マガジンのカバー画像

博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
¥500 / 月
運営しているクリエイター

2022年1月の記事一覧

短い地獄のお話:博士の普通の愛情

ある女性ミュージシャンがいる。 彼女は俗に言う「一般男性」と結婚している30歳。家庭的な面もあって主婦向けの雑誌などにもよく出ている。数日前に「お洒落な人のインテリア公開」という記事がネットに載っていた。茅ヶ崎の海が見える家。主婦なら誰もが憧れそうなシステムキッチンがある。50畳はあろうかという広々としたリビングにはモロッコ風の家具が並び、モダンで無機質な部屋のデザインを柔らかく見せている。 おそらくインテリアは彼女の趣味だろうと思っていたのだが、記事を読むとご主人の仕事

3ポイント(2):博士の普通の愛情

僕らはその店を出て、しばらく散歩をした。恵比寿から鎗ヶ崎の坂を下って中目黒の方まで行く。ずっと前に僕はこのあたりに住んでいたことがあったんだけど、来るのは久しぶりだった。街は変わったような変わっていないような、とにかく変な感じだった。ここに住んでいた頃、雑誌やテレビで「お洒落な街」と紹介されるたびに僕は笑った。どこが。 山手通りは何十年もかけて道幅を広げるんだか諦めたんだか知らないが、奇妙な道路幅のままだ。僕が住んでいたマンションも立ち退くかもしれないと何度も聞いていたが、