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博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
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2019年5月の記事一覧

ろくでもない男。

『私は絶対許さない』を観た。集団暴行を受けた女性の原作を元にした映画でとてもヘビーなんだけど、性犯罪を抜きにして、いくつかの典型的な男性像が出てくるのが興味深い。 まず、暴行をする地方のヤンキー集団。彼らは集団にならないと何もできない腰抜けで、主人公の女性は彼らに復讐するつもりだったが、それをしなくても自滅する人生を送るのだと悟る。映画の描写は近眼である彼女の主観になっていて、映像はボケてはいるが生々しく残酷だ。

ボールのないサッカー。

愛する人との記憶を失っていく映画を、今まで何本観ただろう。 「明日の記憶」「私の頭の中の消しゴム」「アリスのままで」あたりがわかりやすいところかな。目の前に昨日までと同じように存在している人が自分を認識しなくなる。その設定で面白い映画が作れないはずがない。 家族と恋愛とでは「愛情」の種類が違うけど、人は相手を憶えている、という一点のみで繋がっていることを再確認させられる。頭の悪いたとえで言えば、サッカーのユニフォームを着た二人はいるが、ボールがない状態か。 頭の中の消し

ブラジルにて。

先月ブラジルへロケに行った。 俺は写真が生み出す幸福が好きだから、観光地で記念写真を撮っている人に声をかけることがある。ふたりで交互に撮っているときは「一緒に撮りましょうか」と言う。 仕事の撮影が終わり、ホテルに戻る途中だった。広々とした公園で、ヨーロッパから来たと思われる若いカップルが楽しそうに写真を撮りあっていた。声をかけてスマホを受け取り、写真を撮った。 俺と一緒にいたスタッフは「この人はプロのカメラマンだから、撮ってもらうと高いよ」などと冗談を言う。 そのすぐ

男女の愛情の差。

映画『夢売るふたり』を観ました。 繁盛する居酒屋を経営している、松たかこさんと阿部サダヲさんの夫婦は、ある日火事で店を失ってしまいます。なんとかして店を再建したいふたりですが資金はありません。 そこで夫である阿部サダヲさんが結婚詐欺をして開店資金を貯める方法を思いつくという、ある種、荒唐無稽なコメディが始まります。そう。途中まではコメディに見えるのです。 監督の西川美和さんは、我々男性には想像もつかない女性を描きます。どんな男性監督があんなにリアルなシーンを撮れるでしょ

全裸のユミコ。

疲れて家に帰る。 リビングに脱ぎ散らかされた服。 ユミコの服だ。 どうしていつもこうなんだろう。 裸でテレビを見ているユミコ。 「服を着ろよ」 ユミコは何も答えず、笑っている。 廊下に落ちていたユミコの下着を投げつける。 「服を着ろ」 俺は毎日、ウンザリしていた。 可愛いと思うときもある、 でもそれも一瞬だけだ。