正しい画を求めて9⃣ 正解のない、白がくる

ここまで全部を読んだならば、あとは実践と経験、機材さえあれば即座にプロフェッショナルな校正を行うことが出来る・・・
と言いたいところであるが、実のところ、ここまで来たものにだけ、もうすぐ白が見える。永遠に合わない、白がくる。

永遠に合わないとはどういうことだろうか
一つは人の目は同じものなどないということだ。
LMS錐体の分布や数が違うことで、同じ色が見えているわけではない。
白は人によっては赤みがかり黄色がかり、青に寄っているかもしれない。
勿論そんなことは承知の上で、一定の基準として等色関数として最新のCIE2012-2モデルをこれまでのワークフローでは採用している。
これでメタメリック障害も克服できたはずである。

しかし、この2012モデルも実は十分ではなく、白においては少し青に寄ると言う報告がある。
勿論使用する分光光度計の分解能なども影響するであろう話ではあるが、現在使用できる最新モデルでも完全に解決していないのがこのメタメリック障害で、DispCalのフォーラムでも議論がかわされている。

ではこれ以上の精度を求める場合はどのようにすればよいだろうか。
一つ、現時点に取りうる手法において、明確で確実な方法を、Lightillusionが提唱している。
Lightillusionといえば非常に高度な校正システムであるColourspaceの開発/販売元だ。
そのLightillusionの提唱する方法を見てみよう。

それは知覚的カラーマッチングと呼ばれており、広色域モデルではないディスプレイをCIE1931-2でD65に校正し、その白と同じになるよう広色域モデルの白表示を合わせ、それを測定した値をオフセットとして定義するというものだ。

勿論方法としては理解できる。
等色モデルが現状使用できるものでもまだ合いきらない、ということからこれ以外に方法がない以上仕方ないことではある。
Colourspaceでこの方法を用いて校正を行うフローはLightillusionで紹介されているので、ではこの連載で行ったDispCalやHCFRでこの補正に近いことをするにはどのようにすればよいか、見てみよう。

といっても方法は簡単である。
DispCalは任意のWhitepointを設定することが出来、例えば6504Kや0.3127-0.3291という設定を6200Kなどより低い色温度を目標とさせる方法が一つ考えられる。
この際基準となる白となるよう調整されたD65光源として広色域ではないモニタを用意し、それとマッチするような色温度(座標)を定義するわけだ。
HCFRもAdvanced→Preference→Referenceで色温度を任意に設定出来る。
Change Whiteで任意の標準的な光源が選択でき、Custom設定ではxy座標も使用できるので必要があれば使用するとよいだろう。
HCFRではセンサー補正としてXYZの補正が選択できるので、そちらを用いても良いが、この機能はGenuine HDR Colourでも使用したことがないのでサポート対象外となる。

それでは実際に知覚的補正で白色点を変更して校正を取ってみよう。
まずはターゲットとなる白色点を定義する。
DispCalの白色点エディタの機能を使うと操作が楽なので今回はそれを使用してみよう。
細かい操作は映像で解説しているのでそちらに譲るが、注意としてこの方法では目視で白を判断することになるので、リファレンスを用意することが重要である。D65光源も良いが、例えば使用していない非広色域の携帯機器やモバイルモニタをD65に校正した白を表示させるのも一つである。

この方法で目的とする白の色度を計測すれば、それをターゲットの白色点とすることで好ましい白に校正を取ることが可能だ。
試験的に1Dを取らず、DispCalで白色点を変更して3Dを作成してみたが、非常に好ましい結果が得られた。
とはいえ輝度マップや僅かなRGBのズレは残るので、3D適用後に再度CCMXを作成し、HCFRから最適なマッピングとホワイトバランス補正を追加で行うことが好ましいだろう。
難点とすれば、D65相当に知覚的にあっていても、システムはそれをD65と扱わないことであろう。
DispCalやHCFRではこの補正は難しいと思うが、CCMXの中身を直接操作できれば対応することも可能ではないかと思う。
これはいずれテストしてみたい。

ここまでやればそのモニタの表示はプロフェッショナルの用いる水準にあると言って良い。
是非本来の表示で作品を楽しんで欲しい。

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