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家庭用のドライバー:Anizine

ラジオの番組で岡田准一さんに「生きるとは何ですか」と聞かれたとき、自分でも思ったことのない答えを言った。俺の口をついて出たのは「無駄にしないこと」だったんだけど、具体的にそう言葉にしたことはなかった。

ある人と話していて、その人は自分がやっていることを一生懸命話しているんだけどまったく耳に入ってこなかった。窓の外を見ながらなぜかと考えていたんだけど、その人は夢を語っているのにまるで「努力」していないからだとわかった。努力至上主義のようにストイックなことではなくて、やるべき何かの方向にカラダが向いていないように感じた。

そうか。俺はこういう人の話を聞くのが苦手なんだ、と思う。相手に対しての感情というより、「俺はそうなっていないか」という刃物を突きつけられる気がするからだ。誰でも自分がしていることにプライドを持っていて本人にとっては真面目に真剣にやっているんだろう。でも他人から見るとすぐに間違いは見えてしまう。

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あるときなんとなく思いついたビジュアルは、「家庭用のドライバーを手に、スペースシャトルを修理しようとしている人の姿」だった。

自分が手にしている知識や能力という武器が、先っちょが取り替えられるカラフルな家庭用ドライバーでしかないと知っていれば、間違ってもヒューストン宇宙センターなどに行こうとは思わないはず。一番恐ろしいのがこの盲目の滑稽さだ。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。