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博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
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2023年4月の記事一覧

言葉というツール:すべての定期購読マガジン

いま、写真の本を書いているとお伝えしました。書いているうちに「これは写真以外にも通じる大事な内容だ」と感じたことは一旦横に置いて、もうひとつの本に書くべきこととして貯めています。こちらの本は言うなれば『ロバート・ツルッパゲとの対話』の続編というか、そういうやつです。 自分は言葉を最上位に位置づけているので、くだらない内容なのに、まるで純文学でも書くようにチマチマとしつこく書き直している毎日です。なぜ言葉が大事かと言えば、言葉はツールですから、たとえば腕時計を修理するには専用

2023年に生まれて:博士の普通の愛情

彼女が出産のために産婦人科に入院していたのは2021。出産したのが2023。もちろん妊娠は一度、生まれた子供は一人。その話をするとみんな不思議な顔をするのだが、どうしてだろうね。

九州の人:博士の普通の愛情

しばらく前に乗ったタクシーでのできごとを思い出した。渋谷から高円寺まで行く数十分の間にドライバーから聞いた話だ。 「高円寺ですか、かしこまりました」 という短い言葉の中に、明らかな東北のアクセントがあった。僕はタクシードライバーと話すのが好きなので聞いてみた。 「運転手さん、東北ですか」 父親が福島なので絶対に外すはずがないと思っていたのだが、答えは違った。 「よく東北のお客さんにそう言われるんですが、福岡です」 おかしい。僕の東北弁センサーは鈍ったのだろうか。

記憶タクシー:博士の普通の愛情

カップルがタクシーに乗り込むと、ドライバーが後部座席に手を伸ばして、CMが流れるモニタのスイッチを切った。 「お客さん、これ嫌いですよね」 「え、どうしてわかるんですか」 「以前お乗せしたとき、すぐに切られていたのをおぼえていたので」 「毎日たくさんの人を乗せているのに、僕のことをおぼえているんですか」 「ケンジってあまり特徴がない平凡な顔なのに。すごいですね」 「どんな言い方だよ」 「まあ、記憶の病気というか、忘れられないんですよ」 ドライバーは過去に乗せた全員の記憶が