベルの存在もありますが、最近では出版社がインディゲームの世界に参入しており、クリエイターへの支援を行っています。「集英社ゲームクリエイターズCAMP」や「講談社ゲームクリエイターズラボ」はBitSummitでも存在感を放っていました。特に集英社が今後どんな展開をしてくるかが気になります。
出版社以外ではiGiこと「indie Game incubator」の存在も目立っていました。以前Tokyo Sandboxのレポート記事でも紹介した「SONOKUNI」や「NINJA OR DIE」はiGiの支援を受けている作品です。プロモーションや開発管理のサポートからパブリッシャー探しのサポートまで行うプロジェクトですが、こうした取り組みで業界の活性化や優秀なクリエイターの発掘を狙っているのでしょう。お金をかけて個人をサポートするほどですから、インディゲーム業界が巨大な市場として成長した証です。
ちなみに「SONOKUNI」の試遊版はTokyo Sandboxのバージョンから細かくアップデートがされており、以前よりもかなり遊びやすいものになった印象です。
詩情あふれるゲーム『OU』に期待
今回のBitSummitで試遊しておきたかった期待のゲームは『OU』です。長らくフィーチャーフォン向けにゲーム開発をされていた幸田御魚さんの新作ゲームです。以前から幸田さんがディレクションした「ゆるゆる劇場」や「ちゅら島暮らし」が面白いと思っていた自分としては、見逃すわけにはいきません。
試遊できたのはゲームの序盤のほんの数シーンのみですが、本作のコンセプトは何となく理解することが出来た気がします。基本的にアクションらしいアクションはない2D横スクロールのアドベンチャーゲームとなりますが、美しい手書き背景やギターを中心にしたアコースティックな音楽、自由に投げられる付箋によって見付けられる「メッセージ」の存在によって何とも言えない詩情が感じられるゲームとなっています。幸田さんのゲームは言葉選びのセンスが独特で、詩的な感覚がありましたが、『OU』ではその面を強く出した作品になりそうです。
ブースの近くに幸田さんがいらしていたので、少しお話を聞くことが出来ましたが、本を読むようなゲームにしたいと仰っていたのが印象的です。本を読む体験は読み手それぞれで変わってくるもので、その点『OU』の説明を省いたゆったりとした時間が流れるゲーム性は読書体験に例えると確かにぴったりだと思いました。まだまだ謎は多いですが、リリースを心待ちにしたいと思います。
思わぬダークホース
最後に紹介するのは今回のBitSummitで知ったタイトルで最も期待値の高い開発中の作品です。
株式会社ドリコムが出展している新規タイトル「Tokyo Stories -working title-」はピクセルアートで描写された3Dの夜の街を歩くことができるデモのみがある状態でしたが、強烈な魅力を発しています。
3Dで空間設計をしているものの、固定カメラを採用しているのでプレイ中は制作者が狙った決まったレイアウトが見られます。現状は歩いている途中に空間内に文字が表示されるスタイルでしたが、テキストアドベンチャーとして構成するのではなく、もっとインタラクティブなゲームプレイを志向しているようです。LoFiヒップホップの音楽が鳴る中で歩くプレイ感覚は近年の海外産のインディ系アドベンチャー(「コーヒートーク」「VA11-Hall-A」など)に近いものがありました。どんなプレイ体験となるのか、ストーリーについても不明な点が多く謎だらけですが、これほど期待しているゲームも最近なかなかない気がします。どうやら本作ディレクターはPS3でリリースされた『rain』を手掛けた方でもあるようで、余計に期待値が高くなっています。
ドリコムはモバイル系のゲームやメディア事業を行っている会社ですが、自社タイトルで目立ったものはあまりなく、会社名でピンと来ていなかったものの、同時に展示されていたスマホ向け格ゲー『Project BEAT』も気になるものです。こういう出会いがあるからゲームイベントは面白い!
イベント開催が厳しい昨今ですが、リアルイベントの楽しさはオンラインでは代えがたいものです。なんとか次も開催してほしいものです。すべてのBitSummit関係者に感謝を、来場したすべてのゲーマーに幸運あれ。
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