機動戦士ガンダムSoul 第10話「マサキ」
―――この状況で、勝算は全くない。
でも、やれるだけの事をやらないと。
僕は、‘烈火’の腰に装備されているナイフを抜き、構えた。
「うぁぁぁぁ!」
そう叫びながら、僕は紅蓮に斬りかかった。
でも...全く当たらない。それどころか掠りもしない。しばらく避けるだけだった紅蓮だったが烈火から距離を空けると、ソウルの炎で剣を作り出した。
「ブラッドフレームでの戦い方も知らんのか?身の程知らずが!」
紅蓮のパイロットが、そう言ったかと思うと一瞬で烈火の両腕は斬り落とされてしまった。バランスを失い頭から崩れ落ちる烈火。
あまりの衝撃に、僕は気を失いそうになった。何度も左右の操縦桿を引き、立ち上がらせようとしたが両腕を失った烈火をうまく立ち上がらせる事が出来なかった。
少しずつ近付いてきた紅蓮が烈火の頭部を踏みつける。必死に抗っても、今の状態では跳ねのける事も出来なかった。
「もう抵抗すら出来ないか。脆弱な奴だ。」と狂気に満ちた声が頭に響く。
殺される―――そう思った。
しかし、紅蓮は動けなくなった烈火に背を向けると少しずつ疾風と水月に近付いてゆく。
「自分の力量もわきまえぬ愚か者め。貴様はそこで仲間が殺されるのを見ているがいい。」
紅蓮のパイロットは、そう言いながらメグミの乗る水月のコクピットに狙いを定めた。
「やめてくれ...」と消え入りそうな声で、僕は言った。
「ククク...死ね。」
『逃げて……マサキ……』
消え入りそうなメグミの声が聞こえた。
その言葉を聞いた僕は「やめろぉぉ!」と声の限りに叫んだ。目の前の風景が歪んでゆく。
―――僕の中で何かが砕けた気がした。
「...おぉお」
烈火の各部に取り付けられた水晶体が激しく反応し、全身から炎が噴き出す。
自分自身を燃やし尽くすほど業火を上げる
ブラッドフレーム烈火。
血がたぎり、身体が燃えるようだ。僕は全身に炎をまとった状態の烈火を背中のブースターで加速し、紅蓮に体当たりさせた!
限界以上の炎をまとった烈火の全身全霊を込めた一撃。しかし、紅蓮はそれを片手で受け止めた。
―――ここまでか!?
誰もがそう思った時、僕は更に炎を噴き出させ、そのまま紅蓮を後方のビルに叩きつけた!
ドォォオン!!
轟音が鳴り響いた。しばらく沈黙の時間が流れたが「...ほぅ。面白い小僧だ。」と言う声が聞こえた。
「良かろう。生かしておいてやる。今より強くなって、我が紅蓮の前に立ち塞がるがいい。」
そう言い残し、漆黒のブラッドフレーム紅蓮は去っていった。
烈火を覆っていた炎が少しずつ消えてゆく。
「これで良かったんだ...」
僕はそう呟いた。全身の力が抜けていく。
もう何も聞こえない...
目の前には、ただ闇だけが広がっていった。
(第11話 『新たな力』 に続く)
子供の頃からアニメが好きで、そのまま大きくなった40代です。(*´∀`)♪懐かしいアニメから最新のアニメまで、何でも見てます。