あの日のご厚意。

以前の職場での出来事だ。

入居されているXさんの奥様が毎週決まった日に面会に来られる日。そのとき私は居室清掃を行っていた。

「いつもおとうさんの部屋を綺麗にしてくれてありがとね」

そう、仰って下さった。

あの寒い12月、

居室清掃中に奥様は私に一本の缶コーヒーを渡され

「あとで飲んでね。おとうさん今日体調わるそうだから…」

と告げリビングにいるXさんの食事介助をされに向かわれた。

私は当時、ご家族様からの頂き物はなるべく受け取らないようにという学生時代の学びから、その頂き物を丁重にお断りしようと試みた。

しかし結局うまく拒めないまま、途方に暮れた私は、奥様のお荷物の中に、そっと缶コーヒーを仕舞い戻して何事もなかったかのように振る舞い、お帰りになる奥様をお見送りした。

今では、それが、奥様からのご厚意だったのだろうと思う。

次に会う時に改めて断ろうと思っていた。

だけど、その日は再び訪れることは無かった。

突然の別れ。 

奥様最近見られないな…何かあったのかな、などと思っていた矢先のことだった。

詳しくは聞いていないが、

ご高齢ということもあったのだろう。

あの時、受け取っていれば、

あの時…ご家族様からのご厚意を受け取っていれば…

などと悔やんでも悔やみきれない。

心に残り続ける。現在も。

労うためにあげた缶コーヒーをまた返されて

どんな気分だったか、

とても悲しくなったんじゃないだろうか、とか。

今となっては確認のしようも無い

後悔。後悔。後悔。

だから私は、今後のご厚意に関しては

感謝して受け取るようにと考えを改めた。

…環境が変わると考え方も変わるというのは事実のようで、今の職場での会社方針はご家族様から頂いた差し入れは拒否なく受け取っている。

我々、職員に対してのご厚意なら有り難く頂戴する。

まあ…その職場の方針にも寄りますが。

なるべく拒否は致しません。

会社方針に従います。

記事を読んだ方。

どうか後悔のないやり取りをしてください。

ここまで読んでいただき

ありがとうございましたm(__)m

夜七でした。