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タクヤの同窓会:博士の普通の愛情

銀座の大きな中華料理店で50代くらいの人々が同窓会をしていた。広い店内の角の方に15人くらいが集まっていたので、近い席の私には彼らの話が筒抜けだった。そこで語られることは、どこにでもあるような近況報告、病気の話、亡くなった担任や級友の話などと続いていく。

おそらく都内の高校の同窓会だったのだろうが、その中に当時クラスの中心人物だったと思われる「タクヤ」という男性がいた。最初はそんな彼の輝かしい時代の話をしていた。女子からの人気もあったようで数人に取り囲まれていたが、周囲の男性はその様子を冷ややかに眺めていた。それほど悪質ではなかったものの、彼はクラスメイトに少しばかり「いじめ」をしていたようなのだ。その時にいじめられていたひとりがこう言った。

「見る影もないね、タクヤ」

全員がその男性の方を向く。彼は高級そうな仕立てのスーツを着ていて、多分今はそれなりの立場になっているのだろう。反対にタクヤはその言葉を聞いてから観察してみると確かにみすぼらしい格好に見えた。

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恋愛に関する、ごく普通の読み物です。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。