【後半】イギリスと日本の獣医学・動物福祉のちがいって?獣医さんに聞いてみました!
後編の今回は、イギリスと日本で動物福祉の認識がどう違うのか、これからどう広がっていくのか?について、そして大谷さんの動物福祉への想いも伺いました。
ぜひ、最後までご覧ください!
前編はこちら↓↓
●イギリスは動物福祉が進んでいると聞きますが、実際どうなんでしょう?
ぜひ詳しく教えてください!
イギリスに住んでいて感じるのは、動物に対する意識が違うなと感じますね。動物福祉という概念が浸透していて、たとえば、スーパーの商品も動物福祉認定ラベルがほぼ全ての商品に付いています。
消費者はそういった商品は割高でも買いますし、法の整備も進んでいます。
ただ、一般の方が5つの自由(動物福祉を考える上で重要な5つの決まりごと)を理解しているかは疑問に思うときがあります。イギリスの義務教育の中に動物福祉という項目があるわけではないですし…。
イギリスでの動物福祉が発展する背景として、ケージで飼育されている鶏のものではなく、フリーレンジ(放し飼い)の鶏の卵を置けという運動がありましたが、それが本当に動物にとって良いものなのかは分からないまま、消費者の中にはフリーレンジだから素晴らしい!と思っている人もいるようです。
ペットの動物福祉の考え方でいうと、猫の飼い方にも特徴があるかと思います。日本では完全室内飼育を推奨する流れにありますが、イギリスでは、猫がその猫らしい行動をして一生を終えることを良しとしている考え方があって、7割以上の飼い主は猫を外に出すとされています。「その動物らしく、その個らしく」というのを大事にしていると感じました。
●特にどんなところが違うと思いますか?
たとえば、日本では動物に病気があったり介護が必要になったときも、長く生きることを良しとする傾向があるように感じます。イギリスでは、動物福祉の観点から見て苦痛を長引かせるのは良くないという考えから、例えば治癒の見込みのない病気が分かった時点など、日本と比べると早い段階で安楽死を行うことが特徴だと感じました。
どちらがよいとは言えませんが、個人的な日本人の感覚では、イギリスの安楽死への決断は早すぎると感じることもあります。日本は長生きを目指して治療をがんばる分、病気や治療の長期的な記録を残すことができます。そういうデータの蓄積も、動物福祉の向上という点では大切ですよね。
●なるほど。その視点は意外でした。
イギリスに限らず欧州は動物福祉が進んでいてすごい!日本は遅れてる!と言われがちで、実際に遅れている部分は大きいのですが、個人的には、イギリスにもまだまだ課題があると思っています。
一方で、さきほどの安楽死の考え方でもそうですが、動物を大切に思う愛護の気持ちがベースになっているからこそできる動物福祉もあるのではないかと最近は思っています。「良い福祉」の形は、国や文化によって違うのかもしれないですね。
ただ、イギリスのように、動物福祉に立脚して苦痛を取り除くという観点から、日本も安楽死については獣医師が積極的に考え、取り組んでいくことは必要だと思っています。
●それでは最後に、大谷さんは今後どんなことを伝えていきたいですか?
動物福祉の考え方を正しく伝えたいですね。日本では動物愛護との混同がよくあるので…。動物の状態を評価するうえで、科学的根拠は大切です。エゴではなく、客観的に判断しなくてはなりません。
でも私は、動物愛護の考え方って美しいと思っているんです。動物と関わる上で、動物を大切にする気持ちも、きっと大事な要素ではないかなと。そういう意味では、日本はどこの国よりも良い動物福祉の形ができるのではと思っています。
そして、今回お話ししたことに加えて、イギリスで長期間生活したからこそ分かったこと、感じたことを伝えていきたいと思っています。
イギリスもパーフェクトではなく、いろいろな課題があって、実際はこうだ、というのを伝えていくのが、このように海外に身を置かせていただいている者の役割だと考えています。
イギリスの良いところ、まだまだなところ、
日本の良いところ、まだまだなところ、
両者を比べながら中立的に俯瞰できるというのが、
サイエンスコミュニケーションを学んできた自分の強みのような気がします。日本とイギリスの良いとこどりができると良いなと思います。
●大谷さん、インタビューを快く受けてくださりありがとうございました!
今回の記事はここまで。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
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