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8月25日 プリンの日

    口の中に入れると、香ばしく焼いた表面と、とろけるようなカスタードの甘さ、一番下に強いてあるほろ苦いカラメルソースのそのすべてが相まって、もう幸せを思わずにはいられない。

「またプリン食べてる」

「うん、だって私の幸せだもん」

 学食で売っているプリンがこの焼きプリンで良かった。平日の毎日を幸せを感じながら過ごすことができるなんてそれだけで幸せである。

 私はプリンが好き。

 特に焼きプリン。

「そう言えば、最近はいろんなスイーツを凍らせるのが流行りみたいだよ」

 向かいに座る遼子が言う。

「凍らせプリンとか、美味しいらしいよ」

「・・・・・・なんか、邪道だわ。」

 私は思わず口に出してしまった。

「あら、頑ななプリン精神ですこと。でもさ、大好きなプリンの新たな一面を発見するのもプリン好きの幸せになるんじゃないの?」

 遼子はいたずらに笑い、私に発破をかけるようにして言う。

「それとも、プリン好きの人ってプリンとは違って頭が固いのかしら」

 頭の中でぷるん!とプリンが揺れた(ような気持ちになった)。

「いいわ!やってみようじゃないの」

 私はそう言うと食堂の売店でプリンを2つ購入する。

「一つは普通に冷やして、もう一つは凍らして。帰るときに食べ比べましょう」

 午後の授業が始まれば帰宅まで4時間はあるのでおそらく凍るのではないか。食堂前の共有冷蔵庫に2つのプリンに名前を書いて入れておく。

「スタンダードが一番美味だと言うことを知らしめてやるわ!」

 まるで何か正義の味方にでもなったように私は言い切り、午後の授業に向かった。


「意外と楽しみにしている自分がいます」

 授業後に遼子と落ち合い、食堂に向かう。私は素直に心境を伝えた。それを聞いて彼女は笑った。

「でも、冗談じゃなく美味しいと思うよ、冷凍プリン」

 冷蔵庫と冷凍庫を開けると、プリンが1つずつ入っている。取り出してテーブルに座った。

「おお、結構カチンコチン」

「両手で持って少し溶かすといいんじゃない」

 私は彼女に言われるまま両手でプリンを包み熱を伝える。おおよそプリンを食べるときにやったことのない行動である。

「よし、まずは普通のプリン」

 スプーンを二つ用意し、一口ずつ食べる。

「うん、安定の幸せ」

 私が言うと、「美味しさね」と訂正された。続いて凍らせプリン。

「あ、感触が固い。でも思ったよりすんなりスプーンが通るね」

 確かにと言いながらスプーンに取り、一口目を口に入れる。

「・・・・・・ショックだ」

 私は思わず口に出す。

「あ、おいしいじゃん」

 遼子は素直にそう言った。

 そう、美味しいのである。

 柔らかく固まったプリンはなぜかそのうま味が凝縮されており、味わい深いのである。心配していた焼き目やカラメルソースも口の中に入れた瞬間、それまで感じなかった風味が口の中の熱で解放されるように溶け出す。

「普通のプリン党の私なのに・・・・・・。凍らせプリンがこんなに美味しいとは」

 私がそう言いながらもスプーンを進めていると、遼子はまた笑う。

「新しいものをどんどん取り入れていく時代だからね」


 ・・・・・・次はプリンシェイクにでも挑戦してみようかな。

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【今日の記念日】

8月25日 プリンの日

牛乳や加工乳、乳飲料、ヨーグルトなどの乳製品メーカーで、岡山県岡山市に本社を置くオハヨー乳業株式会社が制定。プリンの人気商品が多いことから制定したもので、日付は25を「プリンを食べると思わずニッコリ」の「ニッコリ」と読む語呂合わせから毎月25日とした。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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