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「お隣の天使様」③英題の秀逸さ 補遺 もう一つの英題もすばらしい

前回「お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件」の英題について述べたのですが、1つ気になっていることがありました。
「お隣の天使様」を検索すると、英文タイトルとしてこのようなものも引っかかってきました。

“The Angel Next Door Spoils Me Rotten"

これはAmazonで販売されている本作の英題として使われていることが分かりました。そのため、「お隣の天使様」の正式な英題が2つある、という状態になっているようです。

これを訳すと、だいたいこのようなものが返ってきます。

「隣の天使が私を腐らせる」

このように解釈すると、まさに「駄目人間にされる」という意味合いが濃くなります。

ところが。
この英題ももう一つの意味に取ることができるのです。
意味としてはinformalな(くだけている)ものとなりますが、rottenをウィズダム英和辞典で引くと、以下の句がピックアップされています。

spoil [fancy] A rotten   A〈人〉をすごく甘やかす[〘英〙 Aにほれ込む].

ウィズダム英和辞典

これも英々辞典で引いてみると、rottenは以下の意味を為すとのことです。

to an extreme degree; very much

Oxford Dictionary of English

「ひどく、ものすごく、とても」という副詞になっています。
ですので、「お隣の天使様」のこの場合の英文も、以下のような意味が浮かび上がってきます。

「隣の天使が私を甘やかす」

「甘やかす」というのは「甘えさせる」よりも腐らせる、ダメにする意味合いが強いですが、ただ「腐らせる」「ダメにする」ということとは別のニュアンスを持っていることが分かります。

そしてもう一つ。
この英文タイトルでは、前回紹介した

She is the neighbor Angel, I am spoilt by her. 

にはない特徴を持っています。
ここでSheを使ってしまうと、「隣の天使」の性別は女性になり、必然的に真昼を指すことになります。
しかし,この英文

The Angel Next Door Spoils Me Rotten

これを使う場合、Angelの性別が規定されないため、真昼が天使なのか、周が天使なのか決められなくなります。
このように曖昧にしてみせることにより、本作「お隣の天使様」におけるそれぞれの登場人物の役割が流動的になっていることが表現できる英文になっているのです。

いやはや。
辞書は引いてみるものです。

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