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接客業のルーズさ:Anizine(無料記事)

接客業の種類は様々ですが、どれにも共通して思うことがあります。それは「顧客の個人情報の扱い」についてです。人によってその定義やデリカシーは違うでしょうが、いくつかの気になった実例をあげてみます。

昔からよく知られていることですが、老舗の料亭は客の情報を一切口外しないと言います。その店と客との信頼関係から生まれる安心感も料金に含まれているのかもしれません。最近の傾向として、芸能人の誰が来店したとかいう情報を平然とソーシャルメディアに書いてしまう店員がいます。さらに客が話していた内容を外部に向けて書くような人さえいます。いいか悪いかなどという以前に接客業失格であり、きわめて品のない行為です。学生のアルバイト店員などはサービス業に従事している自覚がないことが多いので仕方ありませんが、それは見つけたら上司がたしなめるべきです。

あるレストランに行ったとき、店の外に数人が並んでいました。待つのはイヤだなと思ったのですが、気づかないうちに一緒にいた友人が店員と話しています。「入れるようになったら電話をするので電話番号を書いてください」と言われたので書いたそうです。書かれたメモはその後どうなるのでしょうか。これだけ個人情報の重要さが言われているのに客のプライバシーを軽く扱いすぎです。

人を見たら泥棒と思え、と疑うような真似はしたくないのですが、あまりにもずさんなオペレーションが見えてしまうと不安になります。もし悪意を持った店員が客の連絡先を入手すればストーカーになり得ますから、そんな部分を便宜や善意に委ねてしまってはいけないと思います。日常的に客が大勢並ぶ店ならフードコートにあるような呼び出し用のブザーを用意すればいいだけですし、店側の都合でそういった企業努力を怠るのはいただけません。

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他にも気になったのがネットに載っているエステやヨガなどの写真です。ネットは不特定多数の目に触れるので、どんな悪意を持った人が見ているかわかりません。彼らはほんの少しの情報でも、それらを組み合わせることで決定的な事実に辿り着くことができます。知人の女性がInstagramを始めたとき、自宅の建物の写真、近くのスーパーマーケット、駅の名前などを載せていたので注意しました。たったそれだけでも住んでいる場所は特定されてしまいます。エステでの効果を示すために露出度の高い女性顧客の写真をアップしているサロンが数多くあります。効果の情報として必要なのかもしれませんが、その隣でオーナーが個人的な話として男女間の下品なジョークなどを書いていたら店に信用は生まれるでしょうか。

あまりにも店や企業が顧客に対してルーズになっていると言わざるを得ません。特にお酒を扱う場所、肉体的な接触がある業種などはトラブルが多く生まれるので、サービスを受ける側と提供する側のお互いが気をつけなければいけません。

タクシーに乗ったとき、「お客さん、あのマンションに芸能人が住んでいるんですよ」と言われることもあります。こういうことを言われたときはやや面倒ではあるんですが、「そういう客のプライバシーを言うのはよくないですよ」と言うことにしています。疲れますけど。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。