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博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
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2019年8月の記事一覧

サプライズのない再会。

物事には順序というのがあって、割とそれは大事なんだよな、という話。 俺は映画をけっこう観るんだけど、それほど必然性がない展開であっても女優は裸になることに気づく。女優はよく、「必然性があるので脱ぎました」などという。「体当たりの演技」なんて馬鹿の一つ覚えのようにマスコミも言う。体当たりって、脱いだり、土砂降りの雨の中で叫んだりすることなのかなと思うけど。 アメリカには「ストーリー・アナリスト」という人がいる。脚本を分析して、ヒットする映画になるかどうかを判別する仕事だ。と

余命60年の花嫁。

20代前半で結婚した知人が、奥さんのことをそう言っていた。 20代の花嫁は健康で平均寿命まで生きると仮定すれば余命は60年ある。ジョークではあるけど、確かに結婚する相手との契約期間を「余命」で考えることにはちょっとした意味があるのかもしれない。 寿命はほぼ「運」であるし、先のことは何もわからない。もしうまく物事が進行したら、という前提で計画しようと考える人は多い。しかし、一流企業である山一証券に勤めているから安心だ、と結婚相手を決めたとしてもその会社は倒産した。しなくても

ラブ・マネージメント。

アンガー・マネージメントという言葉を聞いたことがあると思います。 何かに対して怒りの感情が湧いたとき、それをそのまま外に出してしまうと問題が起きるので、自分の心の中で整理し、温度を下げることで解消していこうという意味です。 怒りの感情は6秒間でかなり減るそうです。誰かにぶつかられた、おい、ぶつかったじゃないか、とケンカになる。そういうときは、6秒間待ってみる。 「わざとじゃないかもしれないし、ここでケンカをしても得なことはないよな」などと考えている間に、沸騰していた怒り

嫉妬という愛。

『鍵』を見た。柄本明、川島なお美、大沢樹生さん出演の、新しい方。 ご存じ谷崎潤一郎の名作の映画化だけど、時代を超えて「愛情の業の深さ」をまざまざと感じる。 年老いた夫と、若い後妻。互いの日記や若い男を介した狂おしいほどの嫉妬が生み出す、ねじれた愛を描く。 夫はある人に、あなたは「愛する女のためなら死んでもいいと思っている」と言われるが、「女に惚れている自分の気持ちに殉じたいのさ。僕はエゴイストなんだ」と訂正する。これは恋愛にはよくある構造だと思う。 相手のことを愛して