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Netflix布袋劇!『刀説異數(WoD)』一話を攻略! ~前提知識解説します~

 2019年7月12日、Netflixにて日本語字幕つき霹靂布袋劇『霹靂英雄戰紀之刀說異數』の前期20話が配信開始となりました。

 日本語の配信タイトルは『ピリ人形劇 ウォー・オブ・ドラゴンズ(Pili Fatasy:War Of Dragons)』なので、「霹靂」や「刀説異數」では検索しても出てきません。ご注意ください。まあ上にリンク貼りましたが。
 刀説異數については前回記事でも紹介しましたが、この記事を読んでいる方はもう第一話をご覧になったでしょうか?
 もし視聴済みであれば、情報量に面食らわれたのではないかと思われます。え、布袋劇ではいつものこと? そんな猛者の方なら、この記事は必要ありませんね。

 霹靂布袋劇は三十年以上「連続した話」が続く壮大なシリーズ。そのため、いつでも、どこから入っても、話の途中です。前の話から引きずっている設定や登場人物や人間関係なんて説明してくれない! 物語を追って理解していけ! というストロングスタイルなのです。
 逆にいつでも入れる作りと言えますが、まあ中々初見殺しですね。でも……ネトフリから初めて入った身には辛いッ!

 というわけで、「できる限り話を理解するために必要な情報を紹介する」のが、本記事の目的です。
 刀説異數の前シリーズ・霹靂劍魂の内容などを調べて解説していきますが、旧作と今作では変更されている箇所もあります。旧作に基づいた情報が今後間違いとなる場合は、本記事を修正しますので、ご了承ください。

■忙しい人のための簡単な説明

 物語の舞台は四百年ほど前の中国! 「苦境」と呼ばれるヤバイ人間とヤバイ怪物とヤバイ武侠がゴロゴロしている危険と苦難に満ち溢れた世界だが、タピオカミルクティー(素還真愛飲)はある。
 屈強な苦境人の中で更に気功で強化された超人……武侠や英雄と呼ばれるものたちは、群雄割拠、それぞれに覇を競っていた。
 刀説異數はその中の「北域」が舞台である。

 かの地では、金陽聖帝・關足天(関足天)と神蚕宮の通瑤池が勢力を二分し、關足天は中原(※中国)にまで侵攻を開始。
 そこで中原正道の指導者・素還真と対立するが、素還真は一度は武林(※中国武術界)からの引退を宣言した身であった。結果的にその誓いを破った彼は、問答無用で落雷によって死亡してしまう。しかしこんなこともあろうかと、素還真からマル秘アイテムを遺された秦假仙は、素還真復活を計画するのだった。

 一方、關足天は自身の力の源である龍氣を穢されて怒り心頭。犯人を探そうと躍起になる。同じく龍気を欲していた通瑤池も怒っていたが、彼女は彼女で配下の宮布衣殺害の犯人・金少爺を殺そうとしていた。最初、これを手伝おうとしていたのが八面狼姫という女性で、彼女は恋人だった一銭一命を金少爺に殺されている。のだが、さらっと気が変わってしまって……。

 一方、武林には天虎八将と魔龍八奇、正邪の両派が現れていた。天虎八将の一人である岐路人は、仲間を集めるため行動を開始する。

■公式人物相関図(※ネタバレ注意)

 ※2019/8/11追加。リンク先は公式のFacebookです。勢力紹介図と統合しようかと思いましたが、色々またがってややこしいので別にしました。
 リンク先は中文なので、関係名を簡単に説明しておきます。

・敵對=敵対。
・情人=恋人とか愛人。
・好友=親友(朋友より関係が深い感じ)。
・殺人奪刀=殺して刀を奪い取る。
・附身=体を借りる、乗り移る、憑依。
・恩公=恩人、の丁寧な言い方。
・師徒=師弟。
・師兄弟=兄弟弟子。
・跟班=従僕、従者。蔭屍人と秦假仙なので「舎弟」が妥当か。
・義子=養子。
・合作=協力、協力関係を結ぶこと。
・属下=部下、配下。
・蜕变=脱皮。ここでは転生のようなもの。

 ※劍禽刀獸の漢字がよく見えないのですが、彼らは風采鈴の「護衛、ボディガード」となります。

●中原編

●北域編

●魔域編

■登場人物紹介

 人物名は音声の台湾語に合わせてか、漢字にカタカナのルビが振られている。が、ここでは読みを日本語で表記します。
 また日本語字幕では、名前は簡易な漢字に置き換えられているので、両方の字体を併記しておきます(秦假仙はそっちの方が馴染み深い人もいる)。
 また、主な登場人物の他、一話で言及されたけれど関係がよく分からない人たちなどを優先的に記載しております。

 各種リンクは霹靂公式サイト(※中文)に飛びます。

素還真(そかんしん):登場一話

 霹靂シリーズの主人公。冒頭では髪を下ろしていて、紹介画像と印象が変わっているので、特徴的な眉に注目して欲しい。
 異數の前作・霹靂劍魂で欧陽上智を死に追いやった後、事前の約束通り武林から引退。しかしその後、引退の誓いを破ったカドで雷に打たれてしまった。中国古典の封神演義では「師匠に逆らったら、これこれこういう(残酷な方法で)死にます」という誓いを弟子入りの際に立てるが、死とセットで誓いを立てる文化があるということだろう。

崎路人(きろじん):登場一話

「岐路人」という言葉は「世間を渡り歩く人」ぐらいの意味で、中国宋代の民間芸能人のことを指す。ので本名ではなさそうだが、つっこまないのは江湖のならい。
 兄の仇・燈蝶を追って苦境にやってきた集境の人士。
 達観して色々なことを知っており、背負った袋にも色々入っている。「乾坤大移動」という技(幻術)で、山一つまるごと袋に入れちゃうことも。
 素還真不在の間、中心となって活躍する。
 初登場時に彼がいた黑湖は、彼の苦境における根拠地である。劍魂17話に登場した後、失明していた葉小釵を助けたという。

七色災主(しちしきさいしゅ):※故人

 一話にて岐路人の台詞で言及される人物。
 七色は称号で名前は「普九年(ふきゅうねん)」。稀代の軍師で、金少爺を補佐して順調に南霸天(地名)を掌握したが、欧陽上智に大敗。
 その後、缺心に心臓を奪われて活死人(リビングデッド)と化し、黑湖で眠りについた。岐路人は「南宮取(旧・黑白郎君)を助けたために死んだ」と言っているので、それが元で魔域の手先である缺心を送られたのだろう。
 百度を読むと葉小釵に両足を、郎君に左手を捐献(寄付した)とあるので、彼らの治療をしたことがあるのかもしれない。
※と思ったのだが【7/16追記】
 WoD視聴を進めていくと、実際に葉小釵に彼の足を……というシーンが出てくるので、南宮取も今後左手を失ったりするのかもしれない。

葉小釵(ようしょうさ):正式登場二話

「隻手之聲」を悟るため、舌を切り取った剣客。字幕では彼の台詞が表示されているが、基本は「啊…」などの発声がせいぜいで、なんとなく周りの人は彼の意志を理解してくれるという便利な塩梅になっている。
 一話段階では師匠である半駝廢の家で、傷つき休んでいる。これは霹靂劍魂の終盤、主君・欧陽上智を殺した素還真と十二日間に及ぶ決闘を行っていたためである。家族は師匠の巧龍・半駝廢と、妻・蕭竹盈 (しょうちくえい)、そしてグレきった息子の金少爺

半駝廢/半駝廃(はんだはい)

 葉小釵の師匠であり、名刀鍛冶。欧陽上智も「人中の龍」と驚嘆した。
 二話で髪が黒かった頃の葉小釵(両手が血まみれ)と彼が出てくるが、あのシーンには以下のような経緯がある。
 葉小釵の父は殺されかけたところを剣客・一剣萬生一刀萬殺に救われ、お礼として幼い息子の葉小釵を二人の召使い(剣童)に差し出した。しかし葉小釵は一劍萬生が愛する女性・蕭竹盈と恋に落ち、激しい怒りを買う。
 決闘に勝って彼女と結婚したが、その後葉小釵がどこかに師事して剣を修行しようとするたび、一劍萬生はその師を殺すという暴挙に出た。見知らぬ他人ながら、それを哀れんだのがこの半駝廢先生である。
 彼は鍛冶仕事に使う鎚で葉小釵の両手を打ち、一劍萬生の怒りを鎮めて彼を家に連れ帰った。これが師弟の馴れ初めである。

金少爺(きんしょうや)/金の若様

「早産の一ヶ月と両親が一人少ない」ことから金少一と名づけられたが、彼を哀れんだ萬天紅が少爺と改名。少爺は中国語で若さま、坊っちゃんの意。
 一劍萬生を葉小釵が倒した際に母・蕭竹盈は夫の元を離れ、のちに一歳の時に母が再度葉小釵に会わせた。が小釵本人は二人を戦いに巻き込みたくないため距離を取り、悲しんだ母に捨てられてしまう。
 その後は父方の祖父・萬天紅に育てられた。後に自分で殺したけど。
 霹靂異数の次回作・霹靂劫には、彼の息子である金小開が登場しているので、若く見えても実年齢はそこそこ行っているのかもしれない。なお、娘の花非花秦假仙と結婚するので、彼と葉小釵は秦假仙と姻戚関係だ。
 最初に登場した時は、欧陽上智に麻薬で操られた殺し屋とあり、相当グレていたことが分かる。七色災主の補佐を受けて太陽盟という組織でブイブイ言わせていたこともあったが、彼があんまり身勝手なので、半駝廢によって屈辱を味わわされることとなった(もともとは災主の差し金)。だから狼姫の雲霄楼を出た後、急に半駝癈の元へ向かったのだろう。
 そして半駝癈に復讐するため、彼が師事したのが一銭一命である。

欧陽上智(おうようじょうち):※故人

 欧陽世家当主、かつて中原武林を暴力で支配した覇者。師匠から出された「隻手之聲」という問いに悩んでいた葉小釵を助け、その恩でもって彼の主君となる。
 しかし社会不安を起こす存在として素還真によって打倒され死亡。刀説異數では葉小釵の回想などに登場する。仇魂怨女冷劍白狐の父。

 旧刀説異數では妻に一線生の妹、妾に談無慾の妹などがいる。この設定が健在なら、談と冷劍は伯父甥の関係。

八面狼姫(はちめんろうき):登場一話

 狼族の末裔で、風刀雨箭雲霄楼の主。通瑤池と親しげだが部下ではない、その関係の正体は情人。
「さびしい時に私の友人を召すのはなぜ?」という一話での会話は、原文では「索求我的陪伴,又是怎樣?」。機械翻訳に入れると「私の付き添いを求めるのはどうして?」となるが、「陪伴」を辞書で引くと「お相手する、お付き合いする」とあるので、まあそういうことですね。
 他、一銭一命金少爺とも関係を持っている。

一銭一命(いっせんいちめい):※故人

 一劍萬生一刀萬殺の高弟。八面狼姫の情人でもあった。小銭を投げて人の注意を逸らす技があるので、こういう名前らしい。
 金少爺の百度に「为了报仇决定拜一钱一命为师,却被强迫在赎罪岩接受三万鞭的殴打」とあることから、自分に弟子入り志願した金少爺に、贖罪岩という場所で三万回の鞭打ちを受けさせた。
 彼がやらせたのか私の中文読解に少し自信がないが、金少爺は修行を終えた後、鞭打ちの仇に師を殺して剣を奪ったとあるので、おそらく間違いないと思われる。また、流星君(金少爺母方の祖父)を殺害しているが、金少爺はそれを黙認した。

一線生(いっせんせい):登場一話

 關足天のために策をめぐらし、多くの功労を立てた軍師。以前は欧陽世家にいた養子だが、劍魂の終盤で關足天についた。
 穏やかな性格で、關足天からももっとも信頼されている。が、軽んじられると表面は優しげでも、のちのち報復するという恐ろしい一面も。
 後の屈世途素還真の友人)である。

太黃君(たいこうくん):登場一話

 魔龍八奇の一人。古今東西の優れた剣を巨岩で出来たページに記して積み重ね、「これを読みたくば功力を示してみせよ」とのたまうスカム仙人。岐路人はそのために六万斤(約3600kg)を持ち上げた。
 素還真とは相容れないタイプ。彼は旧作でも刀説異數からの登場なので、過去のことはあまり気にしなくていい。

紫天后(してんごう):登場一話

 現在、金光布袋戲で活躍中の角色・女暴君(姚明月)の代役。もともとは中原で権力争いをしていたが、敗れて北域にくら替え。通瑤池の元へ下る。通瑤池にはまだ信用されていないが、本人もなにやら二心があるもよう。

宮布衣(ぐうふい):※故人

 通瑤池の配下。知略に優れた将だったが、女暴君(紫天后)の嫉妬を買って陥れられてしまった。

■勢力紹介

【中原正道】

素還真、秦假仙(秦仮仙)、蔭屍人、葉小釵、岐路人、一頁書、他

 素還真を中心とした、中原武林の平和を守ろうとする勢力。多数の組織や武侠がここに分類される。冒頭で素還真が死んでしまうので、以後は岐路人らが中心となって活動。北域や魔域の侵攻に対抗する。

【天虎八将】

靈心異佛、崎路人 、枯葉、呼三嘆、半駝廢・葉小釵 (替代)、素還真、一錢一命・金少爺(替代)・八面狼姫

『臥虎秘録』に記載された、魔竜八奇に対抗する宿命を背負った八人。
 旧作では互いの対立闘争いまいちハッキリしなかったようだが、リブートされた刀説異數では変わっているのかもしれない(※霹靂ではよく「運命の●人」という設定が出ては忘れ去られるという、長期連載漫画のようなことが起きる)。

【魔龍八奇】

半邪郎、太黃君、花信風、冰鋒箭無形、藍晶人、常惠恩、骨蚍、織夢師 (正)・風采鈴 (偽)

『蔵龍寶典』に記載された八人。かつての邪神・冥海龍靈によって召集された。公式サイトのあらすじを読むと、岐路人が「すべての陰謀の背後に魔龍八奇が!」と気づいたりするらしいので、きっと活躍してくれるに違いない。

【金陽聖帝】

 關足天、半邊分(半辺分)、一線生、無常天地人三首、他

 關足天率いる北域二大勢力の一。
 土地に流れる龍の力・龍氣によって絶大な力を得ていたが、第一話の段階でそれを失ってしまう。この龍氣の出処が、邪神・冥海龍靈なあたりがだいぶきな臭い。
 龍氣のある玉波池を穢した人物の衣装が、誰かさんに似ているが……?

【神蚕宫】


通瑤池、紫天后、紗輕羅、火雲姑、他

 百朝武后こと北域の女帝・通瑤池率いる勢力。關足天と支配地を二分している。配下は女性で固めているが、旧作では冷劍白狐が身を寄せていたこともあった。
 異獣「獅蚕」を育て、蚕の術を扱う。

【魔域(第一魔域)】

陰冥皇、陰間大法師、阿修羅主宰、缺心、南宮取(旧・黑白郎君)、等活天羅(旧・網中人)、他

 霹靂で一番最初に登場した魔界勢力。第二もある。
 惡魂暴鬼を首魁として六院十八殿を管轄するが、霹靂劇中に登場するのは「鬼道院」、「阿修羅道院」のみ。その下に十八の殿がある。作中に登場する陰冥皇は旧作では第二殿の主である。院と同じく、作中に登場するのはわずか三殿のみ。WoDでは「冥靈道院」が追加されたもよう。
 中原に侵攻するにあたって、「天虎八将」と「魔龍八奇」あわせて「十六星宿」が邪魔と判断し、彼らを排除するため捕らえた南宮取を利用する。
 陰間大法師と缺心は公式サイトだと第一殿の所属となっており、リメイクにあたって陰冥皇が第一殿の主となったらしい。

 この他にも様々なキャラクターがいる。しかし一話、なんなら三、五話ぐらいまでは、このnoteの内容だけでおおよそ事足りるはずである。

 布袋劇の濃縮還元が日本語で味わえるまたとない機会、「霹靂布袋劇ってなあに?」という方は、ぜひ気軽に視聴トライしてみてください!

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