会話のタイミング:博士の普通の愛情
妻の盗癖に気づいたのは、結婚してから2年ほど経った頃だった。
彼女はごく平凡な僕に似合っていて、どこも変わったところがない人だった。知り合ったときに聞いた音楽の趣味とか、バスケ部に在籍してはいたが一度もレギュラーになったことはないこととか、大きくも小さくもない会社に就職して総務部で働き、30歳で僕と結婚したこと。テレビドラマの主人公の個性を強調するためだけに近くにいる役のように「普通」だった。
ある日曜日の午後、僕ら夫婦は近所のショッピングモールに行った。どうしようもない