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ジブリの烙印(東小金井村塾編その8~闖入者)

★1


スペシャルゲストが新たにやってくることになった。
今度はプロデューサーの鱸木さんだった。
漂々とした物腰でやってきて、講師席に陣取ると、座らずに立ったまま話を始めた。
面接のときの、高畑勲さんをうかがうような卑屈な感じが印象的だったので、塾生の前ではいたって闊達に、響きのよい声で喋っているのが別人のようだった。

鱸木さんが始めたのは映画にまつわるお金の話だった。
興行収入、配給収入、違いはなにか。
映画が興行して儲けたうち、映画製作会社の取り分はどれだけか。
細かな取り分の取り決めとその配分の仕方に、ぼくは理解するのに戸惑った。
印象に残ったのは、スタジオの維持費のことだった。
設備の維持費に加え、抱えているスタッフの人件費が、ジブリの場合、一ヶ月に一億はかかるというのはぼくには驚きの数字だった。
映画が公開されるとき製作費何十億と宣伝されてその大作感が喧伝されているが、少なくともジブリの場合、製作費に特別な仕掛けなどなく、単純にスタジオの維持費でそれだけの製作費がかかるということだ。
二年かけて制作すれば、二十四ヶ月かける一億で二十四億という計算なわけだ。
この単純な数字の内訳に、ぼくは何か、今までだまされていたような気がした。

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