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アニメーターの給料が安い元凶は製作委員会なのか?

アニメーターの給料が安い元凶として製作委員会が挙げられます。その結果、「製作委員会が完全悪」という風潮がアニメファンの中で広まっているようです。

一方で以下のような記事もあります。

本記事では、アニメ制作費の増加に伴い、アニメーターの待遇が良くなっていることを指摘。製作委員会方式が開始された2000年ごろから制作費が増加していることから「製作委員会方式の批判は的外れ」と結論づけました。

たしかに、製作委員会方式がアニメ業界を発展させてきた歴史があるかもしれません。しかし、経済格差が是正されていないのも事実です。

本記事によれば、アニメスタッフの賃金は2009年から2019年の10年間で1.76倍になったと解説しています。

しかし一方で、日本動画協会の調査によれば、アニメ市場は2009年から2019年で1.98倍大きくなっています。
そう考えると、たしかにアニメーターの賃金は高くなったのかもしれませんが、それは市場規模の拡大によるマクロ的な要因が大きく、しかもその成長をもたらしているのは海外事業によるところが遥かに大きいのです。

このことから推察されるのは、アニメ業界内の経済格差は全く改善されていないということです。

そして経済格差を解消するには、ロイヤリティをアニメーターに還元する仕組みを作る必要があります。そのためには権利関係の整理が欠かせませんが、その最大の障壁になっているのが製作委員会なのです。

最近は製作委員会を最小限、または単独出資によるアニメ作品が増えてきました。その背景には、ロイヤリティ収益の最大化だけでなく、権利の一本化も挙げられます。

仮に続編を制作したいと思っても、そのためにはまず製作委員会で話を通さなければなりません。そしてそこで1社でも拒否すれば、問題は一気に長期化します。

つまり製作委員会方式は、たしかに資金調達の手段の1つとして優れていたのは間違いないものの、今後のコンテンツ業界で極めて重要になるライセンスビジネスとの相性が悪いのです。

そのため『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』のように、アニメ制作会社が主導権を握れるような資金調達を実施することが重要です。

また、業界全体としては、富の再分配を実現できるような仕組みを作っていく必要があります。たしかに製作委員会は資本主義のルールに則っていますが、一方で富の再分配のルールが完全に放置されています。

アニメーターにロイヤリティを還元し、アニメ制作会社がある程度のキャッシュを確保できるようにするには、製作委員会、政府、労働組合主導による富の再分配が必要だと思うのです。

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