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0525_あなたよ

もしもし、あなたですか。
そう、そうです。私です。はい、今少しこのままよろしいでしょうか。
あなた、なにか少し体調が優れないと聞きました。一日二日で治るようなそんなものではないとも聞きました。それで、はい、その、私にはなんにもできないなぁと思いましたのだけれども、居ても立ってもいられないと思ったのも事実でしてね。
え、ああ、そうなんですね。歌が聞ける程度には体力があるとの事、安心しました。え、そうですか、体力と言うよりは気力なのですね。良かった。ああ、いや、良かったと言うと聞こえが悪いのですが、気力があるのであればなんとかなるのではないかと個人的には思うところがありまして、それで良かったと。

食事は、摂れているのですか。
排泄も、自分で処理出来ていますか。
まぁ、私ではなくパートナーが身近にいると聞いていますので、私の過分な心配などは不要だとは思うけれども、そこに一点でもわずかな不安があるのであれば、私はもうどうにかしなくてはならないと思っているのです、はい。

私はこの通り、いま、この場であなたのためになにかを動くと言うことは出来ていないのです。それは、私にできる、あなたにとって必要なものはなんだろうと思ったときに、なにもできることがないと思い至ったからであるのです。
ごめんなさいと言っておきます。
私にやれることがあるのなら、それは他に何をおいてでもやりたいと思っている。これは真実です。でも、だからと言って、じゃあ、あなた、私にしてほしいことを告げてくれと言っても、それはそれで困るでしょう。

だから、どうか覚えていてほしい。
あなたが、なにかを願うとき、私はそこにいます。
必ずや、あなたのそばにいるようにします。
あなたには、私がいます。
例えば毎日、元気付けるように連絡はしません。
例えばあなたに贈り物をして気をまぎらわせようだなんて思いません、いたしません。
例えばお見舞いの品やなにかをもってして、あなたを見舞いになんて行きません。

でも、時々、連絡して、贈り物をして、顔を見せてもらいに会いに行くことでしょう。それは決めてなどいないので、きっと恐らくそうするでしょう、くらいのものです。

あなたに負担とならないよう、私は毎日欠くことなく、あなたを思っています。
ああ、あなた、養生してね。

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