正しい画を求めて🔟 色温度ってなんだっけ。色って温度だっけ?

ホワイトの話をしたのでもう少し突っ込んだ話をしてみよう。
白の定義によく出てくるものに、色温度がある。
そもそもなぜ温度で話をするのだろうか。

結論から言えばきちんと色を定義するなら色度が必要だ。
CIEのxy色度図などで座標を示すあれである。
例えば一般的な白とされるD65であれば0.3127 x , 0.329 yだ。

ではD65はなにが65なのだろうか。
この場合D65とは6500Kを意味している。
D50では5000K、D70は7000Kだ。
この場合のKは絶対温度を示しており、物理や科学でおなじみのケルビンのことである。

色なのに何故温度?と思うかもしれない。
これは白を近似的に定義するために黒体放射を用いているからだ。

黒体放射は一切光を反射しない物体を仮定し、その物体を加熱した時にそれが発する光のことである。
イメージしやすくするために炭や鉄球を加熱したときをイメージするとよいだろう。
物体、例えば鉄球を加熱すると赤い光を発する。
これは高温になることでエネルギーを熱や光として放射しており、この場合鉄球が放つ光を赤いと感じているのである。
これが外部の光をよく反射するものであれば、自身の放射する光以外がそこに混ざってしまう。それを回避するために一切反射しない、という条件を仮定したのが黒体放射だ。
実在する材料であれば炭をイメージするとよいだろう。

この黒体放射の色は温度によって決まり、比較的低い、例えば1000℃程度であればかなり赤みがかった光になる。
更に高温、例えば10000℃にもなれば相当青みがかってくる。
6000や6500Kであれば白く感じるだろう。

そしてモニタの標準白はD65、すなわち6500Kの黒体放射の色、と定められているという話である。
なぜ6500Kなのか?白いからか?と思うかもしれない。
そうではなく、これは昼の太陽の光に近いスペクトル分布となるのが6500Kであることが理由である。
太陽光のスペクトルの分布は黒体放射と非常に近いが、そもそも太陽の光自体高温に発熱することで放射する光なのだからある意味当然だといえよう。

なるほど、太陽の光がターゲットだったのか。
とわかったところで、D65、は本当に白いのだろうか。
上に書いた通りこれは太陽の光が示す白を模擬したものである。
白とは目が色として感じ取る全波長が等しい状態が白だと言える。
では太陽の光はどうだろうか?
太陽光のスペクトルはWikiなりGoogleすれば簡単に見つかるので見てみると良い。
実際の太陽の光は昼光であってもスペクトルは一定ではなく、理想的な完全な白と比較すれば比較的黄色に寄っているとも言える。
しかし目標とする白はあくまで太陽光の白であるので、太陽光の白=D65をターゲットにしているということだ。
目視で知覚的に完全に白だ、と思うところに合わせても実際にはそれでは映像規格としての標準的な白色点ではない。
もし目視で知覚的に白を合わせたい場合は覚えておくとよいだろう。
※もちろん目視で完全な白やD65に合わせるのは相当困難であるが

余談だがテレビや映像制作に於いてはこの限りではなく、例えば日本のテレビ放送ではD93が基準とされる例もある。
これは少し青によった見た目を好む場合があるからで、例えば実際にD65に調整したモニタでは白が黄ばんで見える、と好まれないことも少なくない。
特に日本人は色温度が高いことを好む傾向もあり、例えば白いシャツがきちんと白く見えるよう、ああいったものはわざと青の反射が高くなり、黄ばんで見えない処理をしていたりする。(洗剤に入っている蛍光増白剤もそれである)

ところで先程厳格に色を定義するなら色差が必要であるといった。
実際のところ、色温度で白を定義するので問題はないが、厳密に色を定義するには色温度ではなく色差を用いるのが正確である、ということは知っておいたほう良いだろう。
色温度ではあくまで色温度が想定する色(白)しか定義できないからである。
CIEの色度図で色温度の軌跡を示す黒いラインがそれであり、これは黒体軌跡と呼ばれている。
詳しく知りたければGoogleしてみると良いだろう。

少しばかり脱線したが、少なくともHDRに関してはD65が日本も含め標準となっている。
普段見ている白とはなにか。
ヨドバシカメラのテレビコーナーにでもいって、様々に、まともな管理などされていない、バラバラの色温度を見てみるのも楽しいかもしれない。

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