機動戦士ガンダムSoul 第9話「紅蓮の炎」
「3機のソウル反応。パイロットは出撃準備をして下さい!」
また、ユイちゃんの声が聞こえた。これで何度目だろう...
あれから、数度の実戦を経てブラッドフレーム烈火の操縦には慣れてきた。
でも、僕はどうしても『人殺し』にはなれなかった。
市街地に出撃すると重厚な装甲と異様な雰囲気を持つ漆黒のブラッドフレームが一機。隠れもせず、僕達を待ち構えていた。
―――他のブラッドフレームとは違う。
それが、初めて紅蓮を見た時の僕の印象だった。いつも通り、メグミが水月の鞭を使い手足を拘束しようとする。
しかし、そのブラッドフレームから炎が吹き上げられると一瞬で焼き切られてしまった。
「何だコイツ!?」
リュウは、驚きながらも‘疾風’の刃で攻撃した。しかし、その刃は‘紅蓮’の腕を引き裂く事が出来ずに装甲の表面で止まってしまった。
「ザコどもが...目障りだ。消えろ!」
紅蓮が右腕を上げたかと思うと突然、巨大な火柱が上がり、僕らは吹き飛ばされた。
どれくらいの時が過ぎたのだろうか。僕が目を開けると、そこは一面荒野だった。何が起こったのか分からなかったが周りを見渡した僕は愕然とした。紅蓮の周囲10kmほどに巨大なクレーターが出来ており高層ビルなどは影も形も無くなっていた。そこで生きていた全ての人々と共に...
「お前ら...生きてるか?」
通信が聞こえた。リュウの声だ。
「なんとか。」僕はそう応えるのが、やっとだった。
「俺達の認識は間違っていた。3機のブラッドフレームがいるんじゃない。この黒い奴が3機分のソウルを持ってやがるんだ...」
コクピットのモニターで周囲を見回すと疾風と水月は瓦礫に埋もれていた。
「メグミ、動けそうか?」
「無理ね。水月は動けないわ。」
「そうか、俺の疾風もだ。」
少しの間、通信が途絶えた。しかし
「マサキ、聞こえるか?」とリュウが通信で話しかけてきた。
「お前の烈火は後方にいたから、まだ動けるはずだ。このまま全員殺される事はない。お前だけでも逃げろ!」
リュウの言葉を理解できなかった僕はしばらく呆然としていた。
「マサキ!聞こえているのか?」
「あぁ、聞こえてる。けど、そんな事できるわけないだろ!」と僕は声を荒げ、強く否定した。
「何だと!?このバカ...」
「マサキ、逃げて!」とメグミが通信に割り込む。
「貴方がいても意味は無いわ。ここはリュウの言う通り、撤退すべきよ。それに私...マサキには死んで欲しくないの。」
「メグミ...」
動けないリュウとメグミを置いて逃げるのがこの状況では一番賢い生き方かもしれない。それに、僕が紅蓮と戦っても勝ち目はない。
でも...
―――二人を置いて逃げるなんて、僕には出来ない!
僕はずっと戦いを拒んでいた。人を殺して生き延びるくらいなら死んだ方がいい。
そんな考え方だった。でも、そんな考え方じゃ、何も...
―――何も守れないじゃないか!
僕は戦う覚悟を決めると、左右の操縦桿を力強く引きブラッドフレーム烈火を立ち上がらせた。
(第10話 『マサキ』 に続く)
子供の頃からアニメが好きで、そのまま大きくなった40代です。(*´∀`)♪懐かしいアニメから最新のアニメまで、何でも見てます。