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嘘つき村で死んだ男:Anizine

ある国に「正直村」と「嘘つき村」というのがあった。私は正直村に住む友人女性の結婚式に出るために来た。彼女が昔話していた、憧れのジューン・ブライドなのだ。しばらく進むと道が二叉に分かれていた。どちらに行けば正直村なのかがわからない。道には村の入口の門番のような男がひとりずつ立っていたから、ふたつの村の関所のような場所なのかもしれない。私は正直村に行く道を聞きたいが立て札があって、「ひとつだけ質問ができる」と書かれていた。

どちらが正直村の門番なのか。もし正直村の男に、「この先が正直村ですか」と聞けば、「そうです」と答えるだろう。しかしその男が嘘つき村の門番であっても「そうです」と答えるから判別がつかないのだ。

私は困ってしまった。嘘つき村は別名「人食い村」とも呼ばれていて、旅行者を殺して食べていると聞いたことがある。間違えたら命に関わる。私は頭をフル回転させて質問を考えた。思いついた。何でもいいから自分が答えを知っている質問をすればいいのだ。そうすれば嘘をついているかどうかは容易に判断がつく。

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足元に落ちるクッキリとした影、強い日射し。私は汗を拭っている右側の男に聞いてみた。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。