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第13夜 サーカスのどうぶつたち

今回は2022年最後の開催!

サーカスに登場する動物から、どんなトピックを扱おうか考えていきました。
今回は、よく問題として扱われる動物の飼育方法やトレーニングの問題といったアプローチではなく、ちょっと違った視点で参加者のみなさんとお話しすることにしました。

1.サーカスって、なんだろう?

まずは、そもそもサーカスとはどのような定義なのかを共有しました。

辞書の意味では、「高度な熟練による人間と動物の曲芸などで構成される見せ物」とあります。人間と動物の曲芸とあるので、動物も重要な要素と見なされていることが分かります。

そして、見せ物という言葉も出てきました。これはどういう意味でしょうか?
辞書で調べてみると、「珍しい芸能、珍品珍獣、からくりなどを見せて金銭を取る興行」と出てきます。芸を披露して、楽しんでもらった対価としてお金を得る商売のことですね。見て楽しむ娯楽と言えます。

ここで、動物を使った娯楽にはどんなものがあるかを見てみましょう。
意外と多くありますね。

私たちの過去会で取り上げた、猿回しやゲーム(金魚すくいやクレーンゲームなど)も娯楽に含まれます。また、この中にはないですが、動物カフェも「ふれあい」が娯楽と考えると当てはまるかもしれません。

今回のテーマであるサーカスについて、業種はどのように分類されるのかも見てみましょう。総務省の業種一覧によると、サーカスは「文化芸能(サービス業・専門職)」という分類になるようです。

ここで比較として、動物園水族館をみてみると、「学校・趣味教室・図書館」に分類されています。動物園水族館でも動物ショーはおこなわれていますが、サーカスとは業種が違っていることが分かります。

しかし、ここで疑問が生まれます。

2.サーカスと動物園水族館って、どこが違う?

動物を「見せて」「楽しませてくれる」サーカスと動物園水族館。していることは同じに思えるけれど、何がどう違うのでしょうか?

参加者のみなさんからは、こういった意見をいただきました。
・動物園水族館は動物福祉に配慮していると思う
・サーカスは楽しむだけだけど、動物園水族館は保全もしている
・娯楽としてだったら同じだと思う

動物園水族館にも、「レクリエーション」という役割があります。
日本動物園水族館協会でも、動物園水族館には種の保存、教育・環境教育、調査・研究、レクリエーションの4つの役割があると明記しています。

動物園水族館でいうレクリエーションは、公園のような意味合いを持っており、みんなで訪れて心を休める場所として機能しています。また、生き物の持つ特徴やユニークさを知って、見て楽しむ、という面もあるかもしれません。

最近は、従来のような動物ショーを行わない園も多くなってきました。また、動物に指示を出して従わせるという意味では同じですが、治療や日々の健康管理のためのトレーニング(ハズバンダリートレーニング)を見せるという園が増えています。

しかし、戦前、戦後しばらくは動物園も利益をあげることに注力し、飼育動物を見せ物のように扱っていました。
その一例として動物園で飼育されていたチンパンジーのリタを紹介しました。
大阪の天王寺動物園でかつて飼育されていたメスのチンパンジー「リタ」は、一緒に暮らしていたオスのロイドと共に人気を博していました。

リタはまるで人間のように芸をしたり食事をしたりすることで、多くのファンがつきました。リタを見るためにたくさんの人々が動物園を訪れ、ファンからは多くの服や人形などが送られました。戦争が始まると、リタとロイドに軍服を着せて、戦意高揚のために利用させたという悲しい過去があります。

ここまで共有したところで、参加者のみなさんに質問をしました。

3.そもそもなぜ、動物を見て面白いと思うのか?「面白い」の正体はなに?

サーカスの動物たちやリタの例のように、動物に人間らしい仕草をさせることが、なぜ人気なのでしょうか?
擬人化はよくないと言うけれど、何がどういけないのでしょうか?
また、動物園との比較で、動物園の動物の中には名前のついた個体にファンがついているけれど、これはどういう感情なのでしょうか?

参加者のみなさんからは、こういった意見が出ました。
・人間は社会性の高い動物で、インドのカースト制度のように序列をつけたがる生き物なんだと思う。弱いものを下に見たい、支配したいという本能があるのかも
・絵本やアニメで、たくさん動物が擬人化されているので子供の頃から慣れていると思う。

最後に、このテーマについて話し合いました。

4. 動物を使ったサーカスはどうなっていく?

見て楽しむ娯楽であるサーカスや動物園水族館は、これからどうなっていくでしょうか?
また、どうなっていくべきでしょうか?

参加者のみなさんと一緒に考えていき、それぞれ違った意見が出ました。
・娯楽目的の動物利用はなくなるべき。
・教育が大切だと思う。
・今すぐには無くならないと思う。サーカスも今と違った形で、動物を見せる方法になると良い。

5.むすび

今回はサーカスの動物について、少し違った角度から考えていきました。

サーカスは時代ごとに影響を受け、いろいろなものを見せる産業として成立してきました。日本だけなく、世界中で行われているサーカスでの動物利用は、私たちが動物とどのように接したいか、付き合っていきたいかで、今後変わっていくことでしょう。

でも、そもそも動物を見ることで感じる面白さとは何なのでしょうか。
動物を使用した娯楽は、人間が動物を支配したいという欲望の現れのようにも思えます。この「支配したい」という感情をどう昇華させるのか、どういった方向に向かわせるのかが鍵となるのではないでしょうか。

今後、サーカスに関しても、比較で挙げた動物園に関しても、人と動物双方にとって良い方向に向かうよう、考え、声を上げていきたいですね。

6.次回の掲載予告

次回は
『第14夜 Life with ネコ展を見て考えた猫との共生』の内容を掲載します。

どうぞお楽しみに!

参考文献
・コトバンク
総務省準拠 業種一覧
千葉県‐動物取扱業について
動物園における見世物性の再考
日本の動物園来園者の動物観に関する研究
人と動物の間の社会的感情としての擬人化
動物園における person としての動物 「個」であることと「擬人化」の差異に着目して
サーカス―動物離れが進む興行
(公社)日本動物園水族館協会の4つの役割
天王寺動物園「なきごえ」WEB版


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