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立脚点の相違(無料記事):PDLB

いつも感じているブランディング、トレンドセッティングの違和感を、まるでコントのように完璧に見せてくれた、3年前のこの対談。まずは読んでみて欲しい。(ネット記事を引用しているので、今回は無料です)

「新しい、オシャレ、流行」などを受け取る感性の立脚点が違うと、ここまで話が食い違うものかと愕然とするが、パブ的な役割のこの記事をボツにせずに載せたことは天晴れだと思う。このホテルには知人のディレクターも関わっているので書き方には気をつけるが。

近所なのでお茶や食事で「TRUNK(HOTEL)」にはよく行くが、泊まったことはまだない。

まず、自分がこの渋谷のホテルに出資するため、藤原ヒロシさんと同席してプレゼンテーションを受けていると仮定して欲しい。

田中さんというクリエイティブディレクターは「東日本大震災、リーマンショックで、社会の流れ、人々が求める価値観が変わった」というところから話し始める。

多分、藤原ヒロシさんが「そうですね」と言ってくれると思ったはずだ。ほとんどのこの手のプレゼンテーションを受ける人はそこにコンセンサスがあるだろうから。しかし藤原さんは頷かない。いきなりの衝突だ。

どんなプレゼンテーションでも決まり文句のようにこういうことを言う人がいる。震災もリーマンショックも現実に起きたことではあるが、それがどんなものにも影響しリンクしている、とまとめて考えるのは早計だろう。単なる枕詞のように浅はかな言葉に聞こえてしまう危険すらある。

次に、ホテルは「ラグジュアリー」「格式の高さ」から、ここ15年でイメージが変わりましたよね、と、まるで自分が発見した事実のように現状を分析しているが、これはあまりにも大ざっぱだ。「藤原さんは海外を飛び回っているのでご存じだと思うが」と言って同意を求めているが、藤原さんは冷たく「あまり大きな変化を感じたことありませんね」と突き放す。

ラグジュアリーな存在にはラグジュアリーであり続ける価値があり、格式の高さを求める人は今でも同じようにそれを求め、提供されている。藤原さんは、おそらくこのあたりで彼女の立脚点を見抜いていると感じる。

センスのいい人なら、ここで藤原さんの考えを引き出しながらアジャストし、自分の考えに誘導することも十分に可能だと思うのだが、わざとなのか純粋なのか、さらに言ってはいけない暴力的な一言を放ってしまう。

「ホテルのトレンドを変えたのは、ポートランドのエースホテルだといわれていますよね」

藤原さんの脱力感はここで限界に達しただろうと推測できる。簡単に言えば、田中さんは外国の流行やトレンドを学び、ポートランド、エースホテル、というワードを奉っているわけだ。その「地方自治体のトレンド視察」のような感性を、一番見せてはいけない人にぶつけてしまったことになる。

この記事では藤原さんを「稀代のトレンドセッター」と紹介しているが、SETTERというのは作って生み出す人のことを言う。ほぼ一年中世界の出来事を見つめ、消去法のように「まだない流行」を創作する人と、できあがって流行っているという情報を聞いてトレンドを視察して来る人、WATCHERとの立場の違いが明確になってしまった。

ここまで読んでいて、自分がその場にいたらどんな寒々しい気持ちになっただろうと恐ろしくなった。これ以上は説明しないので、メンバーの皆さんはそれぞれ考えて欲しい。

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