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シンセについて聞いてみよう その4〜PCMシンセサイザー編〜

佐々木:はい、それではここからはPCM、サンプラー、ウェーブテーブル、ついて見ていきましょうか。今日はまずPCMシンセサイザー

南:あ、、、はい!、、、はい?

佐々木:きっと南さんは「この人いつまで続けるんだ?」的な気持ちになっていると思いますが、ここまで来たからには、おじいちゃんが戦争の話をし始めたのと同じ様に聞いてもらうしかないですね。

実際僕も祖父が亡くなる前にもっと聞いておけばよかった、、と本当に思うんですよねぇ、、、。

南:わ、わかりました、、、
おじいさんシンセってなーに〜?

佐々木:そうじゃのぉー、、、


じゃシンセの種類の一番の謎の部分かもしれないPCMシンセサイザーを見ていきましょう。
全部を説明すると長くなるので大分簡単に説明していきますね。

まず90年代までに存在してたシンセはアナログ、最初期のデジタルシンセのFMシンセでしたよね。そこに新たなデジタルシンセが加わりました。それがPCMシンセサイザーというものです。

南:PCM。。。

佐々木:はい、pulse code modulationというアナログをデジタルに変換するための方法で、前回話した様に世界はどんどん0と1の世界に変換されていくのですが、音の世界はいち早くデジタル化されて行ったんですよ。

わかりやすいのがCDの登場です。レコードやテープからCDになって行ったのも80年代終わりごろで、どんどんデジタル化されていきます。

その時のCDへの変換方法がPCM方式というものなんですよ。なので実は僕らにはとてもなじみ深いものでしょ?

南:へ〜!でも年齢がバレますね。

佐々木:隠してるわけじゃないけどw
それでそのPCMという方法を使ってシンセサイザーを作って見た、というわけですね。

仕組みを簡単に説明すると、デジタル録音した音を、ただ再生しているだけなんです。ピアノの音を録音して変換してシンセの音に、ストリングスを録音してそのままストリングスの音に、、、という感じで今までのシンセとは基本的な仕組みが劇的に変わります。

世界的にヒットしたKORGのM1というシンセがでた時は皆が熱狂した様です。それまでに出ていたPCMシンセは家一軒建てられるような値段だったものが、M1で買える値段になった事でPCMシンセの存在が身近になりました。それまでDX7で有名だったYAMAHAがこれをきっかけに経営が傾いてしまうくらいPCMシンセが流行します。FMシンセはもう終わった、、と。


南:あーかわいそうなFMシンセ、、、


佐々木:そうなんです、、、まだまだ多くの可能性を秘めている事に多くの人は気付かず、ここでFMシンセは一度闇に葬られます。。。。



でもそりゃそうでしょうね〜だって今まで、パルス波をデチューンしてストリングスだ〜とか、何番のアルゴリズムを使って何対何でモジュレーションかければブラスだ〜とかわけわからん事をやっていたのに、いきなり、はい、これストリングスです、はいピアノです!という音が出たわけですから。


南:私にもとても優しいPCM。。

佐々木:そうなんですよ。とても簡単。
ただアナログからFM、そしてPCMという流れの中で、どんどんシンセンシス、音を合成して作るという事をしなくなってしまうんですよね。中身はすげぇ技術なのに、それを全く知らないで使えてしまう様になっていく。

同じようなタイミングでコンピューターも一般の人も使える様になっていって、どんどんデジタル化が進みブラックボックス化されていく、、と。

南:知らぬまにカクカクな世界に、、、

佐々木:そして更に、前回やったMIDIの規格を使って簡単に誰でも音楽を打ち込んで作曲できるシーケンサーまで搭載されて、所謂ワークステーションシンセサイザーというものが作られていきます。


シンセ一台あれば一人でオケでもバンドでもなんでも作れますよ的な。このワークステーションシンセは日本でたくさん作られていまして、世界的なヒット商品をガンガン発売していきます。日本がイケイケだったわけです。

南:おぉ工業大国日本!

佐々木:そうなんですよ。ちょっと話が逸れますが、日本の3大電子楽器メーカーYAMAHA、ROLAND、KORGは、世界的にもとても有名で、今でも世界に誇れる楽器を作り続けています。多分YAMAHAは世界最大の楽器メーカーなんじゃないかな。電子音楽はこの3大メーカーがなければ発展しなかったんじゃないか、くらい影響を与えているのではと思います。

後でやるROLANDのTR808、909がなかったらいくつものジャンルは生まれて来なかっただろうし、YAMAHA DX7やKORG M1がなかったら自分達が音楽を作ろうという事にもならなかったかもしれない。

実は日本って楽器的にはエレクトロニカ大国なんですけど、最近はあまりそれは知られていない。
ドイツの人は日本に来たらKORGのシンセを買って帰るそうです、日本で買うと安いからw
ちなみにドイツはクラシック大国でもあるけどテクノ大国でもある。すごい差。

南:なるほど〜日本ってそんなにすごかったんですか、、、

佐々木:そうなんですよ〜今はちょっと押され気味なところもありますけど、、、ちょっと話が逸れましたが、、、

そしてPCMシンセの登場によって、音楽制作の方法まで変わっていきます。
今までのシンセサイザーは他の楽器の代わりではなくて、シンセサイザーの音がする楽器、、、という様な見られ方がされていました。シンセサイザー特有の音。それがかっこいい!という様な。
例えばアナログシンセのこういうバッキング的な音を聞いて、ピアノの代わり!とは思わないですよね。シンセの音!ってなるはず

南:なるほどなるほど。シンセの音っていい音ですね!ってなります。

佐々木:ですがPCMの登場で、生楽器の音も出せる様になり、シンセはいろんな音が出る楽器という見られ方に変わっていきます。
そうなると、例えばバンドの演奏するのに、今までのドラムがいて、ベースがいて、ギターがいて、、とたくさんの人が集まって音楽を作るスタイルではなく、一人でバンド音楽を作るという形がどんどん進化していきます。
今まではバンド特有のグルーブというのは、そのメンバーの組み合わせで生まれるものだったのが、一人の個性で音楽を作れる様になってしまう、、という事になってしまったんですよ。

これはかなり大きな変化で、音楽を作る人間が個人になっていき、さらにその方法論の様なものも多種多様になっていきます。今まではスタジオの作法とか、バンドメンバーのコミュニケーションのための共通言語の様な物が必要だったのに、もはや一人で全部作っちゃえばそんな知識がなくても思った通りに音楽が作れると。

南:あーなるほど、、、それっていまの時代にも繋がってますよね!私も一人で音楽を作れる様になっているわけで。。。

佐々木:そうですそうです!
僕がいまこうやって音楽を作れているのもPCMシンセの登場のおかげなんですよ。一人でドラムやベースやピアノを全部作っちゃえる。
PCMの登場により、高度な技術や経験がない一般の人でもワークステーションがあれば音楽が作れる!という流れができたわけですよね。

南:ありがたき、PCMシンセサイザー、、、

佐々木:尊い。。。

けれどデジタル化の弊害とも言えるのが、まぁ誰が作っても同じ、、という様な没個性という時代の始まりとも言えます。今までの楽器は演奏した人間が違えば違う音が出た。僕がギターを演奏すれば上手い下手は関係なくとも、僕固有の音が出ていたわけですが、デジタル化はそこまでは出来ない、、、かもしれない。
複製可能な物が世界に溢れかえるわけですね。

まぁそもそも文化は複製されて広がるものなので、一概に悪いわけでもないし、個性なんて物を重視しているのはちょっと前の世代だからかもしれないので、弊害とも呼べないのですが。
でもジミヘンみたいな、超個性の塊みたいな人に出会いづらくなって来ているかもしれないですよね。

南:あーなんかわかります。なんかみんな同じに聞こえるのは歳のせいかと思っていたが、、、

佐々木:それもあるかもしれないけど、、、

南:なんですと!!怒

佐々木:でもそれだけでもないのかもしれないです、、、とだけ言っておきますw

という事で今回はPCMシンセの説明をしましたが、今日は寝ないで聞いていただけてホッとしております。

南:おじいちゃん今日もありがとうね、、、ゆっくり休んでね。。。

佐々木:いや!まだまだわしはイケる!

南:ぐふ、、、、。


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