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魔女の宅急便@ほぼ全画面分析~その1

【1】これから始まる一連のツイートは学術にもとづいたものであり、その画像引用も恣意的でない・それぞれに必然的引用であることをお断りします。


【2】館野仁美さんのツイートのご教示で気づいたのですが、風に揺れる草花が色カーボンなんですね。
通常の黒の実線(マシン線)より柔らかい印象

【3】通常の「実線(黒)」はマシーンにかけて転写される。
この膨大な草花が手作業で色トレースされたわけでなく、特注の色カーボンが用意されたのでしょうね。

【4】さて【3】の、目を開いたキキの表情のカットのあと、ひとカットはさんで【4】のカットでふたたびキキのアップのカット。目を閉じている。
どんな感情の表情かわからない。類型的でない表情。この作品の特徴ですね。

【5】目を見開く。ストーリー的には旅立ちを決意をした表情のはず。しかしとてもそうは見えない表情ですね。
類型的でない表情をキキにほどこそうという、決意みなぎる演出の決断です。

【6】右手の藪と左手の大木のあいだを、「奥から手前へ」と移動するキキの「立体的な運動」。これは背景を2層にしたのか、一枚絵の中をキキを動き回らせたのか?

【7】獣道から一般道へ歩み出るキキ。構図は一本道を「手前から奥へ」ずんとのびる。
自転車のおじさんの、ペダルを踏み込む動作が力感あふれていて、より「動きの力感」が伝わります。

【8】柵の抜け穴を使って、また「奥から手前」へと「立体的に」キキを運動させていますね。
キキと柵とが「セルと背景の組み合わせとして、絶妙に噛み合って」います。

【9】キキが今度は窓から顔を出しています。
「キキというセル画」と「窓枠という背景美術」が「噛み合って」いる楽しさ。

【10】お母さんが魔法の薬の調合に使うフラスコの数々。フラスコの中の液体が背後の景色をゆがませて見える楽しさ。

【11】これから始まる旅立ちで黒の魔女の服に着替えるまで、キキの私服が見られる貴重な時間です。

【12】キキとお母さんの輪郭線も、黒でなくて色カーボンです(本編でご確認ください)。

【13】お母さんの、片目を半目にするこの表情。なにか、こう、という表情が確定しない、定型でない表情がこのアニメにはたくさん出てきます。それが「魔女の宅急便」の見どころのひとつです。

【14】タンスが背景美術とセル画の組み合わせで出来ていて、引き出しをするりと引き出す。これもセルと背景の「噛み合わせ」が可能にする面白さです。同じシーンで本棚でも「噛み合わせ」のマジックが使われています。

【15】お父さんが車から降りようとして片足を車体からはずそうとしています。そのとき車は重量のかたよりのため、斜めにかしいでいます。「重みの感触」。

ジブリでもCG作画・演出で活躍した片塰満則さんのご指摘がありました。
この【15】のカットでは、お父さんは色カーボンでありながら、車や荷物は黒のマシン線という凝りよう。
片塰さんご指摘ありがとうございます。

【16】お父さんに魔女の黒服姿を見せるキキ。回転してワンピースの裾がひろがり、踊る。そのひるがえり方の素晴らしさ。

【17】子供のころのように父親に抱っこをせがむキキ。近寄るお父さん。その様が背後の姿見で「二重に」再現されています。手がこってる。

【18】高い高いをされて見える、キキのパンツ。この作品はキキの服の裾がひるがえることが多く、必ずといっていいほどパンツがちらりと見える。露悪性とまではいかないが「見えて当然」という演出意志。

【19】故郷では気心の知れた友達がいて、旅立ちするにあたってちょっと得意げなキキ。この安息の地から離れ、キキは変化を強いられるわけですね。

【20】長年の友達の前ではこんな皮肉っぽい表情を見せていたキキだったんですな。「海の見える街」で敵対的に接する女の子たちのような。

【21】宮崎駿の有名な飛ぶシーンは、「飛ぶ喜び」だけで成り立つのではないのです。「飛べるかな?飛べないかな?」の不安感が見る者に伝わるサスペンスの瞬間でもあります。

【22】「飛べるかな/飛べないかな」の演出ポイントは、重力と飛翔する力の「作用/反作用」をうまく見せられるかの「動きのつくり」にかかっています。

【23】「不安定に飛ぶ」それが『魔女の宅急便』のひとつの動きの見せ方(テーマ)かもしれません。
高いモノの先端から先端へと飛び移るシーンは、いま樹木であり、街では尖塔だったりしますね。

【24】魔女とほうきとは相性があるらしく、使い込まれたとは言え、母のであって自分のものでないホウキを使いこなせていない。十秒ほどのこのカットの「うまく飛べない・演技づけ」はなかなかのもの。

【25】さて、ちょっと休憩します。
いかがでしょうか?「アニメの・てにをは」に従うとアニメはこんな風に見えます。

これから数日かけて『魔女』の全編を「アニメてにをは」します。お付き合い願えれば。

つづきはこちらからどうぞ。


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