正しい画を求めて8⃣ メーカーはもっと仕事をしよう?

DispCalで彩度や色相を校正するLUTが作成出来た。
測定時に使用した1D校正と色相彩度補正LUT、これを組み合わせれば輝度マップ、グレースケール、色相彩度が補正されるはずだ。
LUTの合成は先程1D補正で行ったようにDaVinciで行える。
色相彩度補正→1D校正の順に適用し、一つのLUTとして出力する。

出力したLUTをDWM LUTで適用し、CCMXを取り直してからHCFRでグレースケールを測定しよう。
意外とグレースケールがずれていることに気づくだろう。
実のところ、DispCalも意外とグレースケールは合わせきらないのか、表示の安定性の問題か、ここでは結構なズレが生じることが多い。
とは言えこの程度のズレは先程の工程をもう一度取ることで簡単に対処出来る。
再びグレースケールを取り、LUTを補正する。補正したLUTを適用しCCMXを更新してから再び計測、必要があれば再度1D校正を行うことで十分な表示精度が得られるはずだ。

十分な表示精度が得られれば最後はマッピングを付与した1Dを作成する。一般的には1400cd/m2程度、必要に応じて2000cd/m2、4000cd/m2でクリップするLUTを設計すればよいだろう。

様々な高額モニタが校正機能や精度を謳い、企業だから金あるだろ?ボラせろや、としか思えない価格で販売されているが、果たしてそういったモニタは十分な表示能力や精度を持っているのだろうか。
それはWCGであることを考慮した等色関数で測色し、補正されたものだろうか。
残念ながらそれはNoと言わざるをえない。
それではなぜ未だにそんなことで問題を起こしているのだろうか。としか思わないからだ。

https://pro.sony/s3/2021/01/22153635/Monitor_Colormatching_v100_201222_E.pdf


勿論問題があり、その対策を必要に応じて取っていることは素晴らしいことだが、あれだけ高額な値段を取るのであれば、”そのような問題は一切ない”ことを保証するのが販売側として最低限の道理ではなかろうか。ましてや自社で校正サービスまで行っているのであれば、その程度のことは出来ていて当たり前、だろう。
それでなくてはなんのための400万円だ。

SONYはまだ良い。
EIZOなどどの程度その対応ができているのだろうか。
勿論Colourspaceなど外部の本物のプロフェッショナルにその辺任せます、というならばそれで良いが、ならば自らはまともな校正能力などない、というのもセットで公言すべきだろうと言わざるをえない。
それがあの価格を取る責任だと思うのだ。知らなかった、で済むのでは楽な商売だな、と言う他ない。
自社の開発チームはなんのためにそこにいるのだ?と言わざるをえない。

同時に、一般の民生品であってもこの程度のことは是非出来ていてほしいものである。
多くのモニタでHDRにおいて不適切なマッピングが施されているのを見る。
意外とスペックそのものは高いのに、それが適切に活かせないとはなんともったいない話だろう。
今回紹介したフローで再校正するだけで、スペックを適切に活かした好ましい表示をさせることが出来る。
たしかに、今回紹介したフローそのものは相応に時間もかかり、このフローを確立させるにはそれなりの知識も必要だ。
しかしメーカーの商品開発としてみれば、この程度の作業時間や知識は用意して当然の程度でしかない。
事実、Genuine HDR colourとして作成した校正LUTが、同じ機種であれば他の機体でも相応に使用できていることからわかるように、基本の画作りを的確にできることはユーザーにとって大きな利益になるはずだ。

個体ごとの誤差までは言わないが、すべてのHDRモニタはこの程度の事はできていてもらいたい。
それはHDRの普及を何より適切に後押ししてくれる筈だ。
Dolby Visionなど動的ガンマに依存した表示の適切かも取り組みとして行われているのは承知しているが、それが十分ではないことは知っている。
適切なマッピングがあれば動的ガンマなど必要ない(SONYなどはこの考えを支持)ことはわかっている。
大事なことは基礎なのである。

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