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与太話

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他愛もない話
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2023年6月の記事一覧

それぞれの生 『ストーナー』

それぞれの生 『ストーナー』

 ジョン・ウィリアムズの『ストーナー』という小説を読んでいる。ストーナーという男の人生を淡々と描写している本だが、読んでいるとアイツの人生は華やかで楽しそうだな、それに比べて自分は、などと他人と比べたり羨ましがったりすることがバカバカしくなり、ちゃんと自身の生活を見つめながら生きるのがいいんだという気分にさせてくれる稀有な小説だ。話に派手な起伏や情熱的な会話シーンや意外な展開などはなく、若きストー

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Glory 日常

 生存時間の八割を、生存と生活を憎むことに費やしながら生活している。最近は五分五分の確率で出勤に失敗している。といって、この文を読む勤め人の皆様には職場の勤怠が悪い同僚などを私に投影して非難してほしくない。私の仕事は単独プレーで、私がさぼることで迷惑をこうむったり仕事の肩代わりを強いられる立場の仲間は存在しないからだ。このように、別に誰もまだ何も文句を言ってこないのに「こういうやつがこういうケチを

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一泊二日で猪苗代へ行った (後半)

一泊二日で猪苗代へ行った (後半)

 そろそろ温泉に入りたいなと思って友達のほうを見て、はたと困惑した。今回の宿は部屋風呂こそ付いてないものの、館内に4か所の温泉部屋があって自由貸切になっている。友達が公衆浴場で他人と入浴するのが苦手なのは知っているが、私と入るのは平気なのだろうか。一緒に入るつもりだった場合、じゃあ別々に入りますか的な声掛けをしたら友達は「え?そんなに気をつかってたの」と恐縮してしまうかもしれない。最初から別々に入

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一泊二日で猪苗代へ行った (前半)

一泊二日で猪苗代へ行った (前半)

 気の置けない友達と遠くの温泉宿に泊まってみたいという長年の願いがようやく叶った。その友達によると「福島県の猪苗代がいいのではないか。猪苗代湖や五色沼といった湖の景色がきれいだし、むかし日帰りで行ったことのある諸橋近代美術館がとてもよかったのでまた行きたい」とのことだったので、行先は猪苗代にすぐ決まった。とにかく寛ぐことに重点を置き、予定をあまり詰めず、宿でも常に一緒に行動したりいっぱい会話したり

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