当時の携帯のメモには、「暖房切った? 暖房をつけっぱなしにしていたかもしれない」とある

ファミレス。隣の老夫婦。「関ジャニが関西弁をやめるらしいってね」

渋谷。明治通り。背の低い男とすれ違う。「このペースで歩いてるのがめっちゃ嫌で、彼女の前で」

おじいちゃんが北海道でつくっていた家族とうまくやっていこうとする夢を見る。

秋葉原。大勢のパトカーがヨドバシカメラの前に止まる。一人のサラリーマンが "有志" の男たちに取り押さえられている。5メートルほど離れた地点に女性が立っている。ヨドバシカメラで痴漢があったらしい。(2020.7)

下北沢。女性二人組が前を歩く男二人組を指さして品評しあっていた。

明け方の4時過ぎに卒論を書き終える。PDFに出力したデータをUSBに入れて、たしか11時頃まで寝て、もういちど目を通して誤字を確認してから本郷の製本屋へ。表紙の色も選べるらしく、灰色にしてもらう。郵送で3部提出することになっているので、4部注文する。店を出て本郷通りの古本屋に入ると知らない番号から着信があり、さっきの製本屋さんが両面印刷にするかどうか聞いてきたのでそれでお願いしますと答える。上野まで歩いて、日が暮れるまでドトールで過ごす。あまり寝ていないので本も頭に入らず、たぶんなにもしていなかったと思う。上野から歩いて帰る。ハイデガーについて40000字ほど書いたが、なにを書いたかその頃には忘れてしまっていた。家に帰ってマヂカルラブリーno寄席の配信を観た。(2020.1)

朝ごはんのカロリーメイトが床にボロボロ落ちる。まいばすけっとに売っている類似商品はそうなりにくい。

五反田。カバンを前に下げたまま山手線に乗り換える。

エアコンを切ってきたか出先で不安になる。当時の携帯のメモには、「暖房切った? 暖房をつけっぱなしにしていたかもしれない」とある。

シーツを替えないといけないとここ何日かずっと思っている。

渋谷の喫茶店。トイレの便座を上げたままにする土人に殺意をおぼえる。

選択したシャツの胸ポケットに紙切れが入っていたか洗濯物全体どころかそのシャツも無事だった。

下北沢。タウンホールのすぐ近くにある古本屋の店先で、小さい男の子と女の子が絵本を音読している。しばらくすると30代くらいの夫婦が店から出てきて、奥さんの方はクッツェーの小説を手に持っていた。こんなリベラルな家庭をもちたいものである。もう一つの、『街の上で』の舞台になった古本屋に入ると、思想書の棚に単行本2冊分の空白ができていて、そこにはたしか『グラマトロジーについて』(ジャック・デリダ)があった。上下2冊で5000円なのにどうして渋ってしまったのか。

渋谷の喫茶店。「まだ18でしょ? あと3、4年は〔…〕グイグイ系の彼女いそう〔…〕すねるっていうから優しくしろよって言うから 意味わからんこいつ、死ねばいいのにって思わん?〔…〕大人ぶりたいんだよ、店に来てるときは〔…〕文面とかになると〔…〕なんやこいつ」「アフリカの、なんとか族が多いとこあるじゃん〔…〕国民さんがみんな痩せてるから、太ってるほどもてるらしいよ」「そしたら、イエス、ズームしようってなって、言葉がわからないからずっとイエス、イエスって」

定時に終わって17時52分の電車に乗る。隣に座ったおばあちゃんのLINEを覗き見てしまい、いくつかのグループLINEを行き来していた。「みのりのちぎり絵で入会です」「嬉しい!」「こんにちは、〇〇です。母の介護に時間を取られるようになり、しばらく参加できません」「ウクライナハガキ、10枚です」

有給の朝。アラームを切っていなかった。

自分の部屋だから別にいいとはいえくしゃみをふさげなかった。

男子トイレでネクタイが下腹部につくのは、みんな何も気にとめないようにしているだけで衛生的によくないと思っている(ネクタイと下腹部のどちらにとっても)。

高円寺で降りて、線路に沿って東に歩く。ガレージの入り口で警備員二人組が5メートルほどの距離をおいて談笑している。学生時代にはじめて高円寺に来たときも、この二人組の前を通った気がする(はじめて高円寺に来たとき、ライブまでの時間のつぶし方がわからず、坂の多い住宅街で道に迷ってしまった)。環七に出て北にしばらく進むと、スタジオを兼ねたバーがあった。大通り沿いだと撮影もしにくいだろうにと心配して引き返す。座・高円寺はバイト先の役者さんに誘われた舞台以来で、地下に降りるエレベーターで手汗さんと乗り合わせる。会場入り口のドアに頭をぶつける。自分の出番直前に、マスクをしたままラムネを食べようとしていた。(2021.3.13)

さっきまで中野のルノワールにいた。マイナンバーカードの交付申請書を書いて(通知書を紛失したのでオンラインでの申請ができず)、ブックファーストで買ったつげ義春の漫画を読む。隣の席の老人。「こんなふうに再会できたのは素晴らしいことだと思うし……」


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