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霹靂布袋劇コミカライズ! 香港漫画『大霹靂』1~5

■初めに

 今回は漫画のレビュー記事なのですが、「20年ほど前の漫画である(00年出版)」「日本で販売されていない海外作品で、日本語訳が存在しない」ことから、ストーリーについて詳細に触れております。つまり、ネタバレ注意!
 もしご自分で読む機会やご予定がお有りの方は、その点ご留意ください。
 また、作品紹介のため、いくつか写真をアップロードしておりますが、問題があった際は削除いたします。

 香港の漫画王と霹靂がコラボした、コミカライズ版霹靂布袋戲『大霹靂』! 御覧ください、この美麗なアートワーク……。

 作者の鄭問さんは残念ながら17年春に逝去されましたが、褒揚令(多大な貢献をした国民を表彰する、台湾の公式文告)を授与されたり、漫画家として初めて国立故宮博物院で展覧会を開かれた、まさに台湾を代表する作家さんです。
 ちなみに日本未発表で知名度が低いためか、大霹靂は日本のWikipediaでは作品として名前は載ってないようです。ちょっと残念。
 また、監製(監督の意。この場合は編集または監修ということか?)として黄玉郎さんが名前を連ねておられます(霹靂社を経営する黄ファミリーの方ではない)。
大霹雳_百度百科
 百度の説明を読むと、「もともと霹靂布袋劇文化のない香港で、その漫画版を出すことは挑戦的試みだったが、コミカライズを担当した鄭問氏によって打破された」みたいなことが書いてあるようです(細かく解読はしていません)。

 日本では販売されていない大霹靂ですが、輸入販売している香港漫画店さんにて注文いたしました。
『大霹靂』カタログページ
 B5版フルカラー、30~40Pぐらいで一冊一話、日本の漫画とは異なるスタイルです。巻末には著者コメントや次回予告、コラム、他の漫画やおもちゃ(主に剣)の広告などがついています。少しですが木偶の写真や、キャラの家系図、人物相関図などもあるよ!

 物語の主役は傲笑紅塵。ストーリーは90年代の霹靂、シリーズ第18作『霹靂烽火錄』前後が元になっているのではないか……と思われます。元の劇集は古くて直接確認できないのですが、登場人物や大まかな粗筋からこの辺りではないか? と。
 そもそも主人公の傲笑紅塵が、烽火錄前シリーズの終盤が初登場だそうで。

■登場人物

傲笑紅塵(ごうしょうこうじん)

 1巻表紙も飾る主人公。作者コメントで「一番好きなキャラ」と挙げられている。
 霹靂本家でも有名な角色(キャラクター)の一人で、熱い正義感と潔癖さを持つ剣の達人。嘘偽りの多い世間に疲れ、早く隠居したいと思いながら、平和が乱れることを見過ごせず、結局戦いに出てしまう不器用な男。
 五話まで読んだ印象は、超弩級リアクション芸人である。何というか感情の起伏というものが、活火山と地割れで構成されているような激しさ。
 海鯨島での戦いの後、ある衝撃の事実を知った彼は1ページまるごと使ってびっくり顔をし、ボロボロ泣きながら大量に吐血し剣を振るって、その後も口から血を垂らしながら歩いて行き倒れるぐらいショックを受けていた。
 そりゃこんな騙されやすい上に、事実を知った時ここまで爆発するような人間に一般的な社会生活は無理そうだし、早く隠遁させてやったほうが良い。それでもしばしば江湖に飛び込み、また戦うのが傲笑紅塵なのであろう。

〝日才子〟清香白蓮・素還真(そかんしん)

 ご存知霹靂の主人公、大霹靂三巻の表紙も飾っている。
「私はあなたたちと知恵比べをしてみたいと思っていたのですが、そんな風に(弓を射掛けて)こられると、あなたたちを困らせるしかありませんね」
 と言って、魔魁軍の船団を沈めたりする。
 魔魁にあっけなく倒されたように見えるが……?

花爵百練生(かしゃく・ひゃくれんせい)

 派手な身なりをした謎の男。大金を払って丐幇(かいほう)の副寨主に収まった。その目的と素性ははたして……? うふふ、誰でしょうね。

剣君十二恨(けんくんじゅうにこん)

 儒教傳人。一つ一つ名前がついている十二本の剣を操る若き剣客。俺は天下無敵だ! と言ってはばからないうぬぼれ屋だが、それもまた若さか。
 なのだが、三傅人のうち一番普通のあんちゃんっぽさが際立つ人物なので、彼がいると安心する。よく笑う彼がいないと、残りが一日三千斬りをしていた危ない兄ちゃんと、大人しそうだが剣の道に間違いなく狂っている男しかいない。助けてくれ。
 霹靂本家では弟を葉小釵に殺されていたり、魔魁がその弟を利用して復活していたりととんでもない因縁を持っているのだが、読んだ印象では『大霹靂』内では触れられていないように見える。全部中文を解読したわけではないので、触れられていたらすいません。
 儒教極招・君子風に開眼する。

〝刀狂劍痴〟葉小釵(ようしょうさ)

 仏教傳人。2巻の表紙担当、霹靂三台柱の一人でもある(他二人が素還真と一頁書)。剣の道を求めて舌を切ったため、しゃべることが出来ない。本作では舌を切るまでのエピソードも読める。
 見た目は若いが結構な年齢で(※武林ではよくあること)孫の金小開があちこちでやらかしちゃっているあたり、苦労が多そう。
 仏教極招・般若識に開眼する。

亂世狂刀(らんせいきょうとう)

 道教傳人。古くからいる有名角色の一人で、なんと彼の名前が冠されたシリーズも存在する。非常に愛妻家なのだが、その妻が早くに亡くなったことが災いして、危険な人斬りと化した。更生した現在も、妻の名前をよく呼んでいるらしい。
 剣君十二恨に「お前と組むのは俺の恥だ!」と言っていたが、剣君からも「そのふわふわした剣法が亂世狂刀か?」と言い返されたりしている。仲良くしてくれ。

一頁書(いっこうしょ)

 中元正道第一高手。見た目はいわゆるお釈迦様スタイル。一話の最後で派手に降臨し、その後も魔魁を殴り倒して亂世狂刀からも「さすが!」と言われる。梵天は伊達じゃねえぜ!
 霹靂三台柱の一人とも言われる超大物角色なのだが、本作の出番は少ない。
 というのも、最初こそ大活躍の一頁書前輩だが、海鯨島の戦いの直後、彼はかつての封印が解けて「創世狂人(創世者)」と化してしまい、以後そのまんまでストーリーが進むのである。霹靂本家では、シリーズが進むと戻ったようですが。

魔魁(まかい)

 本作のヴィラン。三百年ほど前に三教傳人から必殺・三教極招を受けて倒されたが、年月を経て復活した魔界の権力者である。
 本家では木偶も人間の姿をしていたのだが、大霹靂世界ではででーんと身長3~5mぐらいある完全な怪物と化している。出てくる時はクジラをいきなり爆発四散とかさせた。見た目は怖いし戦闘力もヤバイが、孫の非凡公子のことは可愛い。

非凡公子(ひぼんこうし)

 魔魁の孫。見た目は普通の人間である。東瀛(とうえい)=日本で育ち、魔域と三教の血統を併せ持つミラクルサラブレッド。日本側と決別して魔魁につき、海鯨島の周辺で余計な邪魔が入らないよう守っていた。
 次から次へと厄介な敵に襲われた挙げ句、自分も毒を受けて重傷を負う。

蟻天海殤君(ぎてん・かいしょうくん)

 傲笑紅塵の義弟、全体的に青い。愁月仙子の兄で、他者のために体を張ることを厭わない義侠。声で攻撃する擎羊嘯天という技を持つ。
 白雲驕霜に深手を負わされて以後は、ほとんど人(主に傲笑紅塵)に抱きかかえられているので、「傷つき弱った顔の良い男が顔の良い男に抱きかかえられる」というシチュエーションがまとまった量で堪能できる。

〝星才子〟無忌天子(むきてんし)

 素還真・談無慾の弟弟子。死を偽装して江湖から引退していたが、この戦いのために戻ってきた。人畜無害そうなツラをしているがクソ野郎。
 魔魁軍相手に善戦したり、海の上を走ったりとひとかどの実力があるわりに、他のキャラと違って特徴的な戦闘スタイルを見せていない。なぜだ。

愁月仙子(しゅうげつせんし)

 方界六絃のひとり。海殤君の妹であり、傲笑紅塵の想い人。しかし彼女自身はとっくに無忌天子とデキていたのであった。死を偽装して傲笑紅塵から離れていたところ、海鯨島での戦いを終えた彼と出くわすハメになる。

黑白郎君(こくはくろうくん)

 本名は南宮恨。名前通り顔面が左右で白色と黒色に分かれており、目がギョロッとしてるのもあって怖い。
 骸骨の馬がひく幽霊馬車という乗り物を所持しており、青陽子、海殤君、無忌天子を乗せて海鯨島の援軍として駆けつけた。
 実は素還真や秦假仙と同じく、霹靂シリーズ誕生前の70年代からいる古参角色。現在は天地社さんに版権が移り、金光布袋戲で活躍している。脳の報酬回路がぶっ壊れたバトルフリークキャラで営業しているので、興味のある方は観て欲しい。私はここから、金光さんを知りました。そのへんもまたnoteに書きたいと思います。

青陽子(せいようし)

 海殤君とは逆に、全体的に赤くて琴を携えた男。この琴が彼の主な武器である。最近の霹靂本家シリーズでは、すっかり主要人物として活躍の古参角色。が、大霹靂五話現在では一言の台詞もない。魔琴技「道威無極」を放つコマはカッコいいぞ。
 仏教、儒教と協力し、武林の宗教界の再編を図る道教の人。三教が力を合わせる「合修會」の創設者であり、素還真の義弟である。

一線生(いっせんせい)

 またの名を屈世途。素還真の友人であり、天下の工作名人である。スーパーマシン・幽霊馬車を作ったのもこの人だ。
 今回は素還真の息子・素續縁とともに、島の地下で爆弾をいじっている。

白雲驕霜(はくうんきょうそう)

 暗殺組織・易水楼の頭。顔についている三角形のマークがポイント。もとは方界六絃のひとりで、色々あって傲笑紅塵を激怒させた。
 火炎系の技を持つ傲笑紅塵に対し、氷結系の技を操る。長く鋭い氷の爪を武器にしたり、水しぶきを氷のイナゴに変えたりと中々多芸。
 更に作中では美女に変装し「白雲驕娘」を名乗る。女装と書いたが、完全に体格が変わっているのでほとんど性転換です。

第一話あらすじ

 今から三百年前~というプロローグから開始。魔魁を打倒出来る新たな三傳人が順番に紹介されていきます。
 一番手は儒教傳人・剣君十二恨。
 名前を表す十二本の剣を使って魔魁軍を斬っていく、スタンダードな登場を決める。竹林をドーム状に切り払うページが格好良い。
 二番手は仏教傳人・葉小釵。
「師匠、剣聖ってなんですか?」と三回ぐらいしつこく聞いていた小釵に、お師匠はついに「剣聖ってのは〝隻手之聲〟を悟った人のことだよ! 悟れ葉小釵、口数が多いのは益がない」と匙を投げる。どうにも思いつめる性格らしい小釵は、師の言葉を考え続け一晩で髪が白くなってしまった。その挙げ句取った行動が、自らの舌を切断!
 こうして声を失った葉小釵は悟りを開いたのか、恐るべき剣の達人となったのであった……。
 三番手は道教傳人・亂世狂刀。
 15年ばかり投獄されていた狂刀は、妻・慕容嬋が死んだことを悲しむあまり、「一日三千人斬り」の凶行に及んでいた。ここの狂刀がずっとブチ切れ顔をしており、どっからどうみても危険生物である。
 あちこちで武術の達人たちを殺した亂世狂刀の前に、霊体じみたおじいさんによって現れ、彼は道教傳人に選ばれた。とりあえず気落ちは落ち着いたのか、人斬りはやめてくれたようである……。
 かくて三人は魔魁を倒せる奥義・三教極招の修行を行い、海鯨島を舞台に魔魁へ宣戦布告をした! 魔魁本人は新三傳人に「三教極招を使ってみろ! 雪辱してやる!」とのたまうのだが、三人は出そうとはしない。
 その時、空から光が差し込み、金の鳥に乗った一頁書が降臨したのである!

第二話あらすじ

 今回は冒頭にキャラクター紹介が入る。本編でもたまにあるが、ここの墨絵風のタッチがまた格好良い。
 さて、三傳人の救援にやってきた一頁書は困っていた。こいつら、全然チームとしては気持ちも力もバラバラなのである!
 剣君十二恨は「俺は天下無敵だ!」と驕っているし、葉小釵は一番強いが、それだけに協力してバランスを取るのが難しい。更に亂世狂刀は、葉小釵の孫と因縁があるらしく、小釵と共同作業が出来るか不安がある。
 三教極招は心を一つに合わせて放たないと、自分に返ってくる危険な技なのだ……。「なぜこんな奴らを組ませた」という気持ちでいっぱいになってくるが、三教傳人はどうも「選ばれし運命の戦士」であって任命に融通が利かない雰囲気。今いる奴らでどうにかするしかないのであった。

魔魁「正道一脈,青黄不接! 你們既不出三教極招,便到黄泉向歴代教主好好討教吧!」
訳:「正道一脈、まったくもって未熟! 貴様らは三教極招を使えんのか! あの世で歴代教主たちに、よくよく教えを請うてこい!」

 怒った魔魁はだんご3兄弟よろしく、三傳人たちの頭をまとめて掴んで押しつぶそうとした。このごっつんこはちょっと可愛いが、大ピンチだ。
 一頁書が援軍を待ちかねている一方そのころ、対岸では「誰も海鯨島に近づけるなよ!」と、魔魁軍を率いた非凡公子が陣を張っていた。
 そこへ「別人的失敗~(他人の失敗は~)」の不吉な声。続いて幽霊馬車と共にフレームインする「就是吾的快樂!(これ我が喜びぃ!)」
 こんなイカれた台詞で殴りかかってくるのは武林広しと言えどただ一人、黑白郎君である! 更に青陽子、海殤君、無忌天子の四人。一頁書が待ちかねた援軍の到着だ。それぞれの持ち技で包囲網を突破していく。
非凡公子「しかし何かおかしい……そうか! これは陽動だ!」
 では本命はと言えば、それは清香白蓮・素還真だ。彼は魔魁に有効だという「黄帝軒轅が打った罕世神劍(かんせいしんけん)」を持ってきていた。これを取ってくるのに、黑白郎君たちはとても苦労したらしい。
 海殤君と無忌天子はしんがりとして陸地に残り、青陽子と黑白郎君は島を目指す。誰も突っ込んでいないが、幽霊馬車は海も渡れちゃうらしい。あまりにも便利。
 島には援軍が到着したが、魔魁軍と戦う海殤君を何者かが襲う! 魔魁軍の中に潜んでいた覆面の男・白雲驕霜が、海殤君が所持する「黒榜」を狙っての襲撃であった。だがその時、4ページたっぷりかけて海を割って、傲笑紅塵が現れた!

第三話あらすじ

 今回は傲笑紅塵と白雲驕霜の因縁から。冒頭、五話までで特に出番のない談無慾先生がちらっと出てくるが、この衣装はなんだろうか……。


 今から二十年前――無忌天子は天外方界と易水楼の二組織を創立。天外方界にはチーム・方界六弦、傲笑紅塵・白雲驕霜・血雨風生・愁月仙子とあと二人がいた。このうち紅一点の愁月仙子に同時に惚れたのが、傲笑紅塵と血雨風生である。
 血雨は恋敵の傲笑紅塵を殺そうとしたが、彼をかばう形で愁月が死亡。傲笑紅塵は血雨を殺害した後、悲しみにくれて砂漠に隠遁してしまった。
 同じ頃、白雲驕霜は無忌天子を殺害。白雲驕霜は天外方界と易水楼を掌中に収め、暗殺組織に作り変えたのであった。
 しかし! 実は早くから愁月仙子と無忌天子は恋仲になっており、死を偽装してよろしくしていたのである。やってることはやってる男だ、無忌天子。
 そして最近になって魔魁が復活し、これは見過ごせないと傲笑紅塵も無忌天子も江湖に戻ることを決意。こりゃヤバイ、と困ったのは白雲驕霜だ。彼はひとまず、易水楼の殺し屋・袁冬曲を傲笑紅塵に送りつけた
 なんとこれが愁月そっくりで、傲笑紅塵も思わずときめく。それは冬曲側も同じだったらしく、まあ色々あって亡くなってしまった。
 こうした一連のことから白雲驕霜に怒っていた傲笑紅塵だが、今また義弟・海殤君を刺されもう怒髪天待ったなしなのだ。

傲笑紅塵「今日我決不容你(今日という今日は決して貴様を許さんッ)!」

 ああ、白雲驕霜、絶対死ぬな……そう思うぐらいの怒気が紙面から溢れていた。
 これに黙ってられないのが非凡公子。彼だって、傲笑紅塵みたいな強いやつといちいち事を構えたくはないのだ。援軍の連中は一方的に殴りかかってきただけだし。

非凡公子(傲笑紅塵對上白雲驕霜,他便無暇對不魔界!)「魔界無意與閣下為敵,你若要對付他,我等兩不相幇」
訳(傲笑紅塵と白雲驕霜が戦えば、傲笑紅塵は魔界を相手にする暇がない)「閣下、我ら魔界はあなたの敵ではありません。白雲驕霜を相手するなら、我等は攻撃をやめて待ちましょう」

 非凡公子の素早い状況判断により、戦場は静まり返る。傷ついた海殤君を抱えていた傲笑紅塵は、無忌天子に気づくと爽やか~で穏やか~な顔で挨拶し、「ちょっと義弟を見ててください」と海殤君を預け。
 一コマの間。

傲笑紅塵「惡賊! 領死!(死ぬがよい、悪党!)」

 さあ始まりました、傲笑紅塵vs白雲驕霜! ここの1ページ、静から動へ一気にギアチェンジするテンポが妙に完成されたコントみたいな絵面になっていて笑えます。キレたチワワのような怒り顔が中々見もので、とても好きなシーン。
 それはともかく、いやあ二人は強い強い。氷の技を使う白雲驕霜に対し、傲笑紅塵は剣を踏んで飛ぶ高速移動に、足元の岩場を無数の剣刃に変える技、火炎を出す技など短い間に豪華なエフェクトが飛び交うぞ。
 一方海鯨島では、いよいよ魔魁討伐のクライマックスを迎えてた。
 黑白郎君と青陽子は傷ついて休んでおり、一頁書前輩は、三傳人に短時間で功を伝えるのに集中していて動けない……。一人戦っていた素還真も魔魁に倒され、海に投げ込まれてしまった。
 万事休すか! と思ったその時、高速修行が完了した三傳人が再び現れ、ついに三教極招を放つ! 一方その頃、非凡公子ら魔魁軍は、突如現れた日本軍に襲撃を受けるのであった……。

第四話あらすじ

 さて海鯨島へ向かう傲笑紅塵に、海殤君は「黒榜」のことを語る。これこそ白雲驕霜が狙っていたもので、海殤君を刺した理由なのだが、これは非凡公子の背景ともあれこれ関係あるもよう。えーと、魔魁之女(という名前の魔魁の娘)は幼い非凡公子を連れて日本へ逃げた後、伊賀忍者の頭目・七色龍に嫁いだそうな。
 そして中原に侵攻するための下準備を色々していたのだが、「黒榜」とは、なんと中原に潜む日本側スパイのリストなのだった。
 海殤君は傲笑紅塵に、日本の大将軍の企みを阻止すること、自分が死んだら聖地・汗青編に葬ってくれるよう頼むのであった。
 さて、日本軍に襲われた非凡公子は重傷を負って海に放り出されてしまった。孫の危機をテレパシー的なもので察した魔魁は「こいつらとっとと片付けて、非凡のところへ行かねば!」と決意。素還真は始末した、次は貴様ら援軍じゃーい!
 戦いの中で海殤君は命を賭した一撃を放ち、斃れる。それを受けて傲笑紅塵の怒りと悲しみが炸裂! 今が好機と見た無忌天子は、地下にいる一線生に合図を出し、海鯨島を爆弾でふっとばした! 見開きの爆轟がすさまじい。
 海殤君は義兄の腕に抱かれて死に、傲笑紅塵は「黒榜許すまじ!」と決意を固める。一方そのころ、生きていた白雲驕霜は女に化け、傲笑紅塵に対する新たな嫌がらせを思いつくのであった。魔魁? お察しください。
 何もかも吹き飛ばした爆発は、海鯨島から脱出した一頁書前輩にもダメージを与えていた。座禅を組んで傷を癒そうとした彼の頭から、埋め込まれていた聖なる宝珠が落ちる。そのまま螺髪がほどけ、一頁書は「創世狂人」と化してしまった!

第五話あらすじ

 海鯨島の戦いの後、義弟・海殤君の遺灰を携えた傲笑紅塵は、遺言どおり汗青編を目指して旅をしていた。そんな時、彼は白雲驕娘の差し金で愁月仙子と再会する。
 このへんの人間関係がまたややこしいのだが、愁月仙子はかつて権門宗矩(日本の偉い人。非凡公子を襲ったやつである)との間に「朝子」という娘をもうけていた。その後愁月と恋仲になったのが、先の無忌天子である。
 この朝子のことが面白くない無忌天子は、幼い彼女をさらって易水楼に連れて行ってしまった。これが後の袁冬曲である。何が「天子」だバーロー!
 娘を失った悲しみからか、愁月は天外方界へ加入。そこで傲笑紅塵に出会ったというわけ。そして現在、娘と瓜二つの「假朝子」という女性と暮らしているのだが、これがなんと白雲驕娘が差し向けた易水楼の殺し屋で、本来は愁月を通して無忌天子の動向を探っているスパイだったのだ。ひどい話もあったもんだ。
 そして假朝子は白雲驕娘の指示を受け、傲笑紅塵と愁月を対面させた! 死んだと思っていた彼女が実は生きていて、ついでに本当はとっくに無忌天子とデキていたとか大ショックですね。一緒に琴の連弾したじゃない!
 この時の傲笑紅塵の驚き方がまたすごい。人物紹介でも書いたが、やはり漫画で読んで欲しいところ。ちなみに武侠物とかの理屈では、気功を扱う人間は精神的なショックが大きいと、内部の気功が暴走して内臓などにダメージを受けることがあるので、傲笑紅塵が血を吐いたのも正確にはそういうことだと思われます。
 さて、ところ変わって丐幇(かいほう。武侠物によく出てくる物乞い同士の互助組織。強力な情報ネットワークや独自の武術など、侮れない力を持っている)のお食事シーン。丐幇の寨主(ボス)・六聽天丐(ろくちょうてんかい)が昔話をしています。この六聽天丐は左右それぞれ三つの耳たぶが重なっている、なんと六耳男!
 彼は全員が数字の名前を持つ「八大奇人」の一人で、素還真たちの師匠・八趾麒麟も仲間でした。彼ら八人が総出でかかり、何とか抑え込んだのがかつての創世狂人。はい、前回一頁書先輩が変化したあいつですね。
 そんな話をしていた時に、次々とお客がやってきます。
 花爵百錬生、そして三口組(秦假仙・業途靈・蔭屍人)が担架に乗せて運んできた傲笑紅塵! 百錬生は傲笑紅塵を治療するが、只者ならぬ技を持ち、わざわざ大金を払って丐幇の副寨主に収まる彼に、六聽天丐は疑惑を隠せません。はたしてその目的と正体は?
 一方そのころ、「自らの理で世を救う」ため動き出した創世狂人は、早速大きな山寺と石仏を破壊していくのでした……。次回へ続く!

■最後に

 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。
 人形劇の世界から、漫画の世界に飛び込んだ霹靂角色たち。骨があって肉がある、その確かな存在感と躍動感は、普段の霹靂では味わえない感動と体験だと思います。布袋劇ファンとしては、可動部が限られた木偶たちの顔から様々な表情を見出しますが、漫画という表現に乗せられた喜怒哀楽もまた見応えたっぷり! ケレン味が利いたアクションの数々、殺到する剣刃の嵐や渦巻く炎、逆巻く氷、そんな特殊効果の表現も迫力です。
 激しい戦闘シーンは眺めているだけでも楽しいのですが、文章を解読していくと、複雑に絡み合った陰謀や人間関係が浮かび上がってきて、かなり読み応えがあります、大霹靂。一粒で二度三度美味しい!
 ただその分、文章を解読するだけではなく、百度などで各キャラクターの経歴などと照らし合わせていかないとうまく理解できない部分もあるので、正直大変ではありますね。でもこの絵だけでももっと多くの人に見てもらいたいので、この記事の最初の方に貼ったリンクなどから、ご興味お有りの方はどうぞ。カタログになかったら、多分在庫切れかと思いますが……在庫復活するといいな。
 この調子で20巻まで買っていく予定ですので、また続きの記事でお会いしましょう!

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