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#女の体に男が口を出すな :女性のリプロダクティブライツ。

こんにちは。あんなです。
先日以下の写真を投稿したところ、たくさんの方に反応ををいただきました。

これは、去年行われた緊急避妊薬のオンライン処方検討会の様子です。第一回の検討会では、なんと女性参加者が一人しかいませんでした。
この検討会は有識者の男女比のみならず、参加していた男性医師の問題発言も話題となり、改めて日本の性に対する認識の遅れを痛感した出来事でした。(→「若い女性は知識がない」「若い女性が悪用するかも」。アフターピルのオンライン診療検討会で出た意見【検討会の経緯まとめ】

堀江貴文氏の低用量ピルを「働き方改革」の一つとして取り入れるという主張が炎上したのも記憶に新しいですね。(→うなぴぴちゃんさんのツイート

現在、女性のリプロダクティブライツ関連の決定事項は男性によって決められています。今回は、この構造についてお話したいと思います。

リプロダクティブライツってなに?

noteを読んでくださっている方の中には、リプロダクティブライツ(通称リプロライツ)という単語を初めて聞く方もいらっしゃると思うので、少し説明します。
リプロライツは、セクシャル・リプロダクティブ・ライツ(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)の一部です。この概念は、1994年にカイロで開催された国際人口開発会議によって広められた概念です。
では具体的にどのようなことがこの言葉の中に含まれるのか。

・すべての個人とカップルが、子どもを産むか産まないか、産むならいつ産むか、何人産むかを自分自身で決めることができること
・安全に安心して妊娠・出産ができること
・子どもにとって最適な養育ができること
・他人の権利を尊重しつつ安全で満足のいく性生活をもてること
・ジェンダーに基づく暴力、児童婚、強制婚や、女性性器切除(FGM)などの有害な行為によって傷つけられないこと
・誰もが妊娠・出産、家族計画、性感染症、不妊、疾病の予防・診断・治療などの必要なサービスを必要な時に受けられること
(→JOICEF:セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツとは)

人権感覚が気薄な日本においては、やはりリプロライツに対する認識も浅はかです。国連では、リプロライツは人権の一つであると主張されているほど、我々の健康とウェルビーングに大きく関わる問題です。国連はリプロライツに含まれる12の権利を上げています。

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このnoteでは、上げられた12のうち3つ点に着目したいと思います。

1. The Right to Decide the Number and Spacing of Children
 (子供の数、タイミングについて個人が決められる権利)
2. The Rights to Education and Information
 (教育・情報への権利)
3. The Right to Enjoy the Benefits of Scientific Progress
 (科学的プロセスの利益を享受する権利)

女性の避妊

今、日本で使用できる避妊の方法は:
・コンドーム
・低用量ピル
・IUS(子宮内避妊システム - ミレーナ等)
・IUD(子宮内避妊用具)
・緊急避妊薬(アフターピル)
・避妊手術

ちなみに、避妊方法として使われている割合は:
第1位:コンドーム 82.0%、
第2位:性交中絶法(腟外射精)19.5%、
第3位:オギノ式 7.3%、
第4位:ピル(経口避妊薬)4.2%、
第5位:IUD (子宮内避妊具)0.4%
(→JOICEF:日本の避妊方法から考える

性交中絶法(外出し)とオギノ式(安全日)は効果的な避妊方法ではありません。5人に1人の方がこのどちらかの方法を採用していると知り、少しびっくりしています。

この数字から行くと8割の女性は男性がコンドームをつけることに頼り、2割の女性は男性がイク前に抜くことを信頼しているということになります。(コンドームを付けながら外出しする人もいるので数字が重なります。)

となると、主体的に避妊をしているのはわずか5%の女性。
日本の避妊は、女性が受動的なのです。
女性の人生を必然的に左右させる妊娠は、女性がコントロールすべきであると私は考えます。なのになぜ、男性に頼るような状況になってしまっているのでしょうか。
(注意:ピルを飲んでいても性病予防のためにコンドームを付けましょう。)

コストの問題

今回調べてみて初めて知ったのですが、低用量ピル、IUS、IUDは避妊目的であれば保険が適用されないそうです。
例えばミレーナ(IUS)を使いたいと考えた時、いくらかかるのでしょうか。

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自費の場合、全部で9万円(一般的には4万円)ほどかかることになります。
低容量ピルは、(保険適用で)だいたいワンシート(1ヶ月)2000円から3000円ほどです。一年で24,000円から36,000円ほどかかります。本来ならば一枚900円ですむところ、薬価がわざと引き上げられているのです。
(→開業してわかった、日本でピルが普及しない理由
アフターピルに関しては、一回10,000円から15,000円かかります。これは世界的にみても高い値段設定です。(医療費が高いと知られているアメリカでも一回4000円から7000円です。)なお、アフターピルは薬局で売られている国が多く、日本のように処方箋が必要なのは珍しいです。

選択肢の少なさ

IUSとIUDは、出産経験がなくても使用できますが、出産経験がある女性に多く進められている避妊方法です。となると、今の日本では、出産経験の無い女性は男性がコンドームをつけることに頼るか、ピルを飲むか、実質二つしか避妊の選択肢はありません。自発的にできる避妊方法はピル一択です。
しかし、今では化学の進歩もあり、様々な避妊方法が存在します。アメリカでは、同じピルでも毎日ではなく月に一回飲むだけで十分なものも研究段階にあります。

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上記が海外で利用可能な避妊方法です。この中で日本で使用できないものは以下のものです。
1. 女性用コンドーム(日本でも購入できますが、知名度は低く数が少ない。)
2. エストロゲンリング(小さな円型のプラスチックを膣内に入れることで、ホルモンが放出される。1ヶ月避妊可能)
3. 避妊用の注射(一回の注射で8〜13週間避妊可能。)
4. 皮下埋没式避妊法(つまようじほどのプラスティックの棒を膣内に入れることで、ホルモンが放出される。3年間避妊可能。)
5. 避妊用パッチ(パッチを腕やお尻などに貼る。1週間に一回交換。)
6. ダイアフラム(カップを膣内に入れて精子が入るのを防ぐ。)

体調や体質によってピルが飲めない人や、毎日薬を飲むのが億劫な人にとっても、これだけオプションがあれば体質とライフスタイルに合わせた避妊方法を選ぶことができるでしょう。なのに日本ではなかなか認可が進みません。

性教育が不十分すぎる

性教育はリプロライツのもっとも重要な点です。
日本の性教育問題は、またそれでnoteがいくつもかけるくらいに疑問をたくさん持っていますが、今回は避妊について。
日本の性教育は義務教育の中に女性の避妊(低用量ピル)が含まれていません。多くの女の子は、自分で避妊ができること(そして生理痛が緩和できること)を大人になってから知ります。国連があげた「教育・情報への権利」が守られていません。
そして多くの親は、子供がピルを飲むことに対して協力的ではありません。低用量ピルは避妊以外にも多くの利点があります。その存在を知ることは、彼女たちの権利です。

女性の健康について男性が決めている日本

日本で様々な避妊方法が認可されない・されるのに時間がかかりすぎている実態や、他の先進国に比べてピル等が高いことは、私が先ほどあげた3つの権利(子供の数、タイミングについて個人が決められる権利、教育・情報への権利、科学的プロセスの利益を享受する権利)に反しています。

どうしてこれらが認可されないのか、値段が下がらないのか。
これらの決定権が全て男性の手にあるからではないでしょうか。

薬を認可する厚生労働省、日本の医療のあり方を決める日本医師会。
これらは男性がマジョリティの空間です。
冒頭にあげたアフターピルの検討会の写真からもわかるように、今日本では女性のリプロヘルス・ライツを決めているのは男性です。

比較的安全な低容量ピルを認可するのに40年かかったのに対し、死亡例まで出ていたバイアグラの認可は半年しかかからなかった話は有名ですね。
(→緊急避妊薬、国内では認可も遅くて入手のハードルが高いのはなぜ?日本家族計画協会に聞いてみた

女性が妊娠するか否かを自分でコントロールするのは女性の権利です。
当事者でない男性がこれらの決定権を持っていては、優先順位も下がりますし、当事者性の無い彼らに問題を理解することは難しいです。

これに加え、異様な自然信仰(自然なものなのだから、我慢すべき)や、母親神話、女性軽視・蔑視が邪魔をします。

自然分娩神話

女性のリプロライツが認められていないのは避妊方法に止まりません。出産も、その一つです。
欧米では無痛分娩が主流なのに対し(アメリカでは60%、フランスでは80%が無痛分娩)、日本では全体の16%しか無痛分娩を選びません。しかも、無痛分娩は事前に予約が必要で、選択できる病院は少ないため、中にはそれを希望していても諦める妊婦さんも多いです。

出産は全治3ヶ月の事故に逢うのと同じほどの身体的負担があると言いますが、なぜ日本人女性のほとんどが自然分娩を選択するのでしょう。
無痛分娩を選ばない理由の一つとして医療事故の可能性が挙げられますが、2010~16年にかけて日本産婦人科医会に報告された妊産婦の死亡事例271件のうち、無痛分娩は14件でした。このうち、硬膜外麻酔による直接的な死亡例は1例のみ。その他13件はたまたま亡くなった妊婦が無痛分娩を選んでいたということになります。
出産は命がけです。今でも年間50人の女性が出産時に亡くなっています。出産時の死は、無痛・自然関係なく、誰にでも起こりうる不運なのです。
(→日本で「無痛分娩」が普及しない本当の理由…「お腹を痛めて産むべき」という風潮

自然分娩が未だ主流である理由は、まさに自然信仰と母親神話です。
「腹を痛めて産むべき」「自然な方が体の負担が少ないはず」
このような信仰から、日本は自然分娩をチョイスする妊婦さんが多いのです。
しかし、当たり前ですが、実際お腹を痛めて産むか否かで子に対する愛は変わりません。壮絶な出産を経てもネグレクト・虐待をしてしまう親も入れば、無痛分娩でも愛に溢れる家庭はあります。

⚠︎ 無痛分娩といえど、痛みはあります。陣痛を経て、ある程度子宮口が開いてからでないと麻酔を打つことはできないので、無痛分娩であってもお母さんは大変な思いをして出産します。
⚠︎自然分娩を自主的に選択する方を非難しているわけではありません。
⚠︎全ての女性が無痛分娩を選択できるわけではありません。医師との相談の上、自分にとってベストな選択をしてください。

中絶

もう一つ、女性のリプロライツが考慮されていないのは中絶です。
日本には掻爬法吸引法という二つの中絶手段がありますが、日本で行われる中絶の約8割はこの掻爬法という方法で行われています(33%が掻爬法のみ、47%が掻爬法と吸引法の併用)。

掻爬法とは、金具を膣内に挿入し、子宮内の妊娠組織を掻き出す手法です。掻爬法による中絶は強い痛みが伴う上(全身麻酔)、合併症のリスクがあります。中には不妊になってしまう女性もいる。

実はこの掻爬法、日本では中絶する女性のほとんどがこの手法を用いられているのにも関わらず、世界のスタンダードではないの。時代遅れの手法なのです。WHO(世界保健機関)は「掻爬法は、時代遅れの外科的中絶方法であり、真空吸引法または薬剤による中絶方法(Medical Abortion)に切り替えるべき」と勧告しています。実際、欧米圏ではほとんど採用されていないのです。

その代わり、欧米では手動真空吸引法という方法で中絶が行われています。掻爬法と違い、柔らかいプラスチックの器具を使うため、子宮内の損傷リスクを下げることができます。痛みも掻爬法より少ないため、全身麻酔ではなく部分麻酔での手術が可能です。
手動真空吸引法は2015年に日本でも認可されましたが、行っている医師の数が少ないです。(新しい方法であることに加え、医療機関にかかるコストが掻爬法よりも高いため。)

そしてさらに、世界65か国以上で認可されている経口中絶薬が日本では認可されていません。中絶薬は、WHOが「女性の体と心への負担がより少ない」として、推奨している方法です。なのにも関わらず、日本では一切取り扱われていません。その理由として、出血などのリスクが挙げられますが、繰り返します。日本は掻爬法というこれまであげた中絶方法の中でもっともリスクが高い方法を主に行っているのです。WHOが危険だという方法を採用し、比較的負担が少ないという方法は採用していない。これが現状です。

中絶にかかる問題はその手法に限りません。コスト面でも、女性を苦しめています。日本で妊娠初期の中絶を行うと10万円から15万円のコストがかかります。これは海外に比べても高額です。フランス、オランダ、イギリス等は無料で行うことができます。アメリカでは中絶にかかる費用を援助するNPOが多数存在し、保険の種類によっては保険でカバーされます。

ただでさえ予期せぬ妊娠をしてしまった女性に対して、身体的に侵害度が高い手術を行い、且つ海外に比べても高いお金を取る。日本の中絶の現状は、女性の権利を尊重していないばかりか、まるで女性を罰しているも同然です。

→未だに「かき出す中絶」が行われている日本の謎
→産婦人科医に聞く、日本の中絶医療の課題

#女の体に男が口を出すな

アフターピルのオンライン処方では、男性医師が「若い女性は知識が無いから」「女性が悪用するから」と反対していました。
「悪用」とはなんでしょうか。妊娠という今後の人生を左右されるライフイベントのタイミングを自分で決めることが「悪用」なのでしょうか?私はそうは思いません。
「悪用」するのはむしろ男性なのではないでしょうか。アフターピルへのアクセスが簡単になれば、避妊せずに性交し、女性に「薬飲めばいいだろ」と要求する男性が増えてもおかしくありません。とにかく、自分の体についての意思決定が、「悪用」であることなどありえないのです。

知識が無いと行った医師は、なぜ女性に限るのでしょうか。アフターピルを使用しなければいけない状況だということは、男性もそのプロセスに加担しているということです。そのような状況を齎したのは女性のみではなく男性にも責任があり、むしろ男性の方に責任が傾く状況の方が多いかと思います。なのになぜ、「知識の無い男性」という言葉が出てこないのでしょう?

ネット上では度々、信じられないほど女性の体や性について知識を持っていない男性が散見されます。どうして彼らの知識の無さへの言及はないのでしょうか?

堀江貴文氏は女性に低用量ピルを飲ませて「働き方改革」をしようと提案しました。
女性がピルを飲むのは自分の体調・避妊のためであって、働くためではありません。誰かに言われてすることではなく、自分で選ぶことです。
飲みたくなければ飲まなくて良いとあとで弁明していましたが、社会が女性に「働くためにピル飲みなよ」という世界で、飲まない・飲めない女性がいた場合、彼女が職場でミスするたびに「ピル飲めば良いのに」と言われるようなハラスメントが生まれる可能性が高いです。

ピルの認可には40年かかりました。今でも国内で手に入らない避妊方法がたくさんあります。

多くの女性は社会の圧によって自然分娩を選択させられています。

日本で行われる中絶は、他の方法に比べて危険性が高く、なぜかより安全な手法が浸透・認可されません。
医師の中には『(中絶は)汚れ仕事なんだ』と発言する人もいるそうです。それって、彼らが当事者になることが一生無いからそう思えるのではないでしょうか。こういった意味でも、女性医師が増えることに意味があるのではないでしょうか。

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もう、アフピルオンライン処方の検討会のような悪夢は起こしたくありません。女性のリプロヘルス・ライツに関わる決定の際、有識者のマジョリティが女性であることを求めます(本音をいえば全員女性が良い)。

男性が女性の体についてアレコレ言える時代はもう終わりにしたい。
女性は男性の所有物でも付属品でもないのです。

今後もこのような問題が起こった際は、#女の体に男が口を出すな で対抗していきます。もしあなたもそのような問題を目にした際には、このタグを使って共に戦ってくれると嬉しいです。

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えんみちゃんさんが緊急避妊薬へのアクセスを改善するための運動を行っています。是非 #緊急避妊薬を薬局で で呟いてください。

緊急避妊薬を薬局に置くためのキャンペーンはこちら。
私も賛同させていただきました↓

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福田和子さんが、以下の活動をなされています。私も賛同しました。
日本でももっと避妊の選択肢が広がるべきと思う方は是非。

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