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博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
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2019年10月の記事一覧

ミカの暗号:博士の普通の愛情

夕食の時、妻が家電量販店の大きな袋を指さして、ブック型のパソコンを買ったと言う。スマホを使い出したのもつい最近であるくらい、ネットには興味がなかったのに。 僕はネットでのマーケティングを仕事にしているので、テレビのニュースやバラエティ番組で出てくるネット用語を彼女に解説する役割だった。SNSはおろか、匿名掲示板での中傷などについてもどういうことなのか、最初から説明する必要があった。 それから、妻はパソコンで映画を観るようになった。僕のいくつかの映画配信サービスに妻もアクセ

インケンなサラダ:博士の普通の愛情

「ねえ、これ見て。インケンサラダって書いてある」 「本当だ。病院食ってだけで気が滅入るのにインケンなサラダはいやだね」 彼女が入院すると聞いたとき、僕はお見舞いに行くことを思い浮かべてなぜか浮かれた気分になっていた。本人は不安だろうし、そんな不謹慎な気持ちになるのはよくないとわかってはいたけど、不謹慎というのはそう自覚しているからこそ、存在の価値があるものだ。 彼女とはある仕事で知り合った。たった一度だけ撮影をして、それからたまにお茶を飲んだり食事をしたりしていた。僕は

ジョークのオチ:博士の普通の愛情

フロリダにある集合住宅。玄関のドアが開く音がした。 「どなたですか」 ジェニファーが不思議に思いながらドアを開けると、そこには兵役でアフガニスタンに行ってるはずのジャックが軍服姿で立っていた。 「ジャック。驚いた。帰ったのね」 「うん。ジェニファー、半年間も一人で留守番をさせてごめん」 「いいえ、謝る必要なんてないわ。なんてうれしいサプライズなの」 ジェニファーの目には涙が光っていた。ジャックは黙って彼女を抱きしめた。玄関でしばらく抱き合っていた二人。 「ジェニ