【超基本!の、てにをは】その1
【01】「紅の豚・予習その1」が案外好評だったので、二、三点『アニメのてにをは』な基本的・見どころを紹介します。
【02ー1】まずは冒頭部、海賊船の襲来の無線を受けて隠れ家から出発するポルコロッソ。 渓谷の間の隙間を《左右から挟まれるように》して《斜め奥から手前へと》飛行艇を進めます。
【02ー2】まず何故《斜め奥ー斜め手前》なのか。
宮崎駿にとって《斜め奥/手前》は空間に「奥行き」をもたせるためです。 他の作品でも視て見ましょう。 「ハウルの動く城」冒頭の汽車。《斜め奥》から出てますね。
【02-3】そして《斜め奥・手前》の《両側》に必ず高い壁を立てます。 それは(おそらく)《斜め手前/奥》の「一直線の運動」に「緊張を走らせる」ためだと論者/わたしは視ています。 たとえば「もののけ姫」の冒頭。
【02-4】同じく「もののけ姫」より。こちらは片側だけが壁になっていますね。そして視点は《斜め奥から》。
【02-5】比較的新しい作品でも。 「崖の上のポニョ」から。 丘の上の家から《両側が草原になっていて、その間を》土の道が走り、宗助は《斜め奥から/斜め手前に》降りていきます。
【02ー6】時代を逆行させて「風の谷のナウシカ」。 敵同士の巨大飛行艇が上下で闘いながら、《雲という両壁》にはさまれて《斜め奥から》攻防戦が繰り広げられていますね。 《左右からはさまれて・斜め奥》はどこか「緊張」がはらむんですね。
【02-7】それから「天空の城ラピュタ」。 この例が面白いのは「壁」がないんですね。 でも線路の両側、一寸先は、真っ逆さまな渓谷。 これだって「緊張を走らせる・壁」の機能を「余白」がかわりに働いているとも言えます。
【02-8】同じく「天空の城ラピュタ」ラピュタより。 二本の運動線が交わろうとして、わたしの分析用語でいえば「複数の運動が葛藤する」緊張の局面です。 海賊一家は《斜め手前から、斜め奥へ》
【02-9】「天空の城ラピュタ」で最後の例示にします。 ここは《斜め奥》を踏まえつつ、三層構造(手前~貨車/中間~ドーラの車/奥~渓谷》。 見事に空間と運動が《噛み合って》躍動性が生まれました。 めでたしめでたし。
【03-1】話題をあらためて次に、宮崎アニメの「三層構造」を説明します。 昨夜は、アニメの空間に「奥行き」を立ち上げるため、《左右から挟撃された一本道を・斜め奥から斜め手前へ》と「運動」させるさまを見ました。
【3-2】「アニメのてにをは」とは「アニメの基本表現」のことです。 今回は「三層構造」について。 セルの層を3つに設定することで空間が「立体的」になります。 手前と奥に雲が。中間にポルコの赤い飛行艇が「はさまれています」。
【03-3】セル画の層を「手前・中間・奥」と設定して空間が立体的に視えてきます。 いま襲撃された船の周りをポルコの飛行艇が旋回しています。 このとき「中間」が「襲撃された船」。「奥」に「飛行艇」がいます。 じゃあ「手前」は?
【03-4】「手前」は? 「奥」から回り込んだポルコの飛行艇が、「手前」へと回り込みことで、この船が「立体的な空間の中にいる」と判明します。
【03-5】 このように「中間」にあたるヒトやモノの周りを「奥から手前、ないしは手前から奥」へと回り込んで「立体性」を幻視させる方法をわたしは「挟み込みの立体性」と呼んでいます。これも「3層構造」です。
【03-6】この「挟み込みの運動」はこのシーンでもう一箇所起こります。「観光遊覧船」がヒントです。ご自分の眼で確かめてみてください。 画面は海賊船に人質にとられた女の子が赤い飛行艇を発見した瞬間の「3層構造」。
【03-7】攻めてくるポルコの飛行艇に空賊飛行艇が銃撃ます。銃弾は当たらず、ポルコの飛行艇の「奥」や「手前」に被弾して波がしらが上がります。
【03-8】 ポルコの飛行艇は、空賊の飛行艇の真後ろにつけました。 このとき「手前~狙撃手/中間~尾翼/奥~ポルコの飛行艇」になります。
【03ー9】あわてた狙撃手がポルコの飛行艇を撃とうとして、「中間にあたる」自機の尾翼を射撃して、尾翼はボロボロになります。
【03-10】空間と運動が噛み合って起きる「三層構造」の立体性という、「アニメのてにをは」、理解してもらえましたか? また時間をおいて、もうひとつくらい、「紅の豚」の見どころを解説して、予習を終わりにしたいと思います。
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