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0716_整う

 ぐらぐらと揺れる。
 私の愛や自信や希望といった明るいもの全て、ガラガラと音を立てて崩れた。
 揺れて、崩れた。

 私が、こう思うと伝えたものを、それはまったくおかしいと、相手が返した。そして何がおかしくて、何が間違っているのかを、それこそまったく教えてはくれないのだった。それさえも、私の能力不足なのかと愕然とした。

 人は、分からないものを恐れるのだと思っていた。

 ちがう。
 分からないものを恐れない人やモノを恐れるのである。相手がまさにそれであり、私はその相手を恐れたのだった。

 私のこれまで全てが、違うのだそうだ。

 違う私が何をどう改善したって、そもそとが違うのだから正しく改善することはできないのである。ではどうすればいいのか。

 分からなくて、私は眠ることにした。

 私が例え間違っていても、そうでなくても、わからないのだからもうどうしようもない。どうしようもないので、何もしないことを選んだ。

 寝て、陽の光が差し込めば起きて、生きていることを確かめるために窓を開けて風を感じ、深呼吸をしてこの世界に同化する。しばらく陽を浴びていると、段々、心のどこか奥の一部分が、ムクムクと育つのが分かる。
 それが暗い芽なのか明るい芽なのかは知らない。どうでも良い。ただ、何かが育ち、生きていることを認識する。
 それは私が一人ではないことを意味する。

 一人ではないので、足並みを揃えて進み、玄関のドアを開ける。歩道を行けば草花が揺れ小石が転がっている。そう言えば、私の愛や自信や希望も同じように揺れていたし、コロコロではないがガラガラと崩れては転がっていった。
 なんだ、散歩をすればよく見る光景なのだった。

 厚い雲がもうもうと頭上を多い、やがて雨が降り始めた。
 こんなもの、水分補給以外なにものでもなく、私はまた、私の中の何かがムクムクと育つのを感じた。

 そうして家に戻り、身支度を終え、再び布団に潜り込んだ。

 私は、もともと何も無かったのだ。

 そう思うと気が楽で、よく眠れた。

 整うことが大切なのだと頭の隅で思う。


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