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カイジが面白過ぎた。

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賭博黙示録カイジ。名前ぐらいは聞いたことがあると思う。「ざわ…ざわ…」「福田のおっちゃん!」「キンッキンに冷えてやがる!」など名言も多く、よくモノマネなどでも使われることから、何となく知っている気になる。
かくいう俺も、映画こそ1,2と観たが、原作の漫画、そしてそれに近いアニメはついぞ観たことがなかったので、知っているようであまり知らないという状況だった。
だが最近、たまたまカイジを読む機会があったのでパラパラと読んでいたら、これが信じられないほど面白い。あっという間に1部(13巻)を全巻読破してしまった。これから、そのカイジの魅力を書いていきたい。

二転三転する状況、博打のヒヤヒヤ感

第一部の前半、カイジは怪しい客船エスポワール号に乗ってギャンブルを行う。ここではかの有名な利根川の演説「勝たなきゃゴミだ!」、限定じゃんけん、船井の出現など、見覚えのある設定にテンションが上がる。利根川の演説は映画ではかなり厚く描かれていたが、漫画では割とあっさりしていた。これに関しては映画の方が迫力があって好きかもしれない。
エスポワール号ですごいのは、状況が二転三転どころか、五転六転ぐらいするところだ。何回必勝法が出てきたか。酒が入っていたのでその必勝法の細かいロジックまでは正確に理解していないのだが、ざっと読む感じそれらに矛盾は感じられない。限定じゃんけんというシンプルなゲームで、ここまで状況に変化を付けられるのは凄い。最後の最後までカイジがどうなるか分からず、ドキドキさせられっぱなしだった。特に最後は無一文で敗者の部屋に入れられ、さすがにダメだろうと石田のおっちゃんのように諦めた読者を裏切るようなカイジの土壇場の逆転。カイジの諦めない力を臨場感たっぷりに感じることができた。

カイジってヒューマンドラマだったのか


一つだけ気になったのは、カイジが一巻の冒頭、暇を持て余すばかり高級車にいたずらをして回っていたという事。巻を読み進めれば、カイジは社会不適合者ではあれど、人をむやみに貶めようとしたり、意味のない嫌がらせをしたりするような人間ではないように思える。序盤も序盤だからまだカイジのキャラ設定が固まっていなかった、またダメ人間感を出したかったなどの理由があるのかもしれないが、この描写には少し違和感が残った。

それでも、カイジのうつ博打の熱さ、それから一方で冷静さと異様な頭の切れを持っていながらも、いざという時は必死で仲間を鼓舞したり、絶対に仲間を裏切らなかったりという熱さを兼ね備えたカイジの人間的魅力に憑りつかれた。どういう展開でこの状況を打破するんだろうというワクワク感もありながら、カイジを取り巻くヒューマンドラマも楽しめてすごく面白い作品だった。本当に面白くてびっくりした。映画なんかより数倍面白い。
カイジを読んでいると、自分がなんというか凄くちっぽけな者に思えてくる。この漫画を通して問われているのは、今を生きる本気度だ。カイジはギャンブルジャンキーで、一度は船から生還しても結局ギャンブルでしか金を稼ぐことはできないし、利根川もカイジに比べたら真っ当な事を言っているようにも見えるがイカサマはするし、そもそも人の命を粗末に扱う事業の一端を担っている。結局真人間はこの漫画の中にほとんど出てこないのだが、それでも一貫して本気で勝負をしている。勝負だから勝った負けたはあるが、最も救いはないのは何も考えず、何も行動せず、ただダラダラと生きているものだけだ。利根川は焼き土下座を食らうなど散々な目に合ったが、それでも漫画の中では「意地を張った格好いい様」が描写されている。漫画の描写として最も虐げられているのは、ダラダラと勝負をする人、何も考えない人だ。作者はギャンブルを通して、本気で生きることの重要性を伝えようとしているのだと感じた。もしくは、本気で生きなければいけない事は分かっているけれども、ギャンブルぐらいでしか命を燃やせないという悲しい人間の性格を書いているだけかもしれないが。ただ、とにかく俺はすごく胸に刺さるものがあった。本気で生きている感覚がないからだ。今日からいきなり情熱に満ち溢れた人間に生まれ変わることはできないかもしれないが、せめて今の、あまりに堕落した状況を恥ずかしいと思えるぐらいには心変わりができたのではないかと思う。


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