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『リコリコ』のNFTは、どこにお金が流れるの?|アニメ業界ニュースまとめ#3

今週もアニメ関連ニュースをキュレーションしていきます。


今週のホットトピック:TVアニメ「リコリス・リコイル」がNFTで登場!

今年で2周年を迎えるTVアニメ「リコリス・リコイル」が、NFTマーケットプレイス「SNFT」でのNFTオークションを開始!オープニング/アイキャッチの制作過程で作成された中間成果物をオークション形式で販売されます。アイテムは全て1点もの。

PR TIMESより引用

以前より、アニメ業界のプロセスエコノミーの一環として、原画などの設定資料のNFT販売には、ポテンシャルを感じていた。

そして今回、ついに中間生成物のNFT販売が開始されることになる。

ただし、本報道を見て残念に思ったのは以下の文章だ。

オークションの売上金額から、マーケットおよび制作スタジオの手数料と製作委員会ロイヤリティのみを差し引いた金額が、各素材の担当クリエイターに分配されます。

PR TIMESより引用

はたしてどれほどのロイヤリティがクリエイターに分配されるのかわからないが、少なくとも分配率は明確に提示すべきだし、製作委員会ロイヤリティを含めず、事務手数料を除いた収益の全てをクリエイターに還元すべきだと思う。

なぜならNFTは、ストックオプション的な使い方ができるからだ。NFTでのストック収入が期待できるようになれば、アニメーターは自分の仕事に対して強い動機を抱くことができる。

もちろん、アニメーターの賃金改善にも繋がる。

また、今回NFTを販売するSNFTはソニーの完全子会社らしい。つまり『リコリコ』のNFT販売による利益の大半はソニーに入るということになる。

本件に限った話ではないが、この手のWeb3周りの事業に関しては、はたして本当に真っ当な思想があるのかどうかを見極める必要がある。本来、ブロックチェーンは「分散」がキーワードだったはずだが、本件はどう見てもソニーの「集中」である。

はたしてロイヤリティはどのように設定されているのか。そしてこのNFTがどれほどの値がつくのか。注視していきたいと思う。

アニメ産業における供給面の課題|日本総研

わが国のアニメ産業は、堅調な海外需要を背景に、次世代の成長産業としての期待が高まっている。もっとも、先行き、アニメの供給能力はそうした需要に十分に応えられないリスクが大きい。これは改善しづらい業界慣行による低賃金環境の下、アニメーターやプロデューサー等(以下、アニメーター等)の同産業からの離職が後を絶たないことがある。

日本総研より引用

様々な提言がなされているが、とりわけ印象的だったのが「政府による介入を強くすべき」という点。たしかに、業界の悪習を打破するには外から壊すしかないと思う。

抵抗勢力としては、製作委員会方式の旨みを拝受している音楽会社(ソニーなど)、玩具メーカー(バンダイナムコなど)、出版社(KADOKAWAなど)が挙げられるが、とりわけ厄介なのは放送局だ。多分、政府は製作委員会方式に直接メスを入れるのはできないのではないだろうか?

世界へ広がる日本アニメの可能性|JETRO

ジェトロは2024年6月に開催されたアヌシー国際アニメーション映画祭・展示会において、日本のコンテンツの配給や日本企業との協業を行っているフランスとコートジボワールの企業の代表4人に、現在のプロジェクトや日本コンテンツの可能性、今後の展望などについてインタビューを行った。

JETROより引用

本記事にも書いてある通り、やはり日本は独立系映画の資金調達が難しいらしく、基本的には海外から調達することを視野に入れる必要があるらしい。有象無象の商業アニメーションが大衆化している日本ならではの事情だろう。

日本が誇る「ジブリブランド」で一気に世界市場へ

日本テレビホールディングスは2023年9月、100億円をかけてアニメ映画製作のスタジオジブリを子会社化した。事業承継・M&Aを行うテイクコンサルティング代表の松丸史郎さんは「最高のコンテンツを獲得した日テレはジブリ作品の世界配信を皮切りに、日本のアニメを核としたグローバルビジネスを加速していくだろう」という――。

PRESIDENT Onlineより引用

このようにコンテンツは購入することが可能なので、放送局は一刻も早くコンテンツを買収し続けるべきなのだが、今回のスタジオジブリ買収は正直遅い。

もうここ10年で、あっという間にソニーが主導権を握ってしまった。まさかソニーに『鬼滅の刃』とクランチロールの主導権を握られるとは、当時は思いもしなかっただろう。

だが今後は放送局も、アニメ作品を中心にコンテンツの買収が相次ぐと思う。……が、もう既にソニーやKADOKAWAが主導権を握っている気がする。

配信時代が引き起こしたリメイクアニメブーム

最近、かつて人気だったアニメ作品の大型リメイク化が話題を呼んでいる。この7月だけでも「らんま1/2」「魔法騎士レイアース」「地獄先生ぬ~べ~」など、一時代を築いた作品の再アニメ化が相次いで発表されたのが理由だ。

アニメハックより引用

昨今のリメイクアニメブームについて、「配信による恩恵」という視点で紐解いている記事。グッズを購入するコアファンよりも、配信数を稼いでくれる大衆に作品を届けた方がよく、その点で、一定の知名度を有しているリメイクアニメの方が有利という指摘は興味深い。

一方で、このリメイクアニメブームは少子高齢化社会によるものが大きく、というのも今の若者は『らんま1/2』どころか『ドラゴンボール』すら読んでいない人も多い。

はたしてこのリメイクアニメブームは、10年20年という長期的なスパンで、日本のコンテンツ産業に恩恵をもたらすのだろうか?

おじさんだけが喜んで、この先長い若者には「?」な感じが否めない。

日本にとって大切な外交官は実は「ONE PIECE」や「グレンダイザー」

現在、サウジアラビアをはじめとする中東地域で、日本のアニメ作品の展開がかつてないほど盛り上がっています。そんなアラブ世界でのアニメビジネスにおけるリーディングカンパニーである、マンガプロダクションズのCEOブカーリ・イサム氏にお話を伺いました。

Yahoo!ニュースより引用

アラブ世界で日本のアニメが大注目されているらしい。

注目すべきは以下の回答。

昔は日本のアニメには子供達をターゲットにしているものが沢山ありましたが、今はハイターゲットのものが非常に多いです。それもいいのですが、私達のような世界の様々な地域の人々が、子供をターゲットとした日本のアニメをみて育ってきて、日本のアニメが好きな今があると考えると、もう少し若い世代をターゲットにしたアニメもあってほしいですね。それは長期的にみれば、10年後、15年後の日本のアニメの為にもなっていくのではないかと思います。

Yahoo!ニュースより引用

はたして昨今のリメイクアニメブームは、本当に正解なのだろうか?

ドコモ「dアニメストア」は動画サービスの勝ち組になった

動画配信サービスは競合が多く、生き残りをかけたオリジナリティ勝負になりつつあるが、一方で、もはや生き残って「勝ち組」になっているのが、dアニメストアだという。

asciiより引用

本記事を読むと、dアニメストアが「偶然の産物」であることがわかるが、やはり動画配信サービスはニッチ戦略との相性がよく、それがdアニメストアで上手くいったのだと思う。

ただし、dアニメストアとLeminoで映像配信事業を分けてしまったのは頂けない。NTTの縦割りな感じがよく伝わってくる。dアカウント設定もめんどくさいし。

浮世絵を描く生成AI、古典文学研究者が開発

どんな絵も浮世絵風に描く生成AI(人工知能)モデルが22日に公開された。本物の浮世絵2万4千枚の画像データを学んだAIが、色彩から和紙のざらっとした質感まで再現する。

朝日新聞デジタルより引用

2万4038枚の浮世絵画像をベースに浮世絵特化のAIモデルを作成したとのこと。かなり面白い。

アニメの著作権は「公開から70年」だから、そろそろ著作権切れの日本アニメがいくつか登場する頃合いである。1963年放送の『鉄腕アトム』の著作権が切れる2033年がXデーになるのではないだろうか。つまり、アニメーターやイラストレーターは2033年までに何かしらの策を講じなければならない。

中国の卓球アニメ「白色閃電 Pingpong!」が配信開始!

2024年7月20日、女子卓球を題材にした中国アニメ「白色閃電 Pingpong!」が中国の動画配信サービス・bilibili(ビリビリ動画)と騰訊視頻(テンセントビデオ)で配信開始され、中国のネットユーザーから期待の声が寄せられている。

gooニュースより引用

国技といっても過言ではない卓球をテーマにした中華アニメがいよいよ配信開始。個人的には、中国の割には遅いなと思う。というか、どうも中国のアニメ事業は、IT事業に比べてスピード感が遅い。だからやろうと思えば、この卓球アニメも日本が主導権を握れたはずなのだが、残念ながらその機会を失ってしまった。

また、日本国内の卓球人口が約1,000万人もいることから、卓球アニメのポテンシャルは極めて高いと思うが、まだ卓球を代表するアニメは出てきていない。『ピンポン』はマニア向けだし、『灼熱の卓球娘』はちょっと萌えが強いからなぁ。

もちろん『稲中卓球部』は論外である。


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