「今」を楽しむということ

「あなたの好きなものは何ですか」

知り合いがそういう投稿をしていた。（知り合いとかいうような他人行儀の関係ではなく、日頃からお世話になっている方なのだが）

先行きが不透明な状況の中で、不安ばかりが先行してしまい、彼女は自分の好きなこと、ワクワクすることを忘れかけていた、と語っていた。

そこでふと、私も自分の好きなものを思い起こしてみた。

世界中の家を巡るテレビ番組を観ること

コーヒーとお菓子を食べている時間

友達や家族と電話をしている時間

散歩をすること…

おや、これって外出が難しくなってからでもしていることだ。

自分の好きなことができているのに、私はなぜか最近、満足感を得られていないような気がしていた。

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今日のおやつはチョコブラウニーだった。四角に切られた手作り感たっぷりのブラウニーを、最初一口だけ口にした。すると、ほんのりとチョコの香りが口の中に広がり、柔らかい食感が次の一口をそそった。

この時、テレビを観ながら食べていたのだか、あまりの美味しさに自然と目を閉じていた。「この味をゆっくり味わいたい。」何とも言えない幸福感がやってくるのがしっかり感じられた。

そうして、ハッとした。「あ、幸せってこういうふうに感じるものなのだ」と。

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終わりの見えない状況である、と絶え間なく報道するニュース。

毎日更新される様々な数字。

「先が見えないね」の話で始まる電話の会話。

そういう環境に囲まれながら、自宅で過ごすようになってから私はいつも「未来」のことばかり考えるようになってしまっていた。

何が起こるか誰にも予想できない、今までの生活はもう戻ってこないかもしれない、１ヶ月後は一体どうなっているんだろう…。

そういう「未来」への不安しか見れていなくて、大切な「今」とちゃんと向き合えていなかった、「今」という時間を楽しめていなかった、ということに気づいた。

ここでいう私の「今」とは、「周りで何かが起こっている現状」というものではなくて、私たちが過ごしている「時の流れの一部」「その瞬間」のことである。

ご飯を食べている「瞬間」

お気に入りの音楽を聴いている「瞬間」

空をボーっと眺めている「瞬間」

おしゃべりをしながら大笑いしている「瞬間」

近頃、何をするにも「未来」のことばかり考えながら生活してしまっていないだろうか。そんなことをしてしまっては、「その瞬間」にしていることを楽しめないし、満足できるはずがない。それが例え、自分の好きなことだったとしても。

私はどうやら、好きなことの楽しみ方を忘れてしまっていたようだ。

チョコブラウニーを食べていた時のように、私たちは五感を存分に使ってこそ、「その瞬間」に幸せを感じられるのではないだろうか。目の前にあるものの匂いを感じ、目で楽しみ、耳で気づき、口で味わい、肌で実感する。そこでは、「未来」を心配する要素はいらない。ただ「今」を感じられたらそれで十分なのである。

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先の見えない状況の中で、気分が落ち込んでしまうことも多いだろう。やりたいことができずにイライラしてしまうこともあるだろう。日々流れてくる情報に耳をふさぎたくなる時もあるだろう。「未来」に不安を感じているのはきっとみんな同じなはずである。

そんな時こそ、「今」を思いっきり楽しんでみてはいかがだろうか。

どんなことでもいい。食事中に、ゆっくりと咀嚼しながら美味しさを味わってみるのもいい。ベッドの上でぼーっとするのもいい。好きな音楽を目を閉じながら聴き入るのもいい。腹筋が痛くなるまで家族や友人と笑うのもいい。

自分が好きだなと思うこと、心が落ち着くと感じること、それらを五感をフル活用して楽しんでみる。少しの間だけでも「未来」に対する不安、焦りを忘れる時間を作ってみる。「あ、私今幸せだな」と思える瞬間がみんなにあってほしいと切に願う。

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今日、久しぶりに香水をつけてみた。最近はずっと家に居たから、毎日香水をつけていたことすら忘れていた。

左手首にシュッと吹きかけ、右手首と一緒に肌になじませた。すると、甘い香りがふわっとただよってきた。「あ〜、この匂い、この匂いだよ」と勝手に納得する。

「小さな幸せ」とは、忘れやすくて、でも案外自分の近くにあって、私たちが見つけてくれるのを待っているのだろう。

あにー