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写真の部屋

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。
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#ポートレート

人を閉じ込める2割:写真の部屋

『カメラは、撮る人を写しているんだ。』の中に、人を閉じ込める、という話を書きました。ポートレートを撮るとき、「会ったその人を自分の手の中にあるカメラに閉じ込めたいかどうか」の判断をする、という話です。 仕事で頼まれたのでないかぎり、その人を「撮るか撮らないか」から写真は始まっています。絵を描く人も小説を書く人も同じだと思いますが、一番大事なのはそれを自分が表現したいか、というところで、目の前にいる人を撮ることもできれば、無視して通り過ぎることもできます。ポートレートは、誰を

『カメラは、撮る人を写しているんだ。』

1月30日刊行の『カメラは、撮る人を写しているんだ。』の予約が始まりました。写真について足りない頭で考えていることのすべてを、この一冊にまとめました。カバーの小橋めぐみさんを始め、参加してくれた皆さんありがとうございます。

釣り針のポートレート:写真の部屋

あるテーマというか手法があって、それを本格的にまとめて撮り始めようと思っています。人と会えない状況が数年続いてトンザしていましたが、仕切り直して再開します。ジャンルを大きく分けるとポートレートと言えるのでしょうが、やや複雑な撮り方をするつもりです。仕事は決められた目的があるのでいいのですが、作品は「釣り針」のようなもので、魚をバラさずに釣り上げるには「返し」がついていないとダメなのです。一度刺さったら決して逃げられない、魚本人にとっては残虐極まりない、あの部分です。 ポート

ボケのコントロール:写真の部屋

私はスタジオで撮影するときもあまり絞りすぎないようにしています。これは好みなので正解はありません。スタジオのストロボは最小で使うことが多く、光の回り方も柔らかくしてガチガチには撮りません。 この写真は真ん中のボタンに目が行くように、後ろ側の肩のあたりにはフォーカスが来ていません。奥にいくにしたがってなだらかにアウトフォーカスさせています。 この図は頭のてっぺんから俯瞰したところだと思ってください。正面から見た人の顔は鼻の頭から耳のラインまでだいたい10数センチの奥行きで、

人が撮れない人へ:写真の部屋

レンズは撮影者の側を向いている、と言われることがあります。 誰かを撮っているつもりでも、そこには撮影者が「そうあって欲しいもの」として写るという意味です。若い女性モデルを撮れば、自分の恋人がしてくれたらうれしいような表情やポーズを要求しがちです。写真を見ればその人の「期待する女性像」が写ってしまいますから、ある意味でとても恥ずかしいことかもしれません。 写真を撮り始めてからずっと、気になった人にはどんな場所でも声をかけて撮影させてもらっています。誰かと会った記念の写真が残

イナバ物置と国際空港:写真の部屋

以前パリから東京に帰ってきて、仕事場のバックアップ用HDDに写真のデータをコピーしていた時のこと。日付を入れたフォルダがひとつ足りない。10日間くらいだったが、一日分のデータが丸ごとないのだ。これはやってはいけないことをしてしまったと思った。その時は仕事じゃなく遊びで行っていたから別に困るわけじゃないけど、撮ったモノがないというのはたまらん。 いつも、撮影したSDカードをそのまま残し、MacBookと外付けのSSDにコピーをしている。仕事の場合はSSDをもう1台増やしてクラ