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20240704 第三の男

何を書くか考えてたら、最近観た映画の話をしようと思い、自分のletterboxdでもレビューをしたのだがここでもシャアしようと思う。ネタバレは”あまり”無い。

タイトルは第三の男。先月初めて出会った映画で、面白かったので一晩に2回続けて観てしまった。第二次世界大戦後のウィーンを舞台にした刑事物で、当時ベルリンと同じくウィーンという都市は、戦後アメリカ、ソ連、フランス、そしてイギリス領と4つの占領地区に分割されていた。この時代背景が映画に出てくるキャラクターの関係性に少しだけ影響してくるのだが、もっと一つの都市が政治や思想の違う4カ国に分断されているという状況をストーリーに組み込めばもっと深く楽しめたと思うのと、細かな設定が理解しにくい部分が所々ある。でも全体的にみたら、最初から最後までテンポよく、シンプルに構成されてるからあまり気にならないし、各シーン小さなディテールまで美しく撮られてて作品としてうまく完成されてる。1949年に公開された作品なのに、古い感じがしなく、逆にモダンな作りで飽きずに最後まで見れた。映画だけでなく音楽だったりもそうだけど、昔の作品はCGI加工だったり、後から調整ができないからすごくrawさ(日本語でなんていうか分からない)があってテクノロジーに頼れない分撮り方だったりがクリエイティブで、今見るとすごく新鮮な部分がすごく多くて、特にこの映画からはインスパイアされた。

主な筋書きとしては、主人公のアメリカ人サスペンス作家のハリーが、ウィーンに子供の頃の知り合いを訪ねに来るところから始まり、実際に彼の家へ訪れてみると、その友人は、最近死んだと隣人に伝えられる。そしてその彼の死を目撃した隣人から、他に現場に居合わせた2人がいたと情報が手に入ったのだが、さらに3人目がいたと聞く、それがタイトルにもあるThe third manだ。ここでサスペンス作家が事件を追うと聞くとホームズのような頭のキレる人が、友人の死の裏に隠された真相を暴いていくというベーシックなストーリーになりそうだが、この映画では違う。ハリーは歴史があり文化が豊かなヨーロッパの人たちの視点から見て、当時のステレオティピカルな教養のないアメリカ人。どちらかといえば、彼は体育会系タイプかつ無知でドジなキャラだが、でも馬鹿ってほどでもなく、彼にはやる気がある。この部分の主人公のキャラ設定はすごく絶妙で、彼のパッションでしつこく真実へ向かう物語になっている。

まず俳優の演技が素晴らしい。ヒロインのアンナと主人公のハリーは今の映画と比べたら、分かりにくいキャラ像になっているが、2人の不器用さだったり周りに踊らせれてる感を俳優がローキーに表現できてて、ぱっと見わからないけど、2度目に観た時に2人の演技の上手さに驚いた。隣人のおじさんの無知だが何か怪しい演技も面白いし、ハリーが作家と聞き彼に、レクチャーを頼みにくるおじさんの演技も味が出ててクセになる感じが素晴らしい。あと語らなきゃいけないのは、最後の10分くらいしか登場しないオーソンウェルズが映画の全てを持っていったと言っても過言ではないくらい、彼が登場してから映画にさらにダイナミックさが加わる。この映画のポスターだったり看板を彼が飾ってるのは、ほんの少ししか出てこないの登場なのに彼の映画になってしまった凄さを物語っている。2人の観覧車のシーン、会話を交わしつつ、下を見下ろす。観覧車というすごくスローな乗り物が、彼らの会話でよりテンポが保たれる。そして、実際にクライマックスのウィーンの下水道を使ったチェイスシーンは、視聴者も一緒に追われてる感が出て、すごく迫力がある。

白黒のハイコントラストで一点透視を多く利用しているのでどのシーンも立体的で、自分も当時のウィーンにいるかのように感じさせられる。。ダッチアングル(傾けて撮る方法)を頻繁に使っている理由は不明。主人公の焦りとか急に動いての重心の不安定さとか表現している?とも思ったけど、そこまで主人公の心理描写はないからあまりよくわからない。そしてこの作品は色々な様子が対照されている。光と影というテーマが映画のカメラワークからライティング、キャラクターまで一貫して表現されている。個人的に面白いと感じた部分は、ダークヒューモア的な感じでコントラストを見せている部分で、当時の街だったり建物をうまく使い、ウィーンのリッチでクラシカルな部分と敗戦国という暗くて貧しい側面をよく引き出していると感じた。後は、フィルムノアのダークでシリアス雰囲気に(俗に言うスポンジボブミュージック)有意義な音楽を流している部分の双対性が絵と音をどちらも印象づけてる。この作品で個人的に一番好きなところはウィーン中央墓地で始まり、同じ墓地で終わるという場面。一つのサイクルを終えて映画を綺麗に締めくくっているから観てる側も満足感で終われる。上の写真は実際に、自分がこの墓地を訪れた時に撮った写真で、ベートーヴェンだったりモーツァルト、シューベルトだったりの墓があり観光名所ともなっている。

ナラティブについてはもっと語ることあるけど、長く成りそうだからここまでにしておく。また観る機会があればもっと深掘りしてみよう。あと、この映画の監督のキャロルリードの他の作品チェックしてみたいのとオーソンウェルズは俳優だけでもなく、監督としても実力があったらしいので彼の出てる・ディレクトしてる映画も見てみようと思った。

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