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【アニ研漫画紹介】#2 そして今から、地球を動かす 『チ。一地球の運動について一』【国士舘アニ研ブログ】
こんにちは、あねもねです。
運営にことわることなく【アニ研漫画紹介】シリーズを始めまして本文で第2回目です。このまま独走します。
今回ご紹介させていただくのは魚豊先生の『チ。-地球の運動について-』です。前回に続いて有名作品ですね。アニ研ならもっとマニアックなの知らないのかって感じはしますがそっと目をお閉じください。
ではそろそろ本編に入りましょう。
閉じた目をお開けください。
概要、舞台設定
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まずはチ。の世界観や舞台設定のお話。
本作の舞台は15世紀のヨーロッパ。
C教という宗教が広く信仰されており、それらの勢力は教えに背く人々-異端者-の審問を行っていました。C教ではいわゆる「天動説」によって世界は回っているとされ、それ以外の思想は神に反するものと厳しく罰せられていました。
そんな中で、主人公*たちは「地動説」への好奇心や自らの野望のために研究を進めます。
*主人公:本作では主人公がコロコロ変わります。人が変わり生い立ちが、環境が、立場が変わっていくのですが、一貫して彼らの行動の芯には地動説の証明があります。純粋に地動説を研究したいもの、その研究で自分を高めるもの、利用するもの。などなど、様々な生き方や思想を通じて証明は進んでいきます。
むしろ「地動説」が主人公と言っていい。
表情描写から読む感情
-その真っ直ぐさと受け入れやすさ-
本作の描写の凄さは真っ直ぐさだと思います。
表情の描写はさすが漫画家先生といった感じがします。しかし、それ以上にとても読みやすくわかりやすいものでもあります。
表情はその人の感情を描写するには欠かせません。そしてそれらの優れた表現を見た読者は「精巧に」「リアルに」描かれていることに対して絶賛し"表現がすごい"と感じることが多いでしょう。没入感や感情移入に通ずるものです。
上述した通り本作の惹き付けられるポイントは、真っ直ぐさです。人物の顔を見た時にパッとひとつの強い感情を認識できるところにあります。
前回紹介した血の轍を例に比較して考えてみましょうか。血の轍でもチ。でも表情描写ではひとつの表情から色んな感情を読み取る(予測)できる点は共通しています。この2作品の相違点は描写の真っ直ぐさでしょうか。血の轍はとてもリアルであり自然寄りでありながら"作られている巧妙さ"があり、それが読者を感情の沼に引き込んできます。チ。の表情描写は比較的真っ直ぐでまず第1に驚きや嬉しさの感情が伝わってきてから、汗などの細かな描写で反面こう思ってるかもという第2が伝わってくるという具合でしょうか。
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こちらは前回紹介した血の轍。ママのママらしさもあり、どこかママらしくない表情。優しさやからかいの笑みとなにか思惑がありそうな目元。表情は読み取れますが感情を読み取ろうとすると難しいです。
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こちらはチ。の主人公の1人。異端者に連れられ星の観測に来たシーン。
まず感動や驚きという表情が第一に来ますよね。それから汗や目元の影などを細かく見ると、"異端者と一緒に星を見てる"ということへの焦りや緊張みたいな感情が予想できます。
まぁ、血の轍が結構特殊な部分も多いので、こちらと比べてしまうのは少々極端かもしれません。しかし、それほどチ。は真っ直ぐ描写されているように感じますし、もっとも"漫画的"のように思います。
複雑な感情を自然に描くことも技術であり必要なことですが、真っ直ぐ感情を描写して相手に伝えることも普通は難しいものです。
結構グロい...でも惹き込まれる描写
本作には異端者を罰する描写が度々登場します。そして軒並み残酷です。爪を剥ぐ・口を裂く・歯を抜く・火刑に処すなど、なかなかです。これだけ処罰の描写があればもちろん流血表現や殺傷の表現が出てきますので意外とグロテスクな面もあります。しかし、異端者や審問官たちの表情や言動にはどこか魅力があります。
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こちらは異端者が尋問で爪を剥がされるシーン。
"爪はたった10枚。10回耐えれば秘密を守れる"と考える異端者。かなり強気です。普通は1枚だって耐えられる気がしませんが...。
対して、審問官。「爪って生えてきますから。」
この絶望感がいいですね。冷たい表情もいいですし、単調に言い告げるようなところも冷徹さを強調しています。
そして仕上げに、それを聞いた異端者の表情を添えて完成です。
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異端者が火刑に処される様子。
まず目がいくのは異端者の悶絶する顔でしょう。そしてそれを眺める手前の主人公。最後に民衆。
この時既に主人公は星が好きで天体観測も行っていました。1歩道を誤れば自分も...といった感じです。
こちらのシーンは爪剥ぎのシーンと異なりセリフや説明の文字がありません。以前同じ部活内で表現方法について表を作成してた投稿者がいましたが、そちらを見てもわかる通り、漫画は視覚的な情報が最も得意です。
今回のこのシーンはまさしく漫画的です。
想い変われど紡がれる「地動説」
本作は主人公が変わると上述しました。
様々な人間の視点から地動説を巡る物語が展開されます。しかし地動説完成を目指す人だけでなく、それを阻止しようとする人にも物語があり、特定の誰かを主人公とするのは無粋です。
なのでこの場に限り、地動説の完成を目指す人々を主人公と据えることにします。
そんな彼らはそれぞれの想いをもとに地動説の完成を目指します。そんな熱い人達と想いを少し紹介します。
・ラファウ -真理への探究心-
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観測が好きな少年。かなりの秀才で大学への進学も決まった。
義父の教育によりC教の教えに従順であったが、異端研究者との出会いにより地動説研究に触れる。
以降、地動説の美しさに魅了され、"これを完成させるため"に尽力する。
・オクジー -感動のために-
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民間警備組合に所属する代闘士。
火星の観測を生涯の希望とする仕事仲間のグラスとともに異端研究者の護送任務にあたる。その際、地動説へ興味を持ったグラスと共に研究完成を目指す。
が、グラスの死に際に研究完成を託されることになる。
彼自身星にはトラウマがあり、成り行きで研究に関わってしまった身であるものの、だんだん"地動説や研究に対する思いが芽生えていく。"
・バデーニ -自らの功績のために-
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C教の副助祭。C教の人間でありながら刺激や特別を求めたために、1度は処罰を受けた身である。
ある日尋ねてきたオクジーから研究の話を持ちかけられ地動説に出会う。
「地動説の完成」という世界の常識をひっくり返す"偉業を我がものにするため"に研究を続ける。
・ヨレンタ -感動のために-
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天文研究所(天動説を前提に研究しているため公的に認められている)で勉強をしている少女。異端審問官の娘。
優秀である一方、女性の研究者は「魔女」とされ、研究の発表に耳を傾ける人は少なく研究への参加も不自由である。そんな苦悩の最中で、バデーニ・オクジーと出会い、地動説に触れる。
それからは"研究に対する感動を繋ぐために尽力する。"
・ドゥラカ -不安を拭う大金のために-
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とある移動民族の村に生まれた少女。幼い頃に父を亡くし、それを機に死に対する不安とそれを払拭できるほどの金を欲するようになる。
ある日、叔父に連れてこられた廃屋で地動説の記述に触れ、これを使って金稼ぎを画策する。
"死の不安を払拭できるほどの大金を稼ぐため"に奔放する。
と、ざっとこんなもんです。ネタバレしないように書くとなると難しいですが何となくのイメージはこんなもんです。
先述したように主人公が人と言うよりは地動説そのものという側面があるために、このような物語の展開や想いの転換が可能なのだと思います。ただ真理探求のために地動説を証明したいという想いだけに注目して話を書くとこもできたでしょうが、地動説というテーマを引き立たせるためには今作のような描き方があっているのかもしれませんね。
あとがき
今回は『チ。-地球の運動について-』をご紹介致しました。ネタバレになる内容を避けつつ、漫画の魅力を紹介するのはかなり難しいです。どうやってその漫画を切り取れば魅力が伝わるを考えるうちに、漫画をほぼ1周読み込んじゃったりもします。
まぁこんな感じで今後もダラダラnote更新しますのでよろしくどうぞ。
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