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ゲーム制作のアートとデザインの話(前編)(5/18追記)

こんにちは~
アニマルウィップの鮃です。noteの記事を書くのは実は自己紹介以来?です。

今回、noteさんの学生ボードゲーム企画(詳しくはこちら)の目標であった21春ゲムマ出展を達成し、ひと段落となったので振り返りも兼ねて、note記事を書くことにしました。

そもそもこの学生ボードゲーム企画の意図として、ボードゲームを作ったことがない学生が実際にゲームを作って売ることで、ゲーム作りってハードルが低いんだよ~って言いたい!というのがあります。

テーマやルール作りの方は配信やnoteの議事録で触れられている通りなのですが、あんまり触れられなかった部分があります。皆さんは何かわかりますか?




まあ、タイトルにあるので分かりますね。アートとデザインについてです。ここら辺、配信するには地味だし、ちょっと時間がかかりすぎる作業ですし……
でも、アートワークってゲーム作りをする上ではとっても重要な部分だと思いませんか!?

ということで、今回制作した『ギリ、義理チョコ』コンポーネントのデザインをほとんど担当した鮃が、これからの記事でゲームを構成するコンポーネント説明書・箱の話を、それからゲームマーケットの宣伝のために作ったゲムマカタログ・ポスターとフライヤーの話をしていきます〜。


なので、この記事はゲームを作りたい/作っている、もしくはゲーム制作の裏側の話を聞いてみたい!という方向けの記事になっています

今回はコンポーネント編!(長いです!!!)

あと、最初に注意事項です。この記事はあくまで鮃が、今回アニマルウィップで制作した『ギリ、義理チョコ』ではこうしたよ~というもので、必ずこうすればうまくいくといったものではありません。
デザインやアートワークで困ったら自分の持っているボードゲームやボドゲカフェに行って実際に手に取って「いろんなボードゲームがどんなデザインの工夫をしているか?」を確認してみるのも一つの方法です。実際、鮃も「わかんね~」ってなるたび自室のボドゲ棚をひっくり返してました。

コンポーネントのデザインの役割

コンポーネントのデザインは、ゲームしやすさ、直感的かどうかに関わります。かなり重要です。

まず、コンポーネントを作るにあたって、その方法は大まかに2種類あります。外注と内部で作るの二択です。
できることなら内部で作っちゃうのがいいと思います。内部で作る利点として、すでにルールについて理解しているという点と、たとえば「ルールをやっぱり変えたい!」となった時にリテイクがしやすいという点があります。
まあ、もちろんリテイクについてはあんまりない方がいいんですが……
外注するときの注意点ですが、一番は依頼するボードゲームやシステムについて理解してもらうことだと思います。デザインの目標はストレスなくゲームをできるようにすることが第一なので、この理解が足りないと、そもそもデザインできないです。

今回作った『ギリ、義理チョコ』はカードが唯一のコンポーネントなので、カードについての話が中心です。
今回はオンラインで制作をして、テストプレイもほとんどオンラインでした。なので、実際にプレイするとどんな感じになるのか?という視点は持つように心がけていました。

素案を作る

ルールがおおよそ決まり、コンポーネントに必要そうな要素がだいたい揃ってきたらカードの素案をつくります。
この時にめちゃくちゃ便利なのが、4コマメモ帳

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これの1コマに1枚のカードに入れたい情報とだいたいの位置を載っけていきます。

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この段階で書くカードの素案は、「とりあえず自分で見て分かれば良し!」くらいの雑さでOKです!

素案を作る段階で気をつけたことですが、大まかに2つです。

①手に持つカードには端にも情報を載せる
手にカードを持つときカードの中央の部分は重なって見えなくなってしまいます。
端に情報を載せておくと手札の確認がしやすいです。なるべく両方に書いておくのが望ましいです。ただ、それで端がごちゃごちゃしてしまったら見づらくなって本末転倒です。『ギリ、義理チョコ』の場合は手札(プレゼントカード)にはゲームで重要な情報としては数字と色しかなかったので、端に情報を書いてもシンプルにデザインすることができました。

②どの情報が大事なのかをはっきりさせる
たとえば、プレゼントカードの重要な情報は数字と色で、フレーバーテキストはあまり重要ではありません……そうしたら、数字と色をなるべく目立たせ、フレーバーテキストは控えめに端っこに書いておくくらいのバランスがいいです。

素案を元にデータ制作

素案ができたらそれを参考に、アドビのイラストレーターでデータを作ります。これはai形式で入稿したためなので、印刷会社に「どの形式で入稿できますか?」と聞いてみてその形式にあったものを作りましょう。たとえばPDFなどで入稿できるならカードをパワーポイントなどで、説明書をワードなどで作ってPDFにしてもいいですしね。

さてさて、このデータ制作の段階で気をつけたことですが、今度は3つあります。

①世界観を示す
これはコンポーネントの重要な役割の一つですよね!ボードゲームの世界観はルール説明とコンポーネントでしか表現できないですし、実際に目に見える形をしているのはコンポーネントだけです。
アブストラクトじゃない限り、だいたいのゲームには世界観というものがあります。『ギリ、義理チョコ』の場合は、「学校生活」というイメージを中心にカードを作っていきました。
たとえば、女の子カードのオモテ面はノートと付箋のイメージ、マドンナカードのオモテ面は学校の黒板のイメージです(個人的に女の子カードのオモテ面はお気に入りです)。

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他にも、プレゼントカードのウラ面はそのまま「プレゼント」をイメージして、包装紙のような地にリボンをつけています。

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ちなみにボツになったウラ面案にこんなものがあります。

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モノクロの記号がない無地のバージョンです。これのボツ理由として、白っぽいウラ面はオモテ面が透ける場合もある(もちろん印刷の加減やオモテ面の色の濃さなども関係してくるらしいですが)ということで、一応カムフラージュのために記号を書き入れました。

②違いをわかりやすくする
これなんですが、実はさっきまで言っていたこととほぼ真逆のことを言っています。「世界観を示す」というのは言ってしまえば「ゲーム全体として統一感を持たせる」ということなので……
つまりは「ゲーム全体の統一感」は保ちながら「違いがあるところは、はっきり違いがわかるようにする」ということになります。これがはっきりしていないとプレイミスなどに繋がってきます。

『ギリ、義理チョコ』の場合は、カードのみで構成されているため、役割の違う3種類のカード(プレゼントカード・女の子カード・マドンナカード)がありました。また、そのうちのプレゼントカードには4つの種類があります。

『ギリ、義理チョコ』はカードを机の上に並べていくという性質上、3種類のカードは違いをはっきりさせないと、机の上で見失います
なので、プレゼントカードは薄い色を地の色にし白枠をつけ、女の子カードはほぼ白地枠なし、マドンナカードは濃い緑を地枠なしにすることで区別をしました。カードの向きもマドンナカードは横向きで違いをつけています。

ちなみに、横向きにすることで区別を作る場合、横向きのカードは手札以外のものにしましょう。単純に横向きカードって持ちづらいです。

あと、たとえば机に置くものとして個人ボードと共通ボードというようにボードが複数種類あるなら、サイズや形を変えるというのも違いをわかりやすくする方法のひとつです。チップやタイルなどもサイズや形を変えることで簡単に役割が違うということを表現できると思います。

それから、プレゼントカードには4つ種類があると言いましたが、その違いは色を分けることで区別しています。

色選びのコツですが……

12色相環に頼っちゃいましょう~。

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12色相環から3色必要なら4つ飛ばしで、4色必要なら3つ飛ばしで色を選べば、別系統の色になるので、簡単に違う色を選べる上に、見間違いを少なくすることができます

ちなみにですが、もしも5色の場合、鮃なら4色+(黒or白)にします。というのも5色以上を12色相環で選ぼうとすると結構同系の色になってしまうので、違いがわかりにくくなってしまうからです。

また、色の見間違いを防ぐには色と対応した記号をつけるのも重要です。
といってもその記号が見間違えやすいものになってしまっては本末転倒なので、記号も違いの分かりやすいものを採用しましょう。ギザギザと丸っこいの、みたいな感じで作っていくといいです。試行錯誤の段階で気付いたのですが、五角形よりも角がある多角形は違いが分かりづらくなりました
世界観を意識した記号(アイコンに近い?)をつけるのも手だと思います。

③わかりやすいアイコンをつける
一番大変だったかもしれないです。アイコン。

アイコンの存在意義は、ルールを簡潔に表して説明書をいちいち確認するというストレスをなくすという点にあります。それから、『ギリ、義理チョコ』ではアイコンを女の子カードとマドンナカードにつけたのですが、この2種類のカードはずっとテーブルの上に置いてあるカードです。
ここにもしアイコンがなくて文字でのルールの説明のみだったら、ルールを確認したくなったらカードに顔を近づけるか、「ちょっといい?」って言ってカードを机から取って自分の方に近づけるかの二択です。

「大きなアイコンでルールを示すことで、テーブルのどこにいても確認できるようにする」というのもアイコンの役割の一つです。
ルールをわかりやすく表現するために特に気をつけたのは、「なるべく推察できるようにする!」というところです。

これは『ギリ、義理チョコ』で使ったアイコンとその意味の一覧です。

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同じアイコンが何回か出てきます。同じアイコンは別の場所に出てきた際も同じ意味として使うことで、もしも初めて見るアイコンでも「こういうルールなんじゃないか?」と推察がしやすいように気をつけています。例えば、「カードの左上の青い×」は全て「条件を満たすカードが配置できない」という意味にしています。
逆に言えば、違う意味のものは違うアイコンにしています。たとえば、アイコンに使われる数字には、「学年(ラウンド数)」「プレゼントカードに書かれている数字」「前のプレゼントカードとの数字の差」「順位」など、それぞれ違う意味があります。同じ「数字」というくくりでもアイコンにする際はなるべく違う形で表すことで、この違う意味の混同を防いでいます

ある程度いい感じにデータができあがったら、原寸でカラー印刷をしてみたほうがいいです絶対。

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実際、最初にオフラインでやったテストプレイでは、「なんか、数字とか文字が見にくい……」ってなりました。
その後も、試作して「いい感じじゃない?」ってなったらサークルメンバーに確認、時間があれば印刷をして確認というのを繰り返して完成です。

*番外・イラストの頼み方

『ギリ、義理チョコ』のコンポーネントはほとんど鮃がデザインしているのですが、唯一女の子のイラストのみ外注しています(ちなみにですが、鮃の知人に依頼しました)。ということで、コンポーネント編の最後にイラストの頼み方についてお話しします。

最初にイラストの外注のメリットとして、質の高さがあります。そら絵を生業にしている人に頼むので質の保証になります(ただ、それは他のデザインの部分で死んでしまうこともあるので内部でデザインする場合はイラストに見合う質を目指しましょう)。
それから、内部にイラストを描ける人がいる場合でもその人の苦手分野を得意な人に描いてもらえます。たとえば女の子のキャラクターを描ける人が内部にいたとしても、電車のイラストが欲しいとなったら、なるべくそういった分野に特化した人に頼みたいですよね?それができるのが外注の利点です。

逆にデメリットとしてはお金がかかるという点と、ブランディングがしづらいという点があります。お金がかかるのは仕方ないです。それが生業ですから。
ブランディングについてですが、たとえば、同じ絵柄のイラストでボードゲームを出し続けていくと、「あっ、あのサークルさんの絵だ!」というように、ファンがイラストで反応してくれるようになることがあります。毎回外注する際に同じイラストレーターさんに頼めるとは限りません。そのため、内部にイラストを描ける人材がいない限りはこの形でブランディングをするのは難しいと言えるでしょう。
……前置きが長くなりました。

さてイラストを外注するとなったら、まずイラストレーターさんを探します。方法としては、コミッションサービスやSNSなどで探すか、知人に頼むかの2パターンに大きく分かれると思います。
特にコミッションサービスやSNSではポートフォリオを載せている方が多いので、それを見ながら「おっこれは!」という人を見つけましょう。また、どれくらいの料金・納期になるか?というのも書いてあることが多いので、参考にしましょう。

依頼する人の候補をいくつか絞り込んだら、依頼をしましょう。依頼の時に必要なのは、主に3つです。

どんなイラストが欲しいのか?
どんな場面で使うのか?
いつまでにイラストが欲しいのか?

依頼内容は最大限詳細な方がいいです。人物ならポーズや髪型やイメージカラーなど。プロフィールがあるならそれを伝えてみるのもいいと思います。あと、なるべく依頼するボードゲームの概要も伝えましょう。世界観を共有することで認識のズレを減らすことは重要です。
それから、コミッションなどで探した場合は、どの絵を見て依頼しようと思ったのかを伝えると、求められている絵柄が伝わりやすいらしいです。
【5/18追記】
書くのをすっかり忘れていたので、付け足します。イラストを外注するときには必ず、形式とサイズの指定をしましょう。
形式についてですが、Adobeのイラストレーターやフォトショップでデータ作成している場合はそれに合わせたaiまたはpsdなど、背景が透過された状態で保存でき印刷に適しているpngなどがオススメです。もちろん、これに関してはイラストを描いていただく方の都合もあるので要相談です。
サイズについてですが、もちろん容量で指定してもいいですが、解像度(dpi)で指定してもいいと思います(解像度が高いほど容量が大きくなります)。だいたい300~350dpi以上になれば高画質なので、そのラインが目安だと思います。

使う場面についてですが、特にボードゲームのイラストは商用利用ということになるので、それが可能か?という点や、また、ボードゲームのコンポーネント以外の場面でも使いたいならそれも確認しましょう。イラストは宣伝の時に武器にしたいですし、Twitterやフライヤーなどの配布物などに使って良いかの確認もしときたいですよね。

ボードゲームのイラストはおそらくですが、複数枚依頼することが多いと思います。もちろん、そうしたら一枚ぶんの納期よりも長くなります。印刷会社への入稿の時期から逆算して、納期を計算しましょう。コミッションサービスで探す場合は原則依頼した順番で納入するので、相手の抱えている依頼の状況によっては納期が間に合わない……ということもあります。
コミッションサービスなどの場合は、料金が設定してありますが、SNSから直接依頼する場合や、知人に頼む際は料金の話もしましょう。いくらいつどのように支払うのか?です。
お金関係は揉め事の要因になりかねないので……

「でも自分でイラスト描けないしな~」ってなっていても、うまくイラストを頼む方法さえ知っていれば、気軽にボドゲ制作できますよ!(多分)

最後に

今回はコンポーネント編ということで、ここまでです。長い文章になってしまいましたが、読んでくださってありがとうございます。
後編では、説明書と箱、ゲームマーケットで出展する際に重要なカタログやポスター・フライヤーの話をしようと思っています。



執筆 鮃

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