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Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
¥500 / 月
運営しているクリエイター

2019年10月の記事一覧

PDLBとの住み分け:Anizine

PDLBの定期購読マガジンを作ったことで、Anizineから仕事の話は減っていくと思う。俺がやっている仕事はPDLBのメソッドに沿っているので、内容が重複してしまうからだ。 PDLBのマガジンはできるだけ具体的な事実を提示したいので、月額を5400円と高めに設定した。すでにメンバーが集まり始めているけど、有料であることの意味が感じてもらえるようになればうれしい。 noteの課金システムは「本当にそれを読みたいか」というフィルタリング機能として利用している。ただのテレビに文

みじかざわくん:Anizine

短沢くんという人がいた。仮名である。 彼は俺が働いていた会社にデザイナーとして入社してきたんだけど、何か、人間というメカニズムの接触が悪いみたいな面白さがあった。地方の出身なのでやや訛っているのだが、訛りよりも本人独特の木訥なしゃべり方に個性があった。 そのたどたどしい話し方で、ときどきエッジが立ったことを言うもんだから、こちらは激しく驚く。ある日、夜遅くまで残業をしているとラジオから大江千里さんの曲が流れてきたことがあった。短沢くんは、ラジオの目の前に立って聴いている。

99点は不合格ですよ:Anizine

ご存じのようにこの前の台風の影響で、俺の好きな北陸新幹線がまったく動いていない。早朝、東京駅から新幹線で京都へ。京都からサンダーバードで金沢へ。いつもの倍近い時間がかかる。 帰り道、金沢から東京へ戻るときに力尽きた。翌日の午前中に東京に戻ればいいので京都で泊まろうと思い、ネットでホテルを予約した。 ホテルにチェックインするとき、フロントでなんとなく変な感じがあった。予約していたのと違うことを言われたからだ。そこではあまり気にしていなかったんだけど、キーカードのケースに違う

高速料金:Anizine

Twitterで書いていた「ノーギャラで仕事を引き受ける無責任さ」についての話への反応が多かったけど、Twitterで書くのは限界があるからnoteにまとめておく。 実績がないうちであっても、ノーギャラで仕事をするのは得策ではないということを書いた。経験のためであるとか、何か次に繋がるとか思っても、ノーギャラで仕事を発注する人と関係を築いていても、のちのちいいことはない。 ビジネスというのは予算があるから、どんなに少なくても配分があるのが当然。たとえば純粋な制作費が100

岸くんのともだち:Anizine

岸くんは深夜の倉庫で荷物の仕分けアルバイトをしていた。荷物の量の割に人数が少なく、キツかった。ある日、同年代の石川くんという新人が配属された。 石川くんは、まったくと言っていいほどしゃべらない。仕事中も休憩中もずっと黙っている。作業上、必要なことを聞くと「はい」「いえ」と小さな声で返ってくるだけ。 ある日、仕事が早く終わった。いつもは19時から2時くらいなんだけど、その日は21時には終わった。どこかでご飯を食べて帰ろうと思って駅の方へ向かうと、前を石川くんが歩いているのに

冷蔵庫の中のペリエ:Anizine

都内のホテルの、いわゆるコストパフォーマンスには大きなばらつきがある。カリテとプリが合ってないところがたくさんある。 そう感じたところは自分が利用しなければいいので悪口を言う気はなく、いいところだけに興味を持つ。昨日泊まったパークタワーホテルは、田舎風なダサさで知られたプリンス系の中では一番趣味がいいと思っている。 以前は一階のロビーにコンビニがあってとても便利だったんだけど、久しぶりに来たらロビーが綺麗に改装されていた。コンビニはチョコレートやお菓子のショップになってい

価格と消費:Anizine

「比較的高額な商品を、特徴や価値を理解して買ってもらうためにはどうしたらいいのか」を、ここしばらくずっと考えている。 消費についての感覚が変化していく中で、格差社会を象徴するように、より二極化が進んでいる。多方面にヒヤリングを進めても、想像した仮説を上回る答えが誰からも返ってこない。 高額商品(数千万円の宝石など)を扱う人はほぼ現状維持だと言う。パリで聞いたのは、高額所得者が数十万円のアウターの下はユニクロを着たりしているという話で、これも感覚的に理解はしやすい。上から下

ツナガリック・アニマル:Anizine

パーティなどでそこにいる全員に名刺を配りまくっている若者がいたりするんだけど、俺はもらわないか、強引に渡されても捨てる。二度と会わないだろうから。 人とのつながり、というのはそんな方法でできるものじゃない。 有名な人、立場が上の人に取り入ろうとするなら、もうちょっと勉強した方がいいと思う。その行動は、皆が楽しんでいる場を「不潔なもの」にするんだよ。 誰かと友人です、と言ったときによく聞かれるのが、「どうやって知り合いになったんですか」という質問。そんなの知らないし憶えて

除雪車としてのアート。

「アートというモノ」にかかわる立場には2種類あって、単純に、作る側と見る側に分けられる。 皆が快く思わないモノを見せるとはけしからんとか、そこに市民の税金を投入するのはいかがなものか、なんてことが言われているけど、その暴力的な話は「経済と経済を扱う資格」のことを言っていて、アートの定義は誤解という着ぐるみ姿でしか登場してこない。 アートという名のタバスコを日常生活というマルゲリータに振りかけて、より美味しくなればそれでいいし、かける分量は人によって違っていていい。絶対にか