Pen to note

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ビジネスバックの中に入れていた万年筆を、久しぶりに使おうとしたら、インクが固まってて書けなくなっていた。

ネットで対処法を調べると、水かぬるま湯に一日中浸けておくと、固まったインクが溶けて、また使えるようになると書いてあった。正直者の僕はその指示に従って、万年筆の筆先を、ぬるま湯を入れた小瓶に優しく落とした。

この万年筆は、社会人になって初めての給料で買った物だ。

初任給で、何か形に残る記念の品をと考えて買った。値段は確か1万円ほどだった。普段はなかなか行かない百貨店の文具コーナーに行って、さらに買ったことが無い万年筆を見てたから、緊張してるし、何を基準にして買ったらいいか分からず、シンプルなデザインで、値段が手頃なものとしてこの万年筆を買った。

それからだいぶ年月が経ったけれど、この万年筆を見ると、この文房具を買った頃の気持ちを思い出す。

下手くそな恋愛をしてた事、若さに任せて飲み過ぎて失敗した事、職場の嫌な上司の事、恥ずかしい思い出とか、楽しかった思い出とか。

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固まったインクを溶かしてる間に、ノートを買いに行った。

万年筆で書く時、ノートによっては裏移りしたり、インクの乾きが遅くて他のページや手についたりするから、そうならないノートを探しに。

そのお店は、街中の老舗文房具屋さんが、若い世代をターゲットにした品揃えとカフェを併設したお店で、特に万年筆とノート類に力を入れていた。

お店の人に、万年筆でも書きやすいノートはどれか聞くと、ここに置いてあるノート類は全部万年筆でも書きやすいモノを揃えているから、どれでも大丈夫ですよ、との事。

ただ値段はちょっと高いんですー、と。

値札をみると、確かに良いお値段でございました。

どのノートも使った事が無いものばかりで、どれが良いのか分からない。少し迷いつつ何となく良さげなノートとメモ帳を選んだ。

万年筆のインクも無かったから、インクも一緒に購入した。今まではインクはブラックしか使ってなかったけれど、気分を変えたくてブルーブラックを選んだ。

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半日以上、水に浸けていた万年筆の筆先を小瓶から取り出し、水気を切ってインクカートリッジを取り付ける。

試し書きをすると、スムーズにインクが出てくる。固まっていたインクがキレイに取れたようだ。

買ってきたノートの1ページ目の1行目にペンの先が触れた。

ペンが走る、ノートの上をインクが滑る、書き味はスムーズだ。高いだけのことはある。

パソコンやスマホに文字を入力するのと、手で文字を書くのは、明らかに体の使い方も頭の使い方も違う。

ましてや万年筆となると、いつも仕事で使っているボールペンとも違う。書くものもいつもはコピー用紙の裏紙が多いから、こんな高級な紙に文字を書くことは日常では、ほぼ無い。

文字を書くだけで、楽しい。

あぁ、こんなに良い気分だと傑作の物語を生み出してしまいそうで怖い。(そうだといいですね)


パソコンもスマホも便利で良いものだけれど、それとは違うアナログの味の有る、ペンとノートと暮らす生活を大切にしたい。

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