(HDRに限らず)モニターのキャリブレーションをさらに本気でやってみる3️⃣

今回はLightspace HTPの機能をいくつか解説しよう。
Colourspaceも基本的には同じだと思って良いので、Colourspaceユーザーも是非参考にしてほしい。

まずはDisplay Charactarization。これは受像機、モニターやテレビなどの表示特性を厳密に計測する機能だと思えば良い。
ビデオ中でも触れている通り、Lightspace HTPでの計測の中心となる機能だ。
(Display specificationやその他からもアクセスできるが)ネットワークマネージャや測色機の設定などもここから行う。
計測用パッチを登録したCSVやDPXの読み込み、もしくは標準cube作成機能を用いて3~21スケールの解像度のCubeパッチを作成できる。
Cubeパッチを用いる場合、17スケール以上あれば解像度は十分だろう。

ビデオ中では触れていないが、Lightillusionではソフトを起動し、測色機に接続されていない状態でDisplay specificationまたはDisplay Charactarizationを呼び出すと自動で測色機への接続が行われる。
前提としてTool→Discoverable Probeでチェックを付けた測色機が接続対象となるので覚えておくとよいだろう。

測色計の変更はOption内のChange Probeから行う。
Discoverable Probeでチェックをつけ、かつPCと接続された測色機に対し、順番に接続するか確認ウィンドウが出る。
Colourspaceの場合はProbe Optionで使用する測色機を選択、接続できるなど、UIも非常にわかりやすくなっている。

Manage Colour Spaceはビデオでも書いている通り、作成したターゲット色空間や計測済のデータを確認できる。
ただしターゲット色空間の編集はConvert Colour Spaceになるので覚えておこう。
Sourceが目標とする色空間、つまり作成したLUTで表示したい色空間だ。Destinationは現在の表示色空間だ。計測したBCSデータを選択しよう。
例えばICCの仕様を前提とするならば、EOTFに通常のべき乗ガンマ、色域はモニタネイティブであることが好ましい。
この場合Sourceにモニタネイティブのプライマリ、EOTFはガンマ2.2や2.4とする。Destinationには計測したモニタプロファイルデータ(BCS)を指定すれば良い。

Convertとあるように、色空間同士を指定することでテクニカルLUTを作成することも出来る。
例えば十分校正されたSDRモニタをHDRガンマで動作させたい場合、SourceにはHDR色空間(*)を、Destinationにはモニタの表示に対応した、例えばガンマ2.4のP3(D65)などの、べき乗ガンマとネイティブプライマリを設定する。
Limit LuminanceはDestinationに適用されるオプションだ。
例えば計測されたデータで95%を上限として使用したい、といった場合に使用する。
とくにHDRを取り扱う際に必要なので覚えておこう。

Convert Colour Spaceウィンドウ下部で演算モデルや色域外の処理を指定できる。
演算モデルはPeak Chromaが基本になるが、簡単に説明しておこう。
特に覚えておくとよいのがPeak ChromaとPeak Lumaだ。
Peak Chromaはその名の通り色度を最優先にし、Peak Lumaは取りうる最大輝度を優先する。
例えばx0=.315、y=0.341と指定した白色点に対し、RGBそれぞれ100で出力して計測した色度がx=0.322、y=0.330だったとしよう。
この場合目標とする白色点と乖離があるが、RGB全て100%でありRGBいずれかを強くする調整が出来ず、色度と輝度どちらを優先するかで対応が変わる。

色度を優先するなら、例えばR,G,B=92,100,95、といった形でRの出力を下げ、必要があればBも下げる必要がある。
しかし輝度としての最大値を優先するならRGBいずれの出力も下げてはならない。
Peak Chromaは前者の考えを採用するので、基本的にピーク輝度が低下する。
一方Peak Lumaでは高輝度側のRGBいずれかのチャンネルでクリップが生じる。明るさは確保できるがRGBいずれかが100%に近い表示に異常が生じるため、4K HDR anime channelではPeak Chromaを推奨する。
なお、Limit Luminanceを使用した場合は強制的にPeak Lumaになるので注意しておこう。。

HybridやMap Space、Fit Spaceについては詳細をLightillusionで確認できる。更に詳しく知りたい場合はそちらを参照すると良い。
いずれもより複雑な演算モデルになり、場合によってはより高精度なLUTを期待できる。
とはいえ、経験上グレースケールとEOTFは後述の1D LUT計算用のシートを使用したほうが良い結果が得られており、色度の補正もcubeの計測と3D LUT補正を複数回行った方が結果が遥かに優れる。
特にMap Spaceは演算に非常に時間がかかり、その割に結果が優れないことも多い印象がある。
手間はあれど正攻法で望むことが、結局は良い結果に近づくということだろう。

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