見出し画像

カツカレーを発明しました。

彼は身長が177cmだ。彼はイタリアンが好きだ。彼は長男だ。

これだけの情報で、彼が喜ぶプレゼントを選ぶことは不可能だ。ITALIAと書かれたXLのTシャツを渡しても、たぶん弟にあげてしまうだろう。

「情報の断片を手に入れたら、それが星座の輪郭を描けるようになるまで我慢しないと、結論が浅はかになる」と、『ロバート・ツルッパゲとの対話』に書いた。外国人が浅草寺とスカイツリーと竹下通りという3点を知っていても、東京という星座を描くことは不可能だ。

断片的で誰でも手に入れられる情報に触れたら、過去に集めた知識や体験のフォルダに整理して入れておく。一度か二度見たモノからそんなに簡単に仮説や結論なんて出てこないし、それくらいなら自分より知識のある人が考えついているはずだ。と謙虚になる必要がある。

特許ビジネスでよく言われるのが、「前後どちらからでもはけるスリッパ」だ。反対向きになったスリッパをひっくり返すのが面倒だよな、そうか、どちらからでもはけるようにすればいいのだ、と思いつく。そして特許の申請に行くんだけど、そのアイデアはすでに何万回も申請を却下されていることを知らされる。

「あなたが考えつく程度のことは、もっと優秀な誰かがすでに考えている」ということくらい、なぜわからないんだろうか。

画像1

なぜ、自分だけが世界を発見していると思えるのだろうか。それは自分が持っている薄い辞書に載っていない言葉は自分が発明したと思ってしまう現象で、もっと厚い辞書になら数十年前から載っている。発見より先に手に入れるべきなのは、買おうと努力さえすれば買うことができる、「分厚い辞書」だ。

ある若い人が、「新しい概念を見つけた」とでもいうように自説を書いていた。それが「どちらからでもはけるスリッパ」だと本人は知らない。その考えが書かれた本が数十年前にベストセラーになったことくらい、ググってみればすぐにわかるのだ。

昔流行った事実を知らないのは、まだ生まれていなかった若い人が悪いんじゃないし、知識がないことが罪でもない。ただ、田中泰延さんが言うように、「ほとんどのことは、調べることで解決する」のだ。

カツにカレーをかけた「カツカレー」というのを発明しました、と高らかに宣言する人には、ただ優しい目で「もうあるよ」と答えるしかない。

定期購読マガジン「Anizine」
https://note.mu/aniwatanabe/m/m27b0f7a7a5cd
定期購読マガジン「PDLB」
https://note.mu/aniwatanabe/m/m8c4b4a84e18f
定期購読マガジン「写真の部屋」
https://note.mu/aniwatanabe/m/mafe39aeac0ea
定期購読マガジン「博士の普通の愛情」
https://note.mu/aniwatanabe/m/m01e843b3acf9



多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。