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無音部分のカット:Anizine

たとえば友人とカフェで1時間話したとして、何かとてもいいことを語り合ったなあと思っても文字に書き起こしたらビックリするほど無意味なことを言っているものです。それが「会話のグルーヴ」というものだからいいんですけど、冷静に振り返ると意味のある言葉の含有量はとても小さい。

朗読を聞くと、小説という書き言葉を声に出しているのでむしろ情報量が多すぎると感じることがあります。丁寧に文章に仕上げたものを日常的な会話と同じように耳で聴くと、なかなか濃いわけです。YouTubeで始まった、会話の無音の部分をカットしてしまう方法はとても興味深く、とにかくみんな待たされるのが嫌いなんだなと思います。でも何かを言われて返事をするまでの一瞬の沈黙に大きなヒントがあった経験は誰にでもあるはずで、そこをカットしてしまうとロジカルな情報しか残りません。

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映画、演劇、音楽などは作者が観客に対して時間の流れをコントロールするジャンルですから、倍速で再生すると内容は伝わりますが感情の情報は抜け落ちてしまうかもしれません。YouTubeでの無音部分のカットは他にも大きな理由があります。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。