ネトフリ字幕の"lesbian"を「レズ」と訳す問題。

 Netflixで洋画や海外ドラマを観ていると、度々「レズ」という字幕に遭遇する。私はそれを読むたびに、なんとも言い難い気持ちになるのだ。

 それは「レズ」は「レズビアン」の略で、そこには差別的な意味が含まれるとされているから。

 そんな言葉が、多くの人が目にするエンタテイメントの字幕として、日本中に配信されてしまっている。そんな事態に疑問が湧かないわけがない。

 その一方で、この問題に関して、「字幕にレズなんて差別用語を使うな!」とただ声高に主張する気にならないのは、私自信が、字幕翻訳家という仕事に関心を抱いていて、翻訳者さんのお話を聞いたり、本で読んだりする中で、字幕制作の裏側を少しだけ知っているからなのかもしれない。

 映画の日本語字幕には、セリフ1秒に対して4文字という文字数の基準がある。


 たとえば "is she lesbian?" というセリフがあったとして、これは約2秒。つまり出せる字幕は8文字。
英語の教科書のように訳したら「彼女はレズビアンですか?」という意味だが、それでは映画の字幕としては不自然なので、会話の流れや状況、キャラクターの口調などを考慮した上で字幕が作られることになる。
 だから、「彼女 レズなの?(7文字」「レズなんですか?(8文字」「もしかして レズ?(8文字」等と訳して、はい解決!としているのが今のネトフリの字幕なんだと思う。(私はNetflixとは無関係の一視聴者でしかないから実際のところは存じ上げないけれど)

 確かに、一度やってみたら痛感するけれど、限られた文字数になるべく正確なニュアンスを含めて、読みやすく自然な字幕を作るのは本当に大変。字幕翻訳者さんには頭が上がらない。


 でも「レズ」は女性同性愛者を指す「レズビアン」の略であり、差別的な意味を含んだ言葉だとされている。

 そのことを知らずに悪気なく使っている人は多いし、字幕翻訳者さんだって、きっとレズビアンへを差別する意図を持って「レズ」の字幕をつけているわけではないはずだ。

 しかし、忘れてはいかないのが、その一方で、悪気の有無に関わらず、その言葉に傷ついている当事者がいるということ。
 最近は特にNetflixオリジナル作品など、セクシュアルマイノリティのキャラクターが当たり前のように描かれるようになってきた。当事者にとっては嬉しい変化。でも、そんな作品を観ていた時に出てきた字幕が、「レズ」だったら??



「"レズ"が差別的であるから使用するべきでない」という指針でもないかぎり、5文字を2文字で収められる"レズ"は便宜上、今後も字幕では多用されると思う。でも、文字数の問題だから「レズ」と訳すのはしょうがないよね!別に差別したいわけじゃないんだから!で終わらせてしまっていいのだろうか?


 いつも素敵な作品を配信してくれる大好きなNetflixだからこそ、一度その辺りのことを考えてもらいたい。

 はやく、誰もが安心して素敵な作品を楽しめるようになることを願って。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?