正しい画を求めて③ 色を測るということ。アーニャ、むずかしことちんぷんかんぷんます!

色を測る。と言われてどうやるかをすぐに答えられる人はそうそういないだろう。
結論から言えばそれは限りなく可能なレベルの不可能、でもある。
このテーマでこれを言うのもなんであるが、色や光の強度の感じ方は個人レベルで異なるからだ。

そもそも光は色ではない。色の情報など持っていない。光は特定の波長のエネルギーでしかないからだ。
その光から色を測る。そのためにはまず色が何であるか、どのようにして色や光の強さは感覚として認識されるか、を知らなければならない。
しかしこのあたりの話をし始めると、「アーニャ、むずかしことちんぷんかんぷんます!」にしかならないので、基本的にはここではしない。
なんか理由はあるがとても困難だ、ということだけ知っていれば良い。
詳しく知りたければlms錐体、cie-xyz色空間、等色実験、等色関数、rgb表色系、lab表色系あたりを調べてみると良い。

とはいえ色の定義が出来なければ測定もできない。測定できないものは制御もできないことになるのでそれでは困る。
逆に観測できれば制御もできる。きゅーべぇも言ってたから間違いない。
故に概要だけだが説明しておこう。

過去に実験として光と色の見え方を定義するための実験が行われた。上にも書いた等色実験がそれだ。
この実験をもとに、光と色の関係が関数として定義された。等色関数がそれである。
この実験から波長の分布と強度がわかれば光を明るさと色として定義することが可能となった。

現在明るさや色を測定する専用の機器も、実際にはスペクトルの分布と強度を測っており、分校測色計(spectradiometer)と呼ばれている。
分校測色では測定したスペクトル分布と強度から、この等色関数に従い色を定義するのである。
この等色関数も実は完璧なものが存在しておらず、一般にはcie1931-2と呼ばれるものが用いられることが多いが、近年の鋭角なスペクトル分布を特徴とするWCGモデルでは色が正しく導出されないことが指摘されている。(メタメリック障害)
genuine hdr colourの校正でcie2012-2を採用する理由である。

ところで、実モニタやテレビの測定に使用される機器は実のところこれとは別であることが多い。
一般に分光測色計は低輝度の光の分析に弱く、時間が非常にかかるばかりか精度も不十分になるからだ。
ラボグレードのinstruments systemやradiant、photo-researchや、colorimetry research、jetiの分校測色計ならばそれでも十分な性能と言えるであろうが、価格もpr-740で600万、cr-300rhでも200万と現実的なものではない。
これらはあくまでも専門の事業者やラボで用いられるもので、仮に導入するとしてもポストプロダクションやディスプレイ、テレビメーカーなどである。
余談だが日本が誇るコニカミノルタの分校測色計も高い評価を受けている。cs-2000aがそれであるが、これも400万円と非常に高価な機器だ。

一般のユーザーがモニタやテレビの校正に使用できる分校測色計といえば、x-riteのi1proシリーズが唯一と言ってよいだろう。
現行のi1pro3や旧モデルとしてi1pro2があるが、テレビやモニタの測定用途であれば何れも差はない。i1pro3は5000cd/m2と超高輝度もサポートするが、そのような高輝度に対応したモニタは民生機には存在しないからである。
一点注意するとすれば、i1Pro2以前のモデルはメーカー校正非対応となる。メーカー校正を求めるならi1Pro3か上位のモデルが必要だ。もっともi1Pro3の分校精度でそこまで必要かは正直怪しいと思うが。
後述する比色計(colorimeter)も同様の理由で、fsiのxm312uやxm310kでも導入するわけでないならば2000cd/m2もあれば十分である。
なお分光測色計はより安価なものも含め他にいくつも存在するが、i1pro2/3が最低ラインと言っても良い。
i1pro2/3と比較すると分光の精度が大きく劣り、現代の広色域モデルでは測定する意味がないほどの精度になるためである。後述する低照度においても劣るが、それ以前の問題だ。
i1pro2/3ですらたとえhiresモードを使用しても3.3nmしか分解能がなく、ラボグレードのjeti(hiresモデルで2nm)と比較すると有意に差があることがargyll cmsのサイトでも示されている。

そのi1pro2/3に比較して劣るとなると、当然使用は不適と言えよう。

一方i1pro2/3は使用できないほどではなく、あくまでモニタやテレビの校正に限れば最低限の性能はあると言ってよい。
注意としてはi1pro2/3は低輝度での測定性能が非常に低く、0.1cdですら満足な精度は望めない。
後述する比色計補正には問題ないが、これが現代のモニタやテレビの測定にはi1pro2/3はは使用できない理由である。

では一般にモニタやテレビの測定はどのようにして行われるのか。
次の記事では比色計と目が色を認識する仕組みを紹介しよう。


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