Glory 日常

 生存時間の八割を、生存と生活を憎むことに費やしながら生活している。最近は五分五分の確率で出勤に失敗している。といって、この文を読む勤め人の皆様には職場の勤怠が悪い同僚などを私に投影して非難してほしくない。私の仕事は単独プレーで、私がさぼることで迷惑をこうむったり仕事の肩代わりを強いられる立場の仲間は存在しないからだ。このように、別に誰もまだ何も文句を言ってこないのに「こういうやつがこういうケチをつけてくるに違いない」と勝手に妄想してひとりで腹を立てたり予防線を張った断り書きをしているのもじゅうぶん病気だとは思う。

 朝目が覚めて、きょうの気分は最低だな、何もしたくねえな、でも仕事に行っといたほうがいい気がするなという日は逆に30分早く出勤する。まだじゃっかん寝ぼけていて「外へ出たくない」という感情が麻痺している隙に出勤を始めてしまったほうが結果的に気持ちが楽なのと、元気じゃない時に職場駐車場の混雑に身を投じたくないからだ(始業に良い感じで間に合いそうな時間帯は当然込み合っている)。でも、30分早く出勤せざるを得なかったという負担感があるのでそういう日は少し機嫌が悪い。今日もぷりぷりしながら出かけたせいで日傘と帽子を忘れた。日焼けしようが皮膚がんで死のうがどうでもいいが、暑いのと眩しさからくる疲れは嫌いだ。駐車場から建物まで外を10分歩かないといけないので、運転用サングラスをかけたまま犬用に積んであったバスタオルを頭巾のように頭に巻いた。涼しいけれどもどんな姿になったかは気になったのでスマホのインカメラで自分を撮影したら、頭にタオルを巻き不機嫌な顔をしたおばはんと背景に写りこんだ美しい空・樹木の対比が気に入ったのでツイッターにアップロードした。私は何もかもどうでもいい決まった人間なので自分の顔とかをわりと無頓着にツイッターに載せる。殺しにきたければ殺しに来るがいい。金目のものは死んでも絶対やらんけどな。持ってないから。それはいいのだが、写真に「うつくしい」とリプライが来たので「ありがとう」と返信した瞬間、この言葉だけだと相手は私が自分の顔をほめられたと勘違いして礼を言ったように思ってしまうのではないかと心配になった。でもここで「あっ!もちろん空と木についての感想だって分かってますから(;^_^A アセアセ」などと追加のメッセージを送ろうものなら、相手が恐縮してあっいえいえ〇〇さんも美しいですよ~と心にもないお世辞を言う羽目になることは目に見えている。フォローするつもりの言葉をつけ足したばかりによけいに気まずくなることはよくあるので、こういう時の正解は「それっきり沈黙を守る」だ。

 上司が隣席で作業をしているので「上司さん。10段階評価で1ぐらいのおもしろエピソードを聞きませんか」と邪魔したところ「それって要するにおもしろくない話なんじゃ…」と言われたが、構わずに聞かせた。私のおもしろエピソードというのは、先日大雨でちかくの河川が増水したとき川の様子を見に来た風情の人を買い物に行きがてら遠巻きに目撃したことだ。川の様子を見る人を見る自分という二重構造が少しおもしろかったのだ。「それだったら僕は10段階中3ぐらいのおもしろ話があります」と上司が対抗してきた。職場内でまわってきた研究者対象の評価疲れ・申請疲れについてのアンケート調査というメールを開封したところ、アンケートリストがめちゃくちゃ長くて、そもそもこれに回答するのが疲れるやんけ。と思ったらしい。終わり


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